シンガポール発、VisaやMasterCardに匹敵する高スループット・ブロックチェーンプラットフォームの開発を目指すスタートアップZilliqa

by Tech in Asia Tech in Asia on 2018.1.18

本稿は、George Georgiev 氏による寄稿。Georgiev 氏は以前ロンドンの Techstars に勤務し、現在はバリ島を拠点にアジアのスタートアップにエンジェル投資を行っている。


(編注:Zilliqa は THE COIN の COIN30 に参加する予定だ)

2017年、仮想通貨は莫大な成長を遂げ、各種主要プラットフォームはそのスケール面において根本的な問題に直面することとなった(ビットコイン、Ethereum のいずれも1秒あたりに扱えるトランザクションは3~7件にすぎない)。ブロックサイズの扱いやその他の修正をどう行おうと、ブロックチェーンは1秒あたり8,000件のトランザクションを処理する Visa に対抗することができずにいる。

さらに厄介なのは、「従来の」ブロックチェーン(ビットコインや Ethereum)では成長に応じた規模の拡大が図れない、ということである。仮想通貨の世界へ足を踏み入れる人口が増えるにつれマイニング規模が拡大し、それに伴いブロック当たりの報酬は増加するが、その一方で参加者にはトランザクションを行うブロック獲得のため競争力が求められることになる。

では、ブロックチェーンがそのエコシステムとトランザクション量の均衡を図ることができればどうだろう? それは間違いなく素晴らしいことである。しかし前述したブロックチェーンが有する根本的問題に対して現実的な解決策は存在しない。唯一の選択肢はトランザクションの大半をオフチェーンあるいはサイドチェーン化するというものである(Lightning Network が例に挙げられる)。しかし、そもそもブロックチェーンという概念は、全てのトランザクションをブロックチェーン上で行う、というものではないだろうか?

変化を求めて

現在、シンガポール国立大学(NUS)のチームが Zilliqa と共同でこの考えに取り組んでいる。同社 CEO の Dong Xinshu 氏主導の下、Zilliqa が2015年以来計画してきた案がようやく市場へ向かう手はずを整え始めたのだ。主にシンガポールを拠点とする同チームには、NUS から多くの素晴らしい人材が集められている。

同スタートアップは極めて Ethereum に似たブロックチェーンインフラストラクチャーであるが、コストを抑えたまま規模の拡大と速度の向上を実現可能にする構造を有している。基本的な前提としてあるのが、トランザクション量とネットワーク規模の均衡を図る、ということである。マイナーの増加とスループットの増加が均衡を保ち、より有用なブロックチェーンが形成されていくのだ。

これを可能とするのがシャーディングと呼ばれるコンセプトである。従来のブロックチェーンは全てのマイナーが同じ一つの数学的問題に取り組む、というものであった。その非常に難解な問題を一番に解決することを競い合い、問題を解決した者が報酬を手にする。ウィナー・テイク・オール、勝者総取りのゲームである。このシステムはうまく機能しているが、大きな欠点も有している。勝者以外は皆、時間(あるいはコンピュータの電力)を浪費することになってしまうのだ。この競争原理ゆえ、実質的には99%の電力が浪費されているのである。

シャーディングは勝者総取りという原則を打ち壊し、(トランザクションを有効化する)暗号化タスクを「シャード」へと細分化する。これはすなわち、8,000のマイナーが一つの問題を解決すべく競い合うのでなく、800ずつ10のシャードへと自動的に割り振られそれぞれ別の問題に取り組むということである。

このようにして、コンピュテーショナルな競合ではなく協働関係がもたらされる。コンピュータに費やされる電力もより実利的なものとなるのだ。

そして、このセットアップは次のような興味深い結果へとつながる。

  • ネットワークが拡大しても、暗号化の難易度は変わらない。むしろより多くのシャードが形成され、多くのマイナーがより多くの問題に取り組むことができるようになる。結果的に、ブロックチェーンを介し行われるトランザクション量が増加する。
  • これゆえ、特殊なマイニング用ハードウェアではなく GPU によるマイニングが可能となる。
  • 同じ電力量でより多くの暗号化作業を行うことができるようになり、環境への配慮もなされる。
  • あらゆる面で効率性が向上するため、マイナーに対しての利益は保ちつつも、ネットワークを介したトランザクションにかかるコスト低下が見込める。

今後の展望と課題

Zilliqa は2015年以来進展を遂げてきた。近頃行った Amazon Web Services(AWS)の内部テストネット上の実験においては、ネットワーク上のトランザクション数が1秒当たり2,488件を突破した。ビットコインと Ethereum を合わせたものの100倍を超える数字である。

しかし、これはプリスケールによるものである。もし Ethereum 上の(2万2,000に至る)全てのマイナーが Zilliqa を利用したとすると、1秒当たりおよそ1万5,000件のトランザクションが可能となるだろう。世界最大の決済プロセッサである Visa と比べても2倍を超える数である。

この Zilliqa がシャーディングという技術を大型パブリックブロックチェーンに導入する初めてのプロジェクトになるであろうが、一方でシャーディングにはいくつかの課題が挙げられることも記しておかねばならない。この技術は大規模での実験及び精査をいまだ必要とするものである。また、ハッカーがネットワーク全体ではなく各シャードを攻めればいいという点からも、シャーディングにはセキュリティ面での課題を引き起こす可能性もある。

しかし今のところ、ブロックチェーンにもたらされるであろうリニアなスケーラビリティには大きな期待が寄せられそうだ。

2018年1月3日、同チームは待ち望まれていたアルファ版ソースコード「Durian」を発表した。現在、その根底をなす技術は誰にでも調べられるものであり、デベロッパたちによる検査や改善も可能となっている。概念実証はすでに着実に進んでおり、同社は今月 ICO の実施を発表している。ハードキャップを3,000万米ドルから2,000万米ドルに下げる予定であるとしており、同資金によって自らの計画を達成させる自信をのぞかせている。

そう、シンプルな話である。Visa や MasterCard に匹敵する、安定し信頼の置けるブロックチェーンインフラストラクチャーの構築。それが実現できれば世界経済の中心を担うことができるだろう。

【原文】

【via Tech in Asia】@TechinAsia

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