今年6回目を迎えるHackOsaka、ピッチコンテスト「Hack Award 2018」に社会貢献や健康テーマのチーム10社が世界中から集結

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大阪市は27日、年次のスタートアップ・カンファレンスである「HackOsaka 2018」を開催し、日本内外から投資家・起業家・メディアなど総勢約数百名が参加した。2013年からスタートしたこのイベントも今回で6回目を数え、世界中のスタートアップ・エコシステムの動向を関西の起業家に紹介する姿勢には、なお一段と磨きがかかっているようだ。

イベントの終盤では、日本内外から集まったスタートアップ10チームがピッチを行なった。審査員を務めたのは、以下の6名の方々だ。

  • 西村淳子氏(シルバーエッグ・テクノロジー共同創業者)
  • Oko Davaasuren 氏(Techstars アジア太平洋地域ディレクター)
  • Oscar Kneppers 氏(オランダ Rockstart 創業者)
  • Gidi Schmerling 氏(イスラエル テルアビブヤッファ メディア担当部長)
  • Shan Lu 氏(LeaguerX=力合鋭思 創設パートナー兼最高執行責任者)
  • Allen Miner 氏(サンブリッジ 代表取締役会長兼 CEO / HackOsaka スーパーバイザー)

MC は、元 Tech in Asia 日本編集長で Best Beer 創業者の Peter Rothenberg 氏が務めた。

Gold Prize: dot(韓国)

dot は点字が表現できるスマートウォッチを開発。視覚障害者がスマートウォッチのように使え、メッセージのやりとりやソーシャルネットワーク上の投稿を読める。通常の点字キーボードは5,000ドル程度するが、dot は290ドルで提供できるため、視覚障害者へのギフトとしても最適。30の特許により、dot 上の点字表示部の小型化に成功している。昨年、SLUSH TOKYO のピッチコンテストで優勝

Google の協力を得て点字表示ができるタブレット「Dot Pad」(950ドル)に加え、Dot Pad の簡易版(教育用、200ドル)である「Dot Mini」を開発。1,000万人の視覚障害者がいるインドで数百万台を投入予定。次なるプロジェクトとして、ドバイのスマートシティプロジェクト向けに点字キオスクを開発に着手、平昌オリンピックでも試験展開した。現在アメリカと中国で事業展開しており、日本市場にはまもなく上陸予定だ。

Silver Prize: Eye Control(イスラエル)

ALS(筋萎縮性側索硬化症)で身体が動かせない患者は世界中に160万人いるとされ、その人口は増加傾向にある。彼らがコミュニケーションに使う装置が高価であること気づいた Eye Control のチームは、ウエアラブルで、値段が安く、使いやすいデバイスを開発することにした。

Eye Control はカメラを使って患者の瞳孔の動きを細くし、それを小型コンピュータに送信して伝えたい内容を解析、BLE 経由でスマートフォンを通じ伝えたい内容が発声されたり制御されたりするしくみ。大きな表示スクリーンを使う煩わしさが無いのが最大の特徴だ。2011年の Starupboocamp から輩出、昨年にはイスラエルのテックメディア Geektime の Next Future Technology 賞を受賞した。

Bronze Prize: Carbyne(イスラエル)

110番や119番などの緊急電話サービスは、近年いくつかの問題を抱えている。通話が長くなること、ニセ電話が増えていること、通報場所が正確でないこと、複数の連絡が寄せられたときに優先順位づけができないこと、現場把握のための映像が無いことなどだ。

Carbyne では110番や119番にかかってきた通話を Carbyne のシステムに転送し、緊急電話を受信するセンターで現場の位置情報・画像情報など、より整理された詳細な情報を把握することが可能になり、より的確で迅速な救助や事後対応につなげることができる。メキシコの通信会社 América Móvil、ホンジュラスやフィリピンの国家プロジェクトなどで既に導入が始まっている。

Bronze Prize: Nature Remo(日本)

Nature は、エアコンをスマート化する IoT プロダクト「Nature Remo」を開発している。2016年に発表された Nature Remo は、Kickstarter、Indiegogo、Makuake の3サイトでのクラウドファンディングを通じ、総額2,200万円以上を調達。昨年には神戸市と500 Startups が開催した、アクセラレーションプログラム「500 Kobe Accelerator」に採択され、先ごろ大和企業投資から1億円を調達した。

開発・製造体制が安定したこともあり、ビックカメラ・コジマ・Amazon での販売が開始。アーリーアダプターでなくても、市中の家電量販店で手軽に買えるようになったのは、最近の大きな動きだ。関西電力との協業では、インターネットとセンサー技術を活用し、分散型電源を普及させ、ピーク時に活用できる電力供給源の代替としてエネルギーを自給自足出来るバーチャルパワープラントの実証事業に参画している。

Bloodhero(フィリピン)

事故や手術で必要となる献血は全人口の1%相当分程度が必要とされるが、実際には提供血液が不足している。結果として、血液を必要とする患者の家族が、ソーシャルメディアで「○型の血液の提供をお願いします」などと助けを求める投稿が後を絶たない。Bloodhero は、血液が必要な人に血液を届けるソーシャルプラットフォームだ。

献血をするごとにポイントが貯まり、貯まったポイントに応じてステイタスが付与される。献血者はステイタスレベルに応じて、スパの無料優待などの特典が得られる。Bloodhero を導入した病院では、献血者のリテンションレートが23%増加する効果がみられているという。2018年10月から12月期で、5万件の献血実績到達を目指す。

Ouireward(フランス)

飛行機の欠航や遅延を経験する人々は、年間に世界で100万人に上るという。一方、ヨーロッパでは欠航はもとより、3時間以上の遅延が発生した場合、航空会社が搭乗客に補償することが EU261 法で求められている。距離にもよるが一般的に最高700ドルのキャッシュバックを受け取ることができるが、搭乗客が権利主張をするには、航空会社との交渉が必要になる。この交渉プロセスには、多くの書類提出が必要だったり、数ヶ月必要が待つ必要があったり、挙句の果てには拒否されたりして、非常に厄介で面倒だ。

Ouireward では、3分間で記入可能なオンラインフォームをユーザが登録することで、この交渉プロセスを代行してくれる。成功報酬ベースで Ouireward がキャッシュバック金額の25%を手数料徴収する。6ヶ月前にローンチし、37カ国の顧客のリクエストを受け、79の航空会社と交渉し、総額16万ドルのキャッシュバックを徴収代行した。航空会社との提携も視野に入れており、現在200万ドルの資金調達、日本の航空会社や保険会社との提携を求めている。

Yiyuan/宜遠(中国)

Yiyuan(宜遠)は、モバイルアプリを使って写真を撮影することにより、人工知能が皮膚の状態を評価し障害を診断するサービスを提供している。アプリを通じてアドバイスを行い、人の顔の部位にランドマーキングを行うことで、治療の前と後の状態をディープラーニングで自動診断し、快方に向かっているか追加治療が必要か、などを患者に伝える。

将来的には、化粧品店舗向けの API や SDK の提供、電話応対サービスなどを拡充しマネタイズするようだ。
これまでに QF Capital(啓賦資本)と清華大学が支援するアクセラレータ LeaguerX(力合鋭思)からエンジェル投資を受けている。

Travelio(インドネシア)

インドネシア版 Airbnb とも称される Travelio は、通常のバケーションレンタル以上に高品位なサービスの提供を狙っているようだ。不動産会社が保有する物件などの管理も代行し、掃除やリネン交換などホテル基準のサービスを長距離滞在、レジャー、出張ニーズの顧客に提供する。

現在インドネシア国内25都市でサービスを提供しており、取扱物件数は3,000件。国内ユーザと海外ユーザの比率は、65%:35%。ユーザは1回あたり平均4.95泊しているということで、コストパフォーマンスが追求されやすい長距離滞在に人気があるようだ。ジャカルタ市内では多くの物件が建設される一方、売れていない物件も相当あるようで、不動産デベロッパに対して、それらの物件のマネタイズに貢献するという側面もあるようだ。

BackTech(日本)

BackTech2016年にリリースした「ポケットセラピスト」は、京都大学大学院医学研究科の研究成果である腰痛タイプ判定アルゴリズムを用いて、ユーザーに最適なエクササイズの提案や腰痛タイプに合わせた優良治療院を紹介する。サイバーエージェントから資金調達を受けている。

腰痛は多くの労働者が抱える問題だが、労働者にとっては健康問題であると同時に、雇用する企業にとっては生産性を下げる一因となる。ポケットセラピストはアプリを通じて、セラピストからアドバイスを受けられる環境を提供、費用は雇用者である企業や保険会社などが負担する。

Protectiq(ロシア)

Protectiq は、シェアリングエコノミーを応用した P2P 保険サービスだ。発展途上国などで保険の未整備により、腫瘍疾病やガンが原因で死亡する人が少なからずいることに着目。保険料収入、保険料支払のプロセスにはブロックチェーンが利用されており、一連のお金の流れが透明化されることにより安価な料金体系を実現している。

具体的には、ユーザは年間一律の20ドルの保険料を支払う。保険料は第三者の献金者や、社会奉仕を宣言する企業に支払ってもらうこともできる。Protectiq はユーザからの申告に基づき、最大で35万ドルまでの保険金を支払う。特に、18歳〜40歳の若年層の、あまり裕福では無い人々をターゲットにしている。

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