営業電話版「ログミー」でビジネス会話スキルを効率よくアップーー営業系AIサービス市場3つのポイント(前半)

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Image by  Duncan Hull

ビジネス会話スキルは営業電話からミーティング進行まで幅広い領域に必要とされます。

例えば営業マンの方が売り込み電話をする際に「可愛い女の子も一緒に営業で行くので、話だけでもどうですか?」と先方に伝えるだけで、いくつものアポイントを成功させた人がいたと聞いたことがあり、人によって営業のやり方は千差万別だと思わされました。また、とても論理的かつ順序立ててミーティングを進めることで、15分程度に話をまとめる経営者の方もいらっしゃいます。

このような方々は、多くの失敗と長年の経験を持っているからこそ高度なビジネス会話スキルをお持ちですし、それぞれ独自のやり方を確立されています。

一方、専門性が高いからこそ、日本でも営業仕事のアウトソーシング事業には根強い需要があります。日本のBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)市場は、2015年時点で3.3兆円だったとの データ もあります。

企業がアウトソーシングを行う理由として、コスト削減が挙げられるでしょう。新人を育成して、前述したような高いビジネス会話スキルを持つ人材に育て上げるまで、数年以上時間がかかるからです。

営業電話のスキルを磨くために今日は50件の電話を入れて、最低でも5件の成約を目指す。もし成約KPIが達成できない場合はさらに数をひたすらにこなし、失敗をしていくなかで自分なりの正攻法を模索する。

従来のやり方でビジネス会話スキルを磨く場合、確かに独自性が磨かれ、高いスキルを持った人が登場します。しかし、チーム全体のパフォーマンスは上がりません。実際、トップセールスマンのパフォーマンスを5%上げるより、中級レベルのセールスマンを教育して、彼らのパフォーマンスを5%上げたほうが収益が70%も高くなるとも 言われています

こうした大きな課題感を背景に、営業マン育成プロセスはよりスマートなやり方に変化しつつあります。

ビジネス会話もAI解析によって、電話で上手く話せたりミーティングを効率的に取り仕切る「コツ」や「黄金律」を発見できるようになりました。格段にトレーニングプロセスが賢くなり、アウトソーシングするまでもなく自社で優秀な営業人材を数多く揃えられる時代になってきたのです。

そこで今回は、北米スタートアップの中でも人工知能(以下、AI)を使った営業ツールを提供している企業を紹介していきたいと思います。

営業電話版ログミーは電話内容の書き起こし、重要ポイントの明文化と共有を実現

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顧客との接点を持つチャネルのうち70%は電話に依存しています。しかし、電話の欠点は内容を振り返ったりする際に記録が残せない点にあります。もちろん、電話オペレーターを揃えた部門であれば、顧客との会話は記録しているでしょうが、それは単なる記録であって解析には使えません。仮に解析をするとなっても、再度聞き直したり文字起こしをするコストがかかります。

このような課題を解決するため、「自動書き起こし」及び「フック・ワード(重要ポイント)の掘り起こし」の2点を軸にしたサービスが多々見られます。

例えば Chorus.ai 。2015年に創業された同社は 2,200万ドルの資金調達 を行っています。WebEx、Zoom、Join.Meに代表されるオンライン・ミーティングサービスと連携し、AIを通じて営業電話の自動書き起こし、解析、要点ハイライトの3つを行います。書き起こした内容の中から、予算の話や顧客の抱える課題点、決定事項等、重要なポイントをハイライトしてくれます。

Chorus.aiの提供価値は、コーチング時間の削減です。制度の整った営業コーチング・プログラムがあれば、成約率が33%上昇するとの データ があります。しかし、管理職はコーチングを行う時間を十分に持ちませんし、コーチングを受ける側も何十件・何百件もの営業電話をマニュアルで分析する時間はありません。

この点、営業成約率の高いユーザーの音声データが社内チームに共有されるため、オンライン上で手軽にトップセールスマンの話術を学ぶことが可能になります。どのような表現が顧客に高く評価され、取引成立に寄与したかを分析できるわけです。加えて、重要ポイントがハイライトされているので、前回の電話内容の振り返りをもとに、フォローアップも手軽に行えます。

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一方、Chorus.aiの欠点は、記録を取ることに終始してしまっている点にあります。リアルタイムで、最適なリアクションをとることができません。そこで登場したのが TalkIQ です。2014年創業、 1,400万ドルの資金調達 を行い、LINEも投資しています。

同サービスは電話内容をリアルタイムで録音し、自動音声解析及び自然言語処理機能を用いて内容を解析します。どのくらい顧客が事業提案に興味を湧いているのかを数値化したり、電話内で言及された競合他社の名前を自動で記録したりします。

加えてリアルタイムで最適な電話応対方法を提案してくれるのが特徴で、シチュエーションに応じてベストなテンプレート回答が表示される仕組みです。TalkIQを利用すればするほどノウハウが蓄積され、各顧客に対してのパーソナライズ対応や、リアルタイムでの最適な返答をすることで取引成約を上昇することができるわけです。

ちなみに自動音声解析のエラー率は、GoogleやIBMワトソンを代表とする市場平均値より8.8%ほど低く、高い精度を誇っているとのこと。

社員教育の観点から言えば、しっかりとレビューのできるChorus.aiの方が優っている印象を受けます。一方、技術力の高さや、取引成約率の上昇に特化した場合、TalkIQの「リアルタイム・アクション」の方向性の方がしっくりとくるでしょう。

利用企業の目的によって使うサービスが分かれるため、直接競合とは言えないと考えます。

(後半につづく)

 

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