新年予想: 2018年は、規制当局の年になる【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.1.15

mark-bivens_portrait本稿は、フランス・パリを拠点に世界各地のスタートアップへの投資を行っているベンチャー・キャピタリスト Mark Bivens 氏によるものだ。Mark Bivens 氏の許諾を得て翻訳転載した。(過去の寄稿

The guest post is first appeared on Mark Bivens’ Blog. Mark is a Paris- / Tokyo-based venture capitalist.


Image credit: sudowoodo / 123RF

2016年がヨーロッパ起業家の年になると私が宣言してから、ほぼ2年が経過した。少なくとも2つの地政学の激震(イギリスの Brexit とアメリカのトランプ大統領の誕生)が注目を集めた。しかし、それでも私は、ヨーロッパのスタートアップ数社が、世界的ステージで特定分野でリーダーシップを発揮した事例をあげることができる。特に、フィンテック、e コマース、ヘルスケアの分野がそうだ。さらに、少し距離を置いて、前述したアメリカやイギリスといった国々が、ヨーロッパ大陸をさらに団結に導いているように思える。大胆な宣言を続ける精神を今年も貫いて、2018年が規制当局の年になるだろうと予想したい。

規制当局にとって、素晴らしい時期とは?

規制当局にとって、なんて素晴らしい時期なんだ!

先日、友人が私にこう言い放った。くだんの友人は、たまたまテック業界で経験豊富なオペレータであるが、決して生粋の社会主義者というわけではない。彼の熱意は、ベルリンの壁崩壊時のドイツでの生活の様子を描いた作家 Robert Stanek 氏の表現を思い出させた。

あらゆる場所で社会不安が多く残っていたが、人々は大変興奮していた。生きる上で、なんて素晴らしい時期なんだ!

私のこれまでの人生の中で、技術がもたらした社会的課題におじけづかされることは無かった。

Facebook や Google といった力を増しつつあるテック大手は、イノベータのジレンマを欺く方法を見つけたようだ。彼らは多額の軍資金を投じて、兆しの見え始めたあらゆるディスラプティブなイノベーションを、鎮圧したり、コピーしたり、買収したりしている。Facebook によるソーシャルグラフの支配は、私の意見では独占禁止法の再考に値する。過去を振り返ってみると、Microsoft の力を小さくしたのは、反トラスト法の訴訟でなく、web ブラウザによる OS のディスラプションだったわけだが、Facebook は Snapchat の Stories をコピーし、それを素早く取り込もうと多大なユーザベースの中で活用した。私は、(今となってはこれまでにも)Facebook が Instagram の買収が許されるべきではなかった、と何度も言ってきた。ソーシャルグラフの分離やポータビリティを求めるような法案が存在しないため、この分野における新鮮なイノベーションやパワーシフトは不可能に思える。私たちの思考プロセスに影響を与えた一企業に対する恐怖は、現実世界が民主主義に与える影響の大きさを実証した。

Facebook が、同社のネットワーク上で広告主を検閲することにより積極的な役割を果たすべきかどうかについて現在行われている議論は、知的好奇心を掻き立てられる。私は心からそう思う。賛否両論双方に正当な理由があり、熟考された理由があるからだ。テロリストや悪意のある広告主を訴えることは言うまでもなく明らかだが、Facebook に検閲是非の一方を支持する権利を与えるのは、意図せぬ結果になり得るだろうか?(Google や Twitter もまたそうだ)私はこれらの複雑な問題に対して、政府高官たちが判断と知恵に全力を尽くしてほしいと願う。

民主主義の時代

私は2016年を予想した記事で、次のように書いた。

企業とは、もはや国によって、その存在が定義されるものではない(編注:ビジネスする上で、国を選ぶ必要はない)。

2017年が多くの人にとってブロックチェーンに目を覚ました年であったなら、それはまた、国家政府の脆弱さも垣間見させてくれた機会でもあった。私は、いわゆる西洋諸国でのポピュリズムの隆盛を言っているのではない。それは警鐘を鳴らすべき別の原因ではあるが、むしろ、言及したいのは国家というものの基本概念についてだ。我々は、どの国が自分に最も競争力のある権限を提供してくれるかをもとに、必要な政府サービスをアラカルトで選ぶ主権者が形成する世の中に向かっているのだろうか? そしてまた、我々は、仮想通貨、規制、税制の問題も抱えている。多くの政府が発するメッセージは混在しており、それを犯罪として扱う国もあれば、道筋をつけようとする国もある(特に道筋をつけようとするカテゴリでは、日本がそれに含まれる。拙著「Japan: Bitcoin #1」で解説している)。

ヨーロッパで新たなデータ保護法が施行

データ保護の話では、EU が先端を走っているようだ。今年5月には EU GDPR(EU 一般データ保護規則)が施行される。GDPR は、個人が自らの個人データをよりよく管理できるように設計されたものだ。消費者データの使用にあたって、データルールの調和と実質的に強化された保証を提供されることが期待されている。この法律は、同意、違反の通知、データポータビリティ、プロファイリング、忘れる権利についての要件を網羅している。

(ちなみに、私はブロックチェーン技術が持つ不変性という基本原則にかんがみ、忘れる権利を調和させているという難しい部分に魅了されている。)

この規制はヨーロッパのものだが、影響範囲はより広範に及ぶだろう。EU 域内の住民に関するデータを集める EU 域外の組織は、裁判管轄への合意が求められる可能性がある。罰金は最大で処罰対象者の世界総売上の4%だ。この法律の実装・施行を通じて興味深い課題が見受けられるだろうが、あらゆる合理的な人にとって、何かすべきだと反対することは難しいだろう。

マシンが仲裁人の役目を担う

言うまでもなく、緊急の注意を要する規制当局のチェックリストに、人工知能の話題が含まれていなければ完全ではないだろう。マシンラーニングのアルゴリズムは、借り手の信用度を評価したり、採用候補者の就労資格を評価したり、前立腺がん患者のリスクを人間よりもはるかに効率的に診断したりすることができる。しかしながら、これらのアルゴリズムは、そのような複雑な問題に対して効果的なので、発明者本人たちは、そのしくみをリエンジニアリングしたり、トラブルシューティングできなかったりすることもある。テクノロジーが間違った呼び出しをする状況を検出し処理するために、フェイルセーフを構築する必要がある。マシンが間違ったときに頼りになるしくみを確立するには、慎重な規制の枠組みが必要になるだろう。最終的な仲裁人として、人工知能は規制当局を置き換えることができるだろうか?

また会おう、規制当局の皆さん!

ここまで読んでおわかりいただけたと思うが、私は規制当局の行動を批判しているのではなく(確かに、しばしば批判はしているけれど)、むしろ規制当局の職務が今ほどは重要には感じられないようになる、と言いたいのだ。

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