Makuake、元Socket生内洋平氏のCTO就任を発表——エンジニアリングチームに新風を吹き込み、クラウドファンディングのその先を目指す

by Masaru IKEDA Masaru IKEDA on 2018.1.5

左から:マクアケ代表取締役 中山亮太郎氏、執行役員 CTO 生内洋平氏
Image credit: Makuake

クラウドファンディングサイト「Makuake」を運営するマクアケは5日、生内洋平(いくない・ようへい)氏が執行役員 CTO に12月13日付で就任したことを発表した。生内氏は、弘前大学在学中から通算7年のインディーズミュージシャン・デザイナー・エンジニアの生活を経て、ウェブ接客ツール「Flipdesk」で知られる Socket を共同創業し CTO を務めた。Socket は2015年9月、KDDI 傘下の Syn. ホールディングスの子会社となり、生内氏は Syn. ホールディングス傘下 Supership の CTO 室で業務に就いていた。

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マルチなタレントを持つ生内氏だが、音楽・デザイン・エンジニアリングのすべてにおいて、人々を喜ばせたいという思いは一貫しているようだ。THE BRIDGE の取材に対し、生内氏は「新しいチャレンジを応援する Makuake のプラットフォームを運営していく中で、自分たち自身もチャレンジしていくアイデアをチーム内に醸成していきたい」と抱負を述べた。

生内氏の新天地での肩書きは CTO だが、むしろ、社内にエバンジェリズムを築こうとしている印象さえ覚える。数年前から生内氏と親交があったというマクアケ代表取締役の中山亮太郎氏は、「生内氏は世界観を作れる CTO。彼とは、マクアケの次の世界観をどうしていくかを話す機会が多い。どこまで遠くにビジョンというボールを投げられるか、一緒に作っていけるのは頼もしい存在」と、生内氏に大きな期待を示している。

昨年6月に前職を離れてからの数ヶ月間、生内氏はシリコンバレーや深圳を巡り、世界の先端を行く IT ベンチャーやスタートアップで、エンジニアリングチームにどのようなポリシーが適用されているのかを見聞してきたそうだ。従来と異なり、エンジニアにはシステムを構築し支障なく切り盛りするのに加え、ユーザ視点での広い見識が求められる。生内氏の言葉を借りれば、「Inner Direction to Development(エンジニアとしてやらなければならないこと)」に加え、「Outer Direction for Market(エンジニアでない人がエンジニアに期待すること)」を理解すべき、というわけだ。

ものづくりにおけるクラフトマンシップのような、ポリシーみたいなものはチームで持つべきだと思うし、そういうものが無いチームはどこを向いて進めばいいかわからなくなる。(世界の企業がどうやっているのかを)知りたくて、シリコンバレーや深圳を訪問してきた。(中略)

こういうポリシーがあるんだ、というのをチームに共有していきたい。ユーザが、プラットフォームをどういう気持ちで使ってくれているのか。自ら中心となってそれを考えられるのは、エンジニアにしかできないこと。それを見守り、次に何をやるべきかを考えていきたい。(生内氏)

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クラウドファンディングのその先へ

2017年は、Makuake にとって躍進の年だった。社名をサイバーエージェント・クラウドファンディングからマクアケに変更、事業は黒字化し、和歌山から生まれたコンパクトな電動ハイブリッドバイク「glafit(グラフィット)」のプロジェクトは、日本のクラウドファンディングで最高額となる1億2,800万円以上の資金を調達した。

中山氏によれば、社名変更に象徴されるように、Makuake は誕生当初から新しいチャレンジを支援するプラットフォームを標榜しており、その方法は、従来からあるクラウドファンディングの枠組みに留まることはなさそうだ。

できあがった製品を売ってあげるよというところとつなげるなど、購入したり寄付したりするだけではない支援が、山ほどあることがわかった。これは1年前にはできなかったこと。(プロジェクトの)実行者同士のコラボレーションも生まれている。(中略)

事業面である種のティッピングポイントを超えられたかな、という感じ。そろそろ、クラウドファンディングという言葉にとらわれている時期から、その向こうに行く時期だと思っている。生内さんとは、そのあたりのビジョンも共有できる。

マクアケ社内には、「Makuake Incubation Studio」という事業創出プログラムも生まれている。日本の大企業は多くの最先端技術を持っているものの、消費者を魅了できるような製品のユースケースが見つからず、埋もれてしまっている技術も少なくない。3,000件を超える新製品の浮き沈みを見る洞察眼、どんな商品が市場で人気を得ているかという知見に富んだキュレーターの力は、ここでも生かされることになる。

そうして生まれたプロジェクトの一つが、シャープの社内ベンチャー「テキオンラボ」と石井酒造のコラボレーションで生まれた「-2℃で味わう新しい日本酒体験。雪がとけるように味わいが変わる「雪どけ酒」冬単衣(ふゆひとえ)」だ。このプロジェクトには、シャープが液晶材料の研究で培った、ニーズにあわせて−24℃~+28℃の温度領域を設定できる独自の蓄冷材料が使われている。−2℃以下に保つことができる保冷バッグを開発したことで、日本酒の新たな味わいを提案でき、新たな消費者層の開拓を狙うことができる。

面白い技術やアイデアを形にするプロジェクトの潜在的実行者は東京以外にいるケースも多いため、Makuake に15人ほどいるキュレーターは日夜、日本中を飛び回っている。テクノロジーのトップラインにいる人たちの多くは、日常的にインターネットのサービスを使い慣れているとは限らないため、ここには Web サービスにありがちなオンラインマーケティングの手法は通用しない。

キュレーターが見つけてくる作業は、ひょっとしたら、百貨店のバイヤーさんなどより大変なのかも。バイヤーさんの場合は、商品として出来上がっているものを見つけて、地元で売れ筋のものを引っ張り出してくるという仕事だが、その点、キュレーターはまだ世の中に出ていない、商品化されていないものを探してくる。その情報を取ってくるのは相当な難易度。(中山氏)

このような継続的な努力が成果を見せ始め、映画「この世界の片隅に」が数多くの賞を受賞したこと、出資という形で本田圭佑氏市川海老蔵氏のようなセレブリティからも評価されたことなど、中山氏の感慨もひとしおのようだ。

(2017年は、これまでに)やってきたことが間違いではないと確信できた1年だった。(中山氏)

クラウドファンディングのその先へ——Makuake は2018年どのような成長を遂げるのだろう? 最近は、海外のイベントやメディアで取り上げられる機会も増えており、生内氏のチームへの参加とあわせ、これからの Makuake の動向が気になるところだ。

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