時代遅れの銀行にブロックチェーンが意識改革を迫る(後編)

by e27 e27 on 2018.2.1

前編からの続き)

仮想通貨への反抗は無意味

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Jain 氏が触れたように、ほとんどの銀行と金融サービスらはすでに変化の必要性を理解しつつある。彼らはブロックチェーンを用いたソリューションをいくつものプロジェクトでテストしている。貿易決済から信用情報、銀行間送金や条件付捺印証書に至るまで、いくつもの運用業務において銀行はすでに技術の試験導入を行っている。

Jain 氏の見解は次の通りだ。

仮想通貨が一つの手段として認められるかが、一つの大きな壁だと考えています。現状、多くの銀行は仮想通貨を扱わない立場です。しかし仮想通貨はすでに価値保蔵機能を持っており、流通貨幣としても利用されています。銀行は、まるでインターネット普及前夜の電話会社のように、多額の献金を伴うロビー活動を繰り広げ、独占状態を当面維持するための規制強化を試みるでしょう。しかし、仮想通貨の活用に舵を切り、それを利用したビジネスの展開を検討しない限り、銀行は21世紀のやり方に移行したとは言えません。そうしない多くの銀行は、残念ながら22世紀まで生き残ることはできないでしょう。

市場で仮想通貨とブロックチェーンが持てはやされる中、すでに新技術の導入を行っている銀行も複数存在する。シンガポールの OCBC Bank など大手銀行らは、銀行業務全体の効率化の目的で、これら技術の導入を始めている。

OCBC Bank でフィンテックおよびイノベーショングループを担当する副頭取の Altona Widjaja 氏はこう述べている。

2018年はブロックチェーン技術が金融市場でより広く浸透する年になると思われます。ブロックチェーンは単なる支払い手段を超え、銀行の運営方法にも影響するようになるでしょう。また、システムの効率、分散ネットワーク、そして情報のやり取りの安全性向上にも貢献します。

世界的に多くの業界(政府を含む)がブロックチェーン技術に深い興味を示し、多様な利用方法を試みてきた。ブロックチェーンがその他の新興技術と異なるのは、単独では実現し得ないという点だ。セキュアで、認証されており、オープンなアーキテクチャが醸成されるためには、大規模に行うことが必要だ。また、ネットワークに参加する者に明確なルールが示されている必要がある。

Widjaja 氏は強調する。

貿易金融は、ブロックチェーンの利用方法として最も確実視されるものの一つです。貿易金融は国境を越え、相手方に関するリスクが不可避であり、セキュアな支払いが求められるという特性があります。このセグメントでのブロックチェーンの使われ方を見れば、同技術の成長を実感できるようになるでしょう。この技術が状況を一変すると確信できるまでにはまだ時間がかかりますが、アーリーアダプターたちは競争優位を得られるはずです。

この技術を試用したOCBCは成功を収め、同行はほぼ間違いなく、現地と国際的な送金において当該技術を活用した東南アジア初の銀行となった。新時代のこのテクノロジーによって、支払いはよりセキュアで迅速かつ透明になり、費用も削減されたと彼は述べている。

彼は説明する。

(HSBC、MUFG、IMDAと共に)東南アジア初の企業連合の一部として、ブロックチェーンにおける身元確認手続き(KYC: Know Your Customer)の方法を開発する上でも、重要な役割を果たしました。これはブロックチェーンを安全な金融プロセスとして利用する上で役立ちます。また、アンチマネーロンダリング(AML)とテロ資金供与との闘い(CFT)にも貢献します。

銀行は非効率的で環境に優しくない

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現状では、銀行が法外な権限と権力を握っていることは疑う余地もない。どの国においても根幹を成し、各国の中央銀行と密接に関わっている。変化する環境に適応するためのレースで取り残されたくないと願うのはどの銀行も同じだが、多くの銀行が脅威を感じている。

ある新興ブロックチェーンスタートアップの共同設立者は、匿名を条件にこう語った。

変化する時代に適用することは各銀行の喫緊の課題であり、変革に失敗したコダックのような状況を避けるには、ブロックチェーン技術の活用に際して新たなアプローチを採用することが求められます。技術の導入と活用を拒む銀行は、徐々に姿を消していくことになるでしょう。

銀行は業務を効率化して贅肉を削ぎ落とすためにブロックチェーンを使えるかもしれません。私は銀行業界の出身ですので、業務が過多であり、プロセスと書類も多すぎることを知っています。大変に非効率であり、エコフレンドリーではない業界です。自他の銀行に向け、ブロックチェーンの処理部隊を立ち上げるべきです。そうすれば、様々なビジネスモデルを試行できることでしょう。唯一の疑問は、学習し、変化を遂げる意思が彼らにはあるかということです。

ブロックチェーンへの対応が課題となる中、デジタル通貨と現実の資産の橋渡しとなることを目指す Swarm Fund のパートナーである Philipp Pieper 氏によると、銀行の死という見方は大げさ過ぎるという。

銀行が課題を突きつけられる領域もいくつかあるでしょう。例えば越境送金など、ブロックチェーンによる仮想通貨が銀行より低いコストでより優れた働きをしている事例が挙げられます。ピアツーピアの融資も、非常にリアリティのある使い道です。個人間で契約や条件を成文化するにあたり、スマートコントラクトはとても効果的だからです。

しかし、最終消費者向けの銀行取引の機能にブロックチェーンを導入するには、さらに長い時間がかかるだろう。専門家らは、ユーザインターフェースが複雑だと感じている。技術知識を持たない利用者らが十分に簡単に利用できるようになるには、まだまだ時間が必要である。技術的課題も要因の一つであるし、技術者と銀行業界という異なる分野の専門家同士が協業しなければならない点も理由に挙げられる。

Pieper 氏は言う。

短期的な成功という面では、銀行の特殊な機能とインフラの使い道に注目するのが面白いでしょう。銀行間の送金や為替手形などにおいて、ブロックチェーンを越境取引に試験導入した銀行もすでに出ています。他には、証券決済、証券の引き受けと発行、融資の引き受けなどの業務で恩恵を享受できるでしょう。ブロックチェーンにより効率が上がり、透明性が高まるためです。

業界には効率向上の大きな可能性が広がるが、その実現のためには、既存の銀行システムを構成する企業らが、ブロックチェーンの特性を考慮したサービスを新たにデザインし、また、サービス業界の役割が変わりつつあることを認識する必要がある。

「支配」から「貢献」へ

Pieper 氏が気づいたのは、次のような点だ。

ブロックチェーンは、個人に力を与える技術です。そのため、金融業界はより顧客志向となることを迫られます。したがって、銀行が業界にのみ利益をもたらし、顧客のためにならないような戦略を進める機会は減っていくでしょう。私の考えでは、これは顧客と社会の両方にとって良いことだと思います。

銀行はこの事実を理解した上で、さらにこの領域について見識を深めるべきだ。ニュースに目を通し、人々の不安を煽動する方法を身につけ、銀行の利益となるようなブロックチェーンの使い方を調べるのではなく。

ブロックチェーンによる企業向け送金サービスを展開する CoinPip の共同設立者兼 CEO である Anson Zeall 氏はこう述べている。

何よりも先にまず銀行は、『支配』から『貢献』へと考え方を改める必要があります。しかし時間がかかるでしょう。つまるところ、銀行システムへの採用(規制を含む)が進まない理由は、技術というよりもマインドセットの問題なのです。

「いつでもどこでも仮想通貨で支払えるように」を標榜するプラットフォーム TenX の共同設立者兼社長の Julian Hosp 博士も、似通った考えを持っている。

良いサービスや商品を提供していない質の悪い銀行にとっては、これは脅威です。

人々は依然として銀行を必要とすると思います。しかし現在、ブロックチェーンを有利に活用することは銀行にとって非常に困難です。将来的にブロックチェーンが高速化してさらにスケーラブルになれば、透明性がメリットになります。資金を何に活用できるか、利用者らが理解できるようになるのです。これは間違いなく相互の取引においても同様ですので、銀行間のやり取りもまた高速かつ正確になります。

明らかに、銀行は曲がり角に来ている。市場で適正な位置を保ちたければ、この技術を可能な限り早期に採用する必要がある。ブロックチェーンにより銀行が世界の金融システムで果たす役割は大幅に縮小するだろうが、この技術を採用することで生きながらえることは可能だ。

仮想通貨の他には、スマートコントラクトが重要です。現在、銀行が全てをコントロールしており、ユーザの力は限られています。スマートコントラクトの導入でこの関係は変化し、互いに尊重し合う二者間の平等なアプローチとなるでしょう。ブロックチェーンによるスマートコントラクトはこの意味で非常に重要なのです。

Hosp  氏はそう結んだ。

【via e27】 @E27co

【原文】

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