リクルート「TECH LAB PAAK」のデモデイが開催、第10期参加チームが半年の成果を披露

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リクルートホールディングス(東証:6098。以下、リクルートと略す)が東京・渋谷で展開するスタートアップアクセラレータ「TECH LAB PAAK(テック・ラボ・パーク)」は20日、第10期のデモデイを開催した。

13チームがそれぞれ3分間ピッチでプログラム参加からの半年間の成果を披露したほか、審査員による評価対象ではないが、1分間ピッチには4チームが登壇し(1チームはインフルエンザで欠席)、総計17チームが登壇する一大ピッチイベントとなった。

入賞したチームの顔ぶれを中心に、TECH LAB PAAK からどのようなサービスが生まれたか、生まれようとしているかをみてみたい。なお、デモデイのピッチにおいて、入賞者の審査を行ったのは次の方々だ。

  • 500 Startups Japan マネージングパートナー 澤山陽平氏
  • LINE Developer Relations Teamマネージャー 砂金信一郎氏
  • ProtoStar COO 山口豪志氏
  • TechCrunch Japan 副編集長 岩本有平氏
  • TECH LAB PAAK 所長 岩本亜弓氏

【TECH LAB PAAK 賞】タベリー by 10x

副賞:中國料理北京 ディナーペア券

10X は、設立者の矢本真丈氏がメルカリ在職時に取得したパタニティ・リーブで、家事や料理を続けることの大変さへの気づきから、献立作成アプリ「タベリー」を開発した。料理研究家や料理教室から提供された6,000件以上のレシピをもとに、アプリ上で提案される主菜・副菜・汁物のレシピを選択することで、1食分の食事を10秒で決めることができる。選択した献立をもとに食材の買い物リストが作成可能、買い忘れや買い過ぎを防ぎフードロス問題の解消にも一役買う。

Instagram を使ったオーガニックなマーケティングが功を奏し、タベリーの Instagram アカウントのフォロワー数はすでに2.6万件以上。タベリーは現在、夕食の献立に関わる意思決定を支援するアプリだが、データを蓄積することで、未来の実需がわかるプロダクトの育て上げることができるという。その点において、矢本氏はタベリーのバリュープロポジションを「グローサリー版の ZOZOSUIT」と例えた。

同社は今週、個人投資家からの出資を中心に5,600万円の調達を発表したが、これを含め、通算で3回の調達を実施しており、合計調達金額は6,800万円に上る。

【500 Startups Japan 賞】ドローン自動飛行に関する研究 by yodayoda

副賞:AppleStore ギフトカード 3万円分

yodayoda では、ロボットのための地図、特にドローンに特化して GPS に依存しない自動飛行のための技術開発を行っている。ドローンに搭載したレーザーレーダ(LIDAR)のデータを集めることで、空からの GPS 電波が届かない状況下でも、ドローンが自動飛行できるしくみを実現。GPS 電波の影に入る橋梁やトンネルの無人メンテナンスなどに使えるので、高速道路会社などでの需要が大きい。橋梁やトンネルの有人メンテナンスでは、年間数人程度が落下事故で死亡しており、この作業をドローンで無人作業にリプレイスすることには社会的に大きな意義がある。

yodayoda 代表の小田氏は先ごろ、ドローン企業のメッカである中国・深圳を視察してきたとのことだが、深圳は無から有を生み出す上でドローンスタートアップにとって都合のよい環境である一方、さらなるスケールアップのためにアメリカ進出の必要性を感じ始めたという。ただし、アメリカ進出のためにはビザの問題があるため、アメリカ進出に知見を持った投資家や起業家からの支援を求めていた。yodayoda は今年5月、千葉功太郎氏が主宰するドローン投資ファンド「Drone Fund」から出資を受けている

【LINE 賞】歯科 VR プレパレーション by BiPSEE

副賞:伊勢志摩産 伊勢えび

BiPSEE が開発する歯科 VR プレパレーションとは、歯科患者が施術を受けている間ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を装着して VR コンテンツを視聴することにより、施術に対する恐怖心を和らげようという試みだ。HMD を装着していることで、治療に適した方向を顔が向くようにコンテンツを表示できるので(同社が特許出願中の姿勢誘導技術による)、歯科医や歯科衛生士の施術の邪魔にならない。同社はこのソリューションをもともと子供用に開発したが、成人でも歯科治療恐怖症の発症により、歯科に行くのが突然怖くなる人がいるとのことで、成人のニーズもあることが判明したという。

今年の東京デンタルショーに出展したことが契機となり注目を集め、8軒の歯科医で試験を実施済か実施中で、6軒の歯科医が予約待ちだという。当初は、HMD および コンテンツともオリジナルでの開発を想定していたが、サービス展開をスムーズに行うため、HMD は市販のものをカスタマイズし、VR コンテンツのプレーヤーとしてのみ提供する。再生するコンテンツもユーザが自由に選べるようになるが、BiPSEE が提供するバリュープロポジションは、施術に影響を与えない、コンテンツの表示位置などを最適化するプログラムにあるようだ。

【ProtoStar 賞】Genome Clinic by Genome Clinic

副賞:ブランド牛 食べ比べセット

Genome Clinic は、次世代シーケンサーを用いた個人ゲノム解析に基づいて、疾患リスク判定サービスだ。27疾患59遺伝子を解析するサービスを19.8万円という安価で提供する予定。ユーザは、自分が持つ疾病リスクを知ることで、疾病予防に役立てることができる。

ユーザの要望に基づいて、提携医療機関でカウンセリングを経て検体を取得。データ解析の結果は、データベースと称号しリスク判定を行い、医療機関の医師にフィードバックする。ユーザは得られた結果に応じて、疾病予防のためのフォローアップを受けたり、高次医療機関での追加診療を受けたりすることができる。

同社は今年、千葉大学のベンチャービジネスラボラトリー(VBL)の研究プロジェクトに採択。アジア・アントレプレナーシップアワード2017で「柏の葉賞」を受賞した。

【TechCrunch Japan 賞】内視鏡画像の人工知能診断支援ソフト by AI メディカルサービス

副賞:

内科医の多田智裕氏が設立した AI メディカルサービスは、内視鏡画像の人工知能による診断システムを提供。内視鏡画像から正しく胃がんの症状の有無を判断できた人は、医師の間においても正解率が31%との報告がある。同社のサービスには、複数の医師が協力していることで、高画質の数十万枚の内視鏡画像データが入手できるため、多数の教師データが入手できることもポイントだ。胃がんの9割の原因と言われるピロリ菌の有無を、AI を使って高い精度で検出する。

今年8月に行われた Incubate Camp 10th では、ベストグロース賞と審査員賞を獲得。そこからのさらなる進展として、国内20施設以上のトップクラスの内視鏡医に利用され、内視鏡による撮影後の静止画だけでなく、撮影中のリアルタイム動画でも、どの部位に胃がんの症状が見られるかを AI が自動検出する技術を開発した。日本で生まれた内視鏡は世界で使われるようになっており、デバイスだけでなく画像診断のスキルを併せることにより、世界での内視鏡普及による効用はさらに高まることが期待される。

【オーディエンス賞】MOSH by MOSH

副賞:TECH LAB PAAK Project Member 権利

MOSH はヨガインストラクターやサロン経営者などのフリーランサーや店舗が、個性ある紹介サイトを簡単に作れるサービスだ。パソコンが無くてもスマートフォンさえあれば、写真と必要な文字項目を入力するだけで、業態に応じたデザインテンプレートが選ばれ、集客可能な web サイトを作成し集客に役立てることができる。

この分野では、CoubicSummon といったサービスが先行しているが、MOSH 代表の藪和弥氏が前職で Retty の UX デザイナーだったこともあり、特に UX を追求することで他サービスとの差別化を図ろうとしているようだ。

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