ガラケーは本当に死んだのか?—狙うは7,500万高齢者市場、ガラケー利用者と新興スマホサービスのギャップに目をつけた「GoGoGrandParent」

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.2.6

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スマートフォンが世界の携帯市場を席巻しているのは言うまでもありません。

市場調査情報を公開する「statista」が発表したデータによれば、2014年の時点で世界市場におけるガラケー(フィーチャーフォン)とスマートフォンの出荷台数はほぼ均衡。14年度以降は急激にスマートフォンが市場シェア率を伸ばし、2020年にはガラケーの出荷台数が約5,800万台に達するのに対し、スマートフォンは24億台に至ると試算されています。

しかし、ガラケーを持ち続けている高齢ユーザーや、新たなスマートフォン・サービスの登場に置いていかれているユーザーの存在は無視できません。このような、新興サービスの利用普及についていけないユーザーを、新市場と捉えて登場したのが「GoGoGrandParent」です。

7,500万人の高齢者とスタートアップを繋ぐ仲介業

GoGoGrandParent
2015年にカリフォルニア州で創業した「GoGoGrandParent」は、スマートフォンの扱いに慣れておらず、ガラケーを使い続けている高齢ユーザーに対して、配車サービス「Uber」や「Lyft」の手配代行サービスを行っています。同社は著名アクセレーター「Yコンビネータ」を卒業しています。

「GoGoGrandParent」のサービス内容は次のようなものです。最初にウェブ上で基本情報を入力します。登録後、どこかに出かける際には指定された電話番号にかけて、ボタン1を押すだけで、「Uber」もしくは「Lyft」のドライバーが自宅まで迎えに来てくれます。

通常、配車サービスを利用する際、スマートフォンでピックアップ場所と行き先を毎回指定する必要があります。しかし、高齢の方は自宅ピックアップの利用ケースがほとんどのため、ユーザーの登録電話番号と紐づけられた住所に自動でドライバーが手配される仕組みになっています(もし自宅以外の場所からピックアップしてもらう場合は、ボタン3,4,5のいずれかを押す)。また、ユーザー毎に電話番号が登録されているため、どのユーザーが「GoGoGrandParent」を使ってどこへ向かったのかトラッキングできます。そのため、帰り道のピックアップも、指定の電話番号へかけて、ボタン2を押すだけでピックアップしに来てくれて、自宅まで送迎してくれます。

電話の応対は自動音声で、かつ問い合わせがあった後もAPIを使って配車代行プロセスを自動化しています。ウェブの事前情報を基に、ほぼ全てのオペレーションを自動化できている点が非常に上手いビジネスモデルであるといえるでしょう。「GoGoGrandParent」側も、アプリ開発をする必要もなく、何かあった際のコールセンター担当の手配コストだけで回せる仕組みです。収益モデルは、配車サービスを提供した時間1分当たり0.19ドルのサービス手配料と、1回の配車手配代行料金として1.8ドルをユーザーから徴収します。

同社が狙うのは、全米にいるスマートフォンを持たない高齢者層7,500万人市場。実際、アメリカ市場におけるスマートフォン所有率を年代別でみると、10代-50代までは80%を超えていますが、65歳を超えると30%と極端に数値が落ちます。一方、65歳以上のガラケー利用率は77%

ほぼ全てのスタートアップのサービスが、スマートフォンアプリとして立ち上がる中、新興サービスを利用できない高齢者とスタートアップのギャップを、ガラケー電話を通じた仲介サービスで埋めているのが「GoGoGrandParent」の立ち位置なわけです。

コンセプトとして、「高齢者とスタートアップのギャップを埋める」点に注目した場合、民泊サービス「Airbnb」や、家事手伝いサービス「TaskRabbit」のように、ウェブメインの新興サービスの仲介業へもサービス拡大出来るでしょう。というのも、アメリカ人全世代の平均インターネット利用率が86%である一方で、65歳以上は59%。この27%のギャップにも、仲介サービスとしての成長余地がありそうだからです。

高齢化先進国「日本」に眠る巨大仲介市場

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 日本におけるガラケー市場情報を見てみましょう。日本経済新聞の記事では、2016年における日本国内の携帯電話出荷台数は3,606万台。スマートフォン出荷台数は2,942万台であったのに対して、ガラケーは664万台であったと報じられています。

一方、総務省が公表した「平成 28 年情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、10代から40代までのスマートフォン利用率が総じて80%を超えている一方、ガラケーの利用率は30%以下。60代のスマートフォン利用率は23%でしたが、ガラケーの利用率は69%でした。

スマートフォン市場が台頭する中、60歳を超えるユーザーのガラケー利用率が高い構図は、アメリカ市場と同じです。加えて、日本では「2025年問題」と呼ばれているように、2025年には75歳以上の人口が25%を超える超高齢社会を迎えようとしています。そして、2人以上世帯の年齢別・貯蓄分布状況を見ると、60代以上が全世帯の貯蓄の内、70%を占めているのが現状です。

多額の貯蓄がありながらも、ガラケーの利用に留まっている高齢者世代がこれから10年以内に大きな市場シェアを占めるのが、市場数値から改めて目に見えているわけです。このことから、日本のベンチャー企業のサービスを、高齢者向けに代行斡旋する市場が創出されてもおかしくないでしょう。

ここからは筆者のアイデアになってしまいますが、アメリカのスタートアップ「Alfred」のモデルが参考になるかもしれません。「Alfred」は配車サービスや、家事手伝いサービス、洗濯代行サービスなど、様々なオンデマンドサービスを一括で管理できるアプリを提供しています。例えば、毎週月曜の8時には配車サービス「Lyft」で家まで迎えに来てもらって、水曜の7時には事前に指定しておいた日用品を買い物代行サービス「Instacart」で届けてもらうといった具合に、毎回1つ1つのアプリを立ち上げることなく、ユーザーのルーティンに合わせてサービス利用プロセスを自動化できるわけです。

「Alfred」のようなオンデマンドサービスの利用を高齢者向けに代行・一括管理するビジネスは、高齢者を囲い込みたいスタートアップに喜ばれるかもしれませんし、ビジネスとしても伸びしろがあるかもしれません。実際、「Alfred」は、オンデマンドサービスの代行管理に徹していながら1,200万ドルの資金調達に成功しています。

テクノロジーの進歩に取り残された、もしくは追いついていない人達へリーチするためのインターフェースがガラケーであることは、これまでご紹介した数値からもお分りいただけたでしょう。あとはガラケー利用者向けにサービス提供チャネルを調節してあげるだけで、新市場を創出できる可能性は高いと考えます。高齢者とスタートアップの間に立ちはだかる障壁を下げることで新たに生まれる市場規模は未知数ですが、特に高齢化社会の日本では試す価値があるでしょう。

成長する発展途上国/アジアでのガラケー市場

最後に、発展途上国でのガラケー市場を見ていきましょう。

2016年度、アフリカでのガラケー市場占有率は56%に及びます(スマートフォンが9,500万台に対して、ガラケーが1.1億台)。また、スマートフォン出荷台数の前年比成長率が3.4%である一方、ガラケーは16.1%。ガラケーの方が堅調な成長率を誇っており、ユーザーに選ばれる端末であることがわかります。

筆者が、アフリカの人達に向けてマイクロレンディングの形で資金援助をするクラウドファンディング・プラットフォームを運営する「Zidisha」の創業者に会った際、「アフリカにいる人は、ガラケーを使ってキャンペーンを立ち上げて、お金を受け取るので、サービス運営においてテクノロジーの障壁はそんなになかった」と答えているのが印象的でした。このように、発展途上国におけるガラケーの利用シーンは思った以上に浸透しています。

加えて、世界規模でみると、ガラケーの出荷先はアジア地域が最も高いことがわかります。「statistic」によれば、世界のガラケー出荷台数の70%がアジア地域に集中しています。国別でみるとインドは見逃せません。インド市場でのガラケー利用率は55.2%で、年間出荷台数の成長率は4%に及びます。

日本のみならず、世界規模でガラケー市場をみた際、未だに成長と利用価値があるといえるでしょう。この点、発展途上国に進出したい大型スタートアップからの需要に応えられる形で、ガラケー利用者向けにスマートフォンサービスの仲介業を展開すれば大きく支持されるかもしれません。また、「Alfred」のように多種多様なサービスとの連携を果たすことで、「仲介インフラ」にまで成長できる可能性も秘めています。

改めて、アジアにおけるガラケーの普及率や、日本ならではの高齢化社会の実態は、視点を変えれば大きな追い風になると考えます。