メッセージングアプリとチャットボットで顧客体験はどう変わるか? 試される企業の活用方法

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Photo by Jacob Ufkes on Unsplash

日本人の多くが日常的に友人や家族とのコミュニケーションのためにLINEを使っているように、世界でもWhatsAppやFacebook Messengerなどのメッセージングアプリは幅広い地域と年齢層に普及している。

Twilioの発表したレポート(How Consumers Use Messaging Today)によれば、いまやメッセージアプリのユーザーは世界で30億と、ソーシャルメディアのユーザー25億を上回る。

スマートフォンのホームスクリーン上に3つのメッセージングアプリを有し、1週間に3つのメッセージングアプリを使い、1時間にメッセージを3通送る、というのが平均的なユーザーなのだそうだ。

スマホとメッセージングアプリの普及、そして今後成長が期待される会話型サービスのチャットボットによって、将来大きな変化が確実視されるのが個人ユーザーと企業間のコミュニケーションだ。今後、メッセージングアプリを通じた企業とのやり取りはどのように進化するのだろうか?

カスタマーサービスやマーケティング、広がるメッセージングアプリの使い方

そもそも二者間のコミュニケーションの手段として挙げられるのは、
対面・郵便・電話・Eメール・メッセージング・SNS・ビデオチャット だ。
だが、企業対個人のコミュニケーションは最初の4つの手段まではだいぶ定着したものの、新しい手段を活用していない企業はまだまだ多い。

Twilio: How Consumers Use Messaging Today

だからこそ、メッセージングアプリを活用して、どのようにユーザーエクスペリエンスやエンゲージメントを高めることができるかは、一般消費者向けのビジネスを展開する企業の今後を左右する重要なポイントになる。

現時点でもっとも多く活用されているケースというのは、リアルタイムな通知を送るときだろう。フードデリバリーの注文確認や配送の通知、飛行機や電車の遅延といった緊急性が比較的高いものだ。

こうした緊急性の高いメッセージ以外に、今後の進化が期待されているのが、マーケティングとカスタマーサービスの分野であり、まさに会話形式のチャットボットが本領を発揮する分野だといえる。

Appleも参入、Facebookが牽引するチャットボットプラットフォーム

メッセージングアプリ上におけるチャットボットの活用の分野で、プラットフォームとして牽引しているのはFacebookで、11月にはFacebook Messengerのエクスペリエンスをウェブサイトに統合できるカスタマーチャットプラグインがローンチしたばかり。ウェブ上の会話をその後もメッセージングアプリ上で確認、継続できるという連続性が実現することによって、ブランドや企業は活用次第でユーザーをよりひきつけることができる。

Appleもまた、今年のWWDCではビジネスチャットという企業向けのプラットフォームをローンチすることを発表した。iPhone、iPad、Apple Watch、そしてSafariやSiriなど、異なる端末とアプリケーション上でも連続した経験が可能になれば、ユーザーはより快適に企業とつながることが可能になる。

買収や資金調達が進むアジアのチャットボットスタートアップ

チャットボットの開発も世界各地のスタートアップが取り組んでいる。

11月には、対話型AIを開発する韓国のスタートアップFluentyがサムスン電子に買収された。銀行向けチャットボットを開発するインドのActive.aiは、最近資金調達をしている。

ジャカルタを拠点にチャットボットを開発するKata.aiも、今年7月にシリーズAラウンドで350万ドルを調達した。台湾のTrans-Pacific Technology Fundが主導し、韓国、インドネシアなどアジア諸国もこのラウンドに参加した。

自然言語処理やAIを活用したチャットボット開発が盛んであるのは当然アジアだけではないが、今後のeコマースの大きな成長が期待できる東南アジアは特にチャットボットが果たす役割も大きいだろう。

特にインドネシアでは平均して4.2個のメッセージングアプリがスマートフォンにインストールされており、97%の人々が1日に複数回メッセージングアプリを使用しているという状況は、メッセージングアプリの利用状況の地域差を考える上でも興味深い。LINEユーザーが圧倒的な日本からは想像しがたいが、メッセージングアプリごとの特性や使われ方の違いは今後大きくなっていくだろう。

友人・家族間と企業とのやりとりで使われるメッセージングアプリは違う / How Consumers Use Messaging Today

だからこそ、日本でも旅行客向けにはLINE以外のメッセージングアプリを通じたカスタマーサービスの提供やマーケティング、また海外の一般消費者をターゲットにする場合には地域差を考慮したサービスの設計が求められると考える。

メッセージングアプリの利用状況など、Twilioによるレポートもぜひ参照のほど。


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