Airbnb経済圏で活躍する「Pillow」と「Guesty」 ーー日本の住宅・不動産メーカー、次なる商機は「宿泊管理業」

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.1.17

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Image by  Open Grid Scheduler / Grid Engine

日本政府は2020年間までに4,000万人の訪日観光客の獲得を目指す としています。事実、 2017年の訪日観光客数は1月〜11月までの合計値で約2,600万人。2007年は約800万だった ことから、10年で3倍以上に増加していることがわかります。4,000万人という数値も、オリンピック需要を考慮すれば、決して非現実的な目標でないことがいえるでしょう。

このような訪日観光客を迎えるために必要なのがインフラの整備です。具体的には交通網や宿泊施設が挙げられますが、宿泊面においては、「Airbnb」を中心とした、民泊サービスに対して政府が門戸を開く必要性が問われています。その上で、2018年度内には法整備が完了し、民泊事業者の登録制が施行される予定です。

登録が必要なのは3者あります。まず「Airbnb」のような、オンラインプラットフォームを通じて宿泊客と宿泊業者をつなげる「仲介業者」は観光庁への登録が必要となります。民泊施設を提供する「宿泊業者」は、拠点とする都道府県知事への届け出が必要。また、家主不在型時に、宿泊業者の管理委託を行う「宿泊管理業者」は国土交通大臣への登録が必要となってきます。(詳細は 観光庁 より)

ここで注目すべきは「宿泊管理業者」の登録制度が導入される点でしょう。「宿泊管理業者」が台頭してきた背景には、「Airbnb」の利用が普及していくにつれて宿泊業者(ホスト)側の課題点とニーズがあります。

課題点として、特に宿泊業を営み始めたばかりのホストは、お客さんに向けたサービス提供やタスク管理に不慣れであったり、十分に行き渡ったサービスを提供できるかわからない不安感を持っています。「Airbnb」では、お客によるレビューの高さが顧客獲得数につながるため、サービス向上はオーナーにとって至上命題です。一方で、ホストが自宅を空けてどこかに旅行している間、誰かに管理を任せて手軽にお金を稼ぎたいニーズも発生しています。

上記に述べた、課題とニーズを補えるのがホストに対してサポートサービスを提供する「宿泊管理業者」というわけです。そして「宿泊管理」の業態は、日本の住宅・不動産メーカーにとって新たな商機になり得ると考えます。本記事では、日本の住宅・不動産メーカーが「宿泊管理業者」として提供できる新しい価値を、北米スタートアップの紹介と筆者の考察を交えて簡単に述べていきたいと思います。

ホストの課題を解決する民泊市場の副次サービス

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「Airbnb」ホスト向けサービスとして代表的なのは「 Pillow 」と「 Guesty 」の2社です。

「Pillow」のサービス内容は2つあります。1つは、鍵の受け渡しからタオルの取り換えなどに代表される宿泊客向けのルームサービス代行から、適切な宿泊価格の提案やスケジュール調整の代行までを行う、ホスト業務の一括代理管理・運用です。

もう1つのサービスであり「Pillow」の最も大きな特徴が、ホストが貸し出している部屋の所有権を持つ不動産管理会社に対して、自社不動産(主にマンション)でどのような民泊サービス運用が行われているのかを情報共有するサービスです。これまで「Pillow」は、各ホスト毎にサービス提供をしてきましたが、不動産管理会社からのクレームを受けたことにより、ホストが「Pillow」のサービス利用を継続出来なくなった事例を多くみてきた経緯があります。

そこで、不動産オーナーに対して、どのような民泊客がいつ・何人やってきて、ホストはどの程度稼いでいるのかがわかるがわかる、オーナーとホストを繋ぐ情報チャネルの開発・提供を行っています。情報が透明化することで、ホストはオーナーに隠れて民泊運営するリスクがなくなります。また、ホストに対して民泊サービス運用を認めさせる代わりに、一定の収益をオーナー側が得る、新たな不動産ビジネスモデルを確立しました。

実際、筆者がカリフォルニア州シリコンバレー(パロアルト地区)の「Airbnb」を利用した際、ホストから開口一番言われたのは、「不動産ビルのオーナーに怪しまれないように滞在してくれ」の一言でした。これではお金を払った滞在客も安心できませんし、ホストも客が変なことをしないかを見張っておく必要性に駆られます。この点、「Pillow」は不動産オーナーの課題から、ホスト側の課題まで一貫した解決策を示しているわけです。

一方、「Guesty」はホスト向けに民泊サービス管理ソフトウェアを提供するスタートアップです。まず、「Airbnb」や「 Homeaway 」のような複数の民泊オンライン・プラットフォームと「Guesty」を連携させます。ホストは民泊向けに開放している部屋を複数プラットフォームに同時にリスティングできるようになり、シームレスかつ効率的に顧客の獲得を行うことができます。

ダブルブッキングの心配をする必要もなく、予約からカレンダー管理、お客向けのルーム・サービス代行の外注をソフトウェア上で一括管理できる仕組みを提供しています。「Pillow」との違いは、あくまでもソフトウェア開発のみに注力している点です。ルームサービス業務等には手を出していません。

民泊市場における日本の住宅・不動産メーカーの立ち回り方とは?

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Image by  Hermenegildo Santamaria

ここで本題に立ち返りましょう。日本の住宅・不動産メーカーが「Pillow」と「Guesty」のモデルから考えられる商機は2通りあると考えられます。

1つは、「Pillow」を参考にしたビジネスモデル。つまり、メーカーが保有するマンション不動産を、完璧な情報管理下に置くことを条件に民泊運用業者向けに積極開放し、ホストとの収益シェアを確立するモデルです。

日本で未だ法整備が追いついていない状況を踏まえると、仮に民泊事業者の登録制が施行された後でも、届出なしで民泊運営するホストが多く発生することが予想されます。この点、不動産オーナー企業が積極的に民泊推奨することで、民泊業者の登録も進み、クリーンな形での運用が可能となるのでは、と考えています。大手企業が率先して行うからこそ出せる民泊推奨モデルだといえるでしょう。

もう1つは、個別住宅を活用して民泊を行っている既存ホストに対してソフトウェア提供を行う「Guesty」のモデル。「Guesty」はすでに欧米展開を果たしていますが、アジア圏への上陸は果たせていません。また、これから本格的に日本の民泊市場が開ける市場ポテンシャルを見越した上で述べると、「Airbnb」のようなプラットフォーム展開を住宅・不動産メーカーが自社で手をつけるのは至難でしょう。一方、ホストが積極的にお客を集めるための支援ツール開発は十分に可能性があると考えます。

いずれにせよ、訪日客の増加に向けて住宅・不動産メーカーは、「Airbnb」以外の海外民泊オンライン・プラットフォームが日本進出してきた後の世界を見据えた戦略が必要となってくると思います。

2020年のオリンピック需要を考えれば、急速な民泊サービス普及と、メーカーが持つ既存ビジネスモデルの大きな戦略変更を余儀なくされる時期が刻一刻と迫ってきています。「Pillow」と「Guesty」はそんな日本の民泊市場で、どのように立ち振る舞えばいいのかを示してくれているのではないでしょうか。