Ripple急騰の裏側とは? 仮想通貨の値上がりに投資家大混乱

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Image credit: artmagination / 123RF

ブロックチェーン企業の Ripple のほぼ5年間価値に変動のなかった仮想通貨 XRP が、たった3週間で15倍も価値が上がったというニュースが飛び込んできた。Forbes によると、今週(1月第1週) Ripple の共同設立者である Chris Larsen 氏の純資産が Mark Zuckerberg 氏をもわずかに上回ったという。

Ripple が有名となったのは、創立44年のグローバルな金融メッセージサービスで200ヶ国の1万1,000以上の機関が利用する Swift では3日間かかるところの国際決済が、たった10~15秒で行えるという取引の処理能力だ。しかしこれが昨今の仮想通貨騒ぎの原因となった Ripple プラットフォームの価値への信頼につながっているわけではないようだ。突如として起こった XRP への関心の原因はどうやら世界中の一般人の間にある恐れ、仮想通貨への投資で得られるはずだった利益を失うのではないかという恐れのようだ。

こう考える理由として XRP の取引が急増した時期がある。2013年に流通が始まった XRP は、流通開始以来1セントの価値を超えたことはなかった。しかし夏ごろ、ビットコインが急騰を始めたのとほぼ同時期になると突如価値が上がり始め、35セントにまで上ったのち20、10セント台へと戻った。日本と韓国の銀行でも仮想通貨の試験運用が始まったのちの12月13日あたりになるとまたも急騰が起こった。2日後の12月15日には金融サービス大手の Bloomberg が XRP をターミナルサービスで通貨の価格データを提供する4つの仮想通貨(他には大手のビットコイン、Ether、Litecoin が選ばれている)と認めたことで、XRP に新たな信頼性が与えられたと Fortune が発表。XRP はそれから1,500%の価値の高騰を記録し、今週(1月第1週)に入って3.84米ドルにまで上った。

興味深いことに、Bloomberg が XRP を選んだのは市場の慎重な予測ではなく偶然による結果だったようである。Ripple のバイスプレジデント Asheesh Birla 氏が VentureBeat に対して語ったところによると、Bloomberg は新たな情報源としてルクセンブルクに拠点を置き、歴史の長く、グローバル規模の信頼のある仮想通貨取引所の Bitstamp を加えた。そして Bitstamp は2013、2014年の Ripple による取引参入のための活発な宣伝活動の結果として数少ない仮想通貨のリストに XRP を選んだのだ。

Ripple への投資者も通貨のことがわかっていない可能性も

もし投資家が Ripple からもビットコインと同じような利益が戻ってくると期待しているのだとしたら、もしかしたらその通貨の性質を誤解していると言えるかもしれない。XRP にはビットコイン程の希少性がないのである。ビットコインの発行数が2,100万であるのに対し、Ripple は1,000億もの通貨を発行している。

そして Ripple は世界中の数々の銀行が認めているのだから良い投資先に思えるかもしれないが、この時点で実際に XRP を使用している銀行はその中のたった1行だと Birla 氏は VentureBeat に語る。Ripple は取引先に通貨を利用してもらおうと必死だが、果たしてどれだけ使用してもらえるかは不明だ。親会社の Digital Currency Group が Rippleの持ち株を所有する CoinDesk は昨日(1月4日)の記事で、Ripple の XRP を利用した取引サービスの RippleNet ではなく、「Ripple の取引先の銀行が同社の有名なメッセージプラットフォームである xCurrent を使用している」ことに関心を持っていると明らかにした。

一方、Ripple のライバルとなる銀行間ネットワークの Swift は、同じくブロックチェーンを利用したサービスの開始へと真剣に取り組んでおり、これが実現すれば RippleNet の業績に大打撃を与えることになる。

XRP の魅力は入手の容易さと安さにあり

RippleNet の流動性を売りにしようとする Ripple は、XRP を世界中の取引所で入手可能とした。同社のサイトによれば XRP は世界中の約50の取引所で取引ができるという。そしてこれもまた XRP の驚くべき急騰の要因の一つである。現在何百もの仮想通貨が存在しているが、実際に公開の取引所で取引できるものはごくわずかである。さらにその中から信頼のおける取引所を選ぼうとすると、並の投資家にとっての選択肢はさらに狭まってしまう。

XRP はビットコインや Ethereum が急騰した夏の時期において数ヶ所ある主要な取引所で最も安く手に入る通貨となった。新参の仮想通貨投資家が取引所になだれ込んだ12月中頃(あまりの新規参入者の多さに、Bittrex などの一部の取引所は新規参入を禁止したほどである)、ビットコインは1万7,000米ドル、Ethereum は500米ドル、Litecoin は240米ドルの値がついていた一方で XRP はバーゲン価格の25セントであった。

この関心の波は「仮想通貨によってそれぞれ供給元やマーケットキャップへの影響が違うにもかかわらず、ミスリードされてしまった」と仮想通貨管理会社 NextBlock の CIO、Charlie Morris 氏は VentureBeat に語った。

しかし比較的新規参入の投資家が自分の置かれている状況を理解しているかどうかはわかりません。(Morris 氏)

3米ドル台に到達した現在でもなお XRP は主要な取引所で最も安く手に入る通貨である。唯一「もっと安い」通貨を提供しているのが香港の Binance(幣安)で、その通貨である TRON は、実際のところ、取引数では XRP が8億500万米ドルなのに対し39億4,000万ドルと大幅に XRP を上回っている。

韓国の巨人

XRP の取引が最も盛んなのは韓国の取引所 Bithumb で、ここ30日間の XRP 取引の26%をこの取引所が占めている。興味深いことに、Bithumb の投資家は夏の時期に最も XRP に投資していたが、現在その取引量は減っているのだ。韓国の Coinone、香港の Bitfinex や Binance など他の取引所は12月になってから XRP への投資に乗り出し、急騰を後押ししているようだ。

この「バーゲン中」の通貨にいったい誰がひきつけられているのか?

韓国内ではまさしく値打ちのある通貨に投資しているすべての主婦、大学生、おばあちゃんの世代です。

韓国でアクセラレータ SparkLabs を運営する Bernard Moon 氏は VentureBeat にそう語った。

ある匿名の韓国の仮想通貨専門家は次のように語っている。

Ripple はマーケティングに多大な費用を費やし韓国の仮想通貨取引所に直に売り込みを行っていました。現在、ビットコインは値が高すぎると見切り、単位全体を所有できるような仮想通貨を探している投資家が韓国には大勢います。そして複数の通貨を買い、ある通貨が値上がりすれば投資を増やし、値下がりを始めたら売るという傾向があります。ですので、ある通貨の価値が上がれば、韓国からの投資は増え、価値が下がれば投資は減ります。投資を継続的に受けている通貨は Ethereum のみで、Ripple に投資をしている韓国の平均的な投資家は Ripple の詳細を知りません。

そして韓国の大手仮想通貨投資ファンド Hashed の共同設立者 Simon Kim 氏はこのように語る。

Ripple は韓国において長い間人気の通貨でした。初心者の投資家の多くは単に安いからといって Ripple の価格が今後さらに伸びると信じ込んでいました。12月には、Ripple は数多くの金融会社との提携を結んだというニュースを韓国コミュニティにも宣伝しました。それに、集中化された Ripple の通貨が政府の規制からも安全だという見方もありました。最後に、Ripple は長い間値上がりしていなかったがゆえに「もう上がる時期だ」と思わせてきました。この状況から、Rippleは高い注目を得ることとなりました。ご存知の通り、韓国にはとても結束力の高い国民性があり、一度火がついてしまうと止めることはできないのです。

Ripple「値上がりには正当性がある」

Ripple の Birla 氏は XRP がアジア市場で最も盛んに取引されているのには納得だという。

韓国はデジタル投資の分野全般においてとても熱狂しています。最初に物事を動かすのは決まってアジアの投資家です。(Birla 氏)

Birla 氏は XRP を取り巻く様々な憶測については心配していないと付け加えた。

誰も関心を持ってくれなかった4年前に比べたらましですよ。ビットコインにせよ、Ethereum にせよ、XRP にせよ、投資するということはその通貨に使い道があることに賭けているのです。Ripple には国際支払い以外にもいくつもの使い道があります。(Birla 氏)

そのいくつもの使い道とは、Birla 氏によると、Ripple のブロックチェーン上に構築される多数のサードパーティー製アプリケーションにあるという。VentureBeat はプラットフォームに導入されるというアプリケーションの具体例をうかがったが、Ripple からの返答はいまだ得られていない

更新情報:Ripple から一つ具体例を得ることができた。ウォレットアプリ「GateHub」だ。

Ripple はサンフランシスコに拠点を置く。Pitchbook によれば、同社が最も最近公式に投資を受けたのは2017年9月のシリーズ B ラウンドで SBI Holdings らから5,500万米ドルを調達。投資前の評価額は3億5,500万米ドル。同ラウンドには Standard Chartered、Accenture ventures、Hard Yaka SCB Digital Ventures、NKM Capital、Santander Innoventures、CME Ventures、Abstract Ventures、Kaplan Group Investments、Seagate Venture Fund、ThirdStream Partners、Venture51も参加した。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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