時代遅れの銀行にブロックチェーンが意識改革を迫る(前編)

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2008年の経済危機とLehman Brothers などの破綻による景気の冷え込みに世界が悩まされる中、銀行業界に対する人々の信頼は薄らぎつつある。しかし他に選択肢もなく、彼らは銀行関係の用事があるたびに旧来の銀行の利用を迫られてきた。

しかし危機が明らかになるにつれ、次のような質問を口にする人も出てきている。

銀行が信頼できないならば、どのような代替手段があるだろうか?

ナカモトサトシと呼ばれる人物(または複数人からなるグループ)がこの問いに答えをもたらした。すなわち、ピアツーピアで、信頼ならない(訳注:ノードへの参加を承認する管理者が存在しない)、ブロックチェーンという技術の上に成り立つ電子マネーのシステムだ。

入門者の方向けに説明しておくと、ブロックチェーンとは分散型の技術だ。世界規模のコンピュータのネットワークがこの技術を利用し、仮想通貨の取引を記録するデータベースを共同で管理している。仮想通貨が(中央集権的でなく)ネットワークによって管理されているという特性は、銀行との決定的な違いだ。つまり、2つの取引主体あるいは人物の間で取引を行う際、ブロックチェーンは媒介となる機関を必要としない。

一般に知られているように、銀行の主たる機能とは、人々や取引主体を媒介する信頼できる仲介役となることだ。では、ブロックチェーンは銀行の代わりとなり得るだろうか?

ブロックチェーンが浸透するにつれ、長期的には銀行が不要となったり、少なくとも業務が大幅に縮小してしまうのではないかと案じる人々が金融業界にも多く出てきている。

しかし、こうした懸念は現実のものとなるだろうか?ブロックチェーンは銀行の存在を脅かすだろうか?ブロックチェーンが広く浸透した後は、銀行はどのような役割を担うのだろう?

銀行は仲介役に留まらない

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現状でも取引の媒介だけでなく、銀行は多くの機能を提供している。信用の促進、規制への確実な対応、金融商品の開発、顧客への金融面のアドバイスの提供などである。金融システムの重要な主体として、効率的な方法で預金者から借り手へと資金を移動させる。また、このような金融サービスにより、経済全体がさらに効率的になる。銀行は取引と金融を円滑化しているのだ。

簡単にまとめると、銀行は大昔から存在しているが、将来においても価値を保つと思われる。

とはいうものの、最新技術の登場により、銀行は運営方法の変更を迫られている。これまでにいくつもの革命を乗り越えてきたが、21世紀で最も大きな革命の一つであるブロックチェーンを避けて通るわけにはいかない。

イーサリアムを活用したプロフェッショナル向けのソーシャルネットワークである、Indorse の共同設立者兼 CEO Gaurang Torvekar 氏は、次のように述べている。

エコシステム全体における銀行の中核的役割は、人々の資金の信頼のおける保管場所となることと、絶対的に信頼のおける情報源を経済システムに提供することでした。

ブロックチェーンにより、取引のプロセスに媒介者は不要となりました。通常銀行が役割を担っていた『信頼できる第三者』は必要なくなったのです。

とはいえ、銀行は大規模な組織ですので、最新の動向をスタートアップのように俊敏かつ迅速に採用することはできません。何十年もの時間をかけて、ゆっくりと受け入れを進めながら生きながらえてきました。これを理解しておくことは重要です。銀行はすでにブロックチェーンの採用を始めており、プロセスを効率化する手段として使用しつつあります。技術が進歩するにつれ、さらに採用を進めるでしょう。

銀行が新技術をゆっくりと受け入れその恩恵を享受し始めているのは事実だ。しかし、世界人口の大半はいまだに銀行を利用できる状況にない。ここにブロックチェーンが拡大する余地がある。ブロックチェーンには普及の兆しがあり、信頼できる中央機関を不要とする能力を秘めている。この事実によりブロックチェーンはやがて、銀行を補完する技術になるだろう。OmiseGoWeTrustHumaniq などアジアの多くのテック企業は、経済の重要な構成要素である貯金やクレジットを利用するために、すでにブロックチェーンを活用しつつある。

氏は詳しい説明を続ける。

新興のブロックチェーン企業の中にも、活発なマーケットである金融を機能として取り込もうと、検討を始めた会社が何社かあります。事業展開の分野を探るため、ピラミッドの下層の領域に彼らはフォーカスしています。

ブロックチェーンの専門家であり、500 Startups の元パートナーである Pankaj Jain 氏も、まったく同じ見解だ。インタビューの中で彼は、ブロックチェーンや仮想通貨の登場にもかかわらず銀行への需要は引き続き存在するが、時とともに銀行のサービスは進歩すべきだとの考えを示した。

Jain氏はこう言う。

銀行を訪れて必要な手続きも行っているのに、例えば一日の引き出し限度額などを理由としてお金を引き出せないような場合には、人々はそれなりのフラストレーションを募らせます。仮想通貨なら、個人、グループ、企業などが、必要な時に必要なお金を手にすることができるため、お金のコントロールを再び手中に取り戻すことが可能です。

ただし、個人であれ企業であれ、信頼できる取引相手というものは今後も様々な場面で必要になってきます。例えば医療機器のリースや金額の大きな企業ローンなどです。現行の多くのサービスで銀行は引き続き必要とされているのです。私は多くの銀行が、ブロックチェーンと仮想通貨を利用した今はまだ想像もつかないような新しいサービスを生み出すために、変革していくと考えています。

後編に続く)

【via e27】 @E27co

【原文】

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