ブロックチェーンによる企業機密データ流通PF「Datachain」が夢想する、アドテク次のビジネスモデルとは?

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写真左からSpeee取締役の久田哲史氏、代表取締役の
大塚英樹氏、執行役員の木村淳氏

インターネット総合事業を手がけるSpeeeは2月20日、ブロックチェーン技術を活用したデータマネジメントプラットフォーム(DMP)「Datachain」の構想を公開した。同プロジェクトを推進するのはSpeee創業者の久田哲史氏と執行役員の木村淳氏を中心とするチームで、ここにエウレカ創業者でエンジェル投資家の赤坂優氏や元Googleの及川卓也氏らが外部のアドバイザリーとして参加している。

Datachainは企業や団体、政府が持つあらゆるデータを安全に利活用できることを目指したもの。2018年夏頃の実証実験を目指して開発を進めるほか、独自のトークン(暗号通貨)発行も視野にいれていることから、金融庁への仮想通貨交換業の登録申請も準備をしている。扱うデータは企業マーケティングを中心に、金融や医療など、プライバシーが課題で共有が困難だった領域を検討しているという。

ブロックチェーンとDMPで実現する「機密データ流通」

もしあなたが新たなレストランを開店準備しているオーナーだったとしよう。

大手不動産会社が保有する、店舗周辺で働く人たちの属性や趣味嗜好に関するデータを成果報酬ベースで使えるとしたらどうだろう、積極的に活用したくなるのではないだろうか?

そんなことを実現してくれるのがこのDatachainプラットフォームだ。そしてこのプロジェクトを構成するのが、Speeeが独自に開発を進めるプライベートチェーンDMPと、トークンエコノミーモデルの考え方になる。

少し噛み砕いて説明しよう。

そもそも私たちが普段目にするインターネット広告は、様々なアド・テクノロジーによってそのマッチングの精度を向上させてきた。特にここ数年はデータマネジメントの考え方が浸透し、企業は効率よくユーザーに情報を伝えるため、ネットサーフィンをする閲覧ユーザーの属性や、時には独自に保有する個人情報などを活用して広告をマッチングさせてきた。

ヘルスケアのニュースを読んだらずっと健康ドリンクの広告が追いかけてくる、アレだ。

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Datachainの考え方はこの特定企業が保有する極めてユニークなデータ(会員データや場所など)を企業を超えて流通させることができないか、というものになる。冒頭の例で言えば、レストランオーナーが地域の大手デベロッパーが保有するユーザーデータを活用してマーケティングを実施する、といった具合だ。

当たり前だが問題は腐るほどある。競合にはデータを渡したくないし、個人が特定できてしまえば法律に触れる。しかし、もしそれが実現できれば、企業は資産として眠るデータを自社事業だけでなく外販できるし、新規事業は最短距離で成果にアプローチできる。

キーはブロックチェーンだ。彼らはプライベートチェーンを使い、プラットフォーム側も含めた匿名性を担保した上で完全なクローズド環境でのデータ共有を可能にしようとしている。また、特定の企業に活用させたくないような「ルール」についてはチェーン上のスマートコントラクトを使って制御するという話だった。

データ価値を可視化するトークン販売

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Datachainのトークンエコノミーコンセプト

ではこのDatacahin、どのようなビジネスモデルになるのだろうか。ここを紐解くのが「トークンエコノミー」の考え方になる。彼らはこのDatachainを通じたデータ取引に独自の暗号通貨を使うのだが、そのキャッシュポイントがなかなか興味深かった。

通常、こういったDMPの利用は広告主側に出稿時のマージンやトラフィックに応じたフィーが発生する。データの利活用で広告効果が上がったとしても、割りに合わない獲得単価になってしまっては利活用が進まない。

Datachainでは企業が保有するデータをこのプラットフォームに預けた際、それに対応したトークンを発行付与し、利用者はそれを直接購入することでデータの利活用ができるのだが、直接取引ではプラットフォーム側の手数料モデルが崩れる。

そこで、このトークン自体を預けたデータ資産と紐づいた「通貨」とみなし、その発行益(手数料に相当)を生み出すことで、それを運用に充てようということらしいのだ。

これまでのマージンやトラフィックとはキャッシュポイントがズレている分、これが最終的にどういう効果やメリットを生み出すのかは正直わからない。

しかし、それを以ってしても企業が保有するデータ資産を価値換算し、可視化することができる意義は大きい。これまでの広告テクノロジーではなかった概念だし、全く異なるビジネスモデルが生まれる可能性も感じる。もちろんハードルは相当高そうだが。

夏頃の実証実験を予定しているということだったので、具体的にこのプロジェクトがワークするのか、実際に動くのであればどういう結果が生まれるのか、次回お伝えする機会がやってくるのを期待している。

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