農家のオンライン販売に数百億円相当を支援するも、困難に直面する中国

by Tech in Asia Tech in Asia on 2018.3.15

オンラインで販売・出荷予定の柿とともに、写真のポーズを決める中国南西部にある農村の家族
Image credit: Tech in Asia

昨年の夏、27歳の Huang Dehuai 氏は中国全土で化学肥料を売る月給1,600米ドルの仕事をやめ、故郷である北梭に帰ってきた。そこでは広東省南西部の山を囲む集落の公務員として月に300米ドルを得ている。

Huang 氏は胸を張って言う。

仕事のひとつは村民が柿をオンラインで売る手伝いをすることです。村民は e コマースどころか、インターネットについてもあまり知りません。

Huang 氏を動かすのは故郷を貧困から救いたいという夢だ。北梭の多くの村民と同様に、Huang 氏の家族もシャクシャクとした食感の柿を育てて稼いでいる。貧困から裕福になった通楡の例とは違い、田舎の起業家を刺激するものは何もない。かつて中国東北部の活気のない土地だった通楡は、その豊かな土壌から産出される向日葵の種や豆や穀物をオンラインで販売することで景気がよくなった。

貧しい地域を e コマースを通じて活気づけるというアイデアは近年の政府の方針の一つである。農村部の収入は増えてはいるが、都市部の水準にはまだ遠く及ばない。2017年の都市部の住民の収入は農村部に比べて約3倍であり、多くが農家である3,000万人の中国農村部住民はまだ貧困の中で暮らしている。議員たちは e コマースがより多くの農作物を売り収入水準を押し上げる手助けになると考えている。この国家的な計画は進んではいるが、困難が待ち構えている。

公共および民間部門の取り組み

2016年、中国国務院は e コマースを反貧困運動における国家戦略として正式に定めた。閉鎖的な地域へ道路や物流ネットワーク、ブロードバンドインフラを構築するために数十億人民元(数百億円)が費やされた。中国は貧しい村の50%が2020年までに e コマースを実施する能力を得ることを目標としている。

民間の事業も加わっている。2016年の商務部年次報告書によれば、同年までに Alibaba(阿里巴巴)は2万2,000の村に Rural Taobao(農村淘宝) サービスセンターを配置したとのことである。これらの実店舗の店頭にはコンピュータと訓練されたスタッフが置かれ、農家が Taobao(淘宝)に店を開いたりオンラインで注文を受ける際の手助けを行う。同報告書によれば、同社最大のライバルである JD(京東)も、1,700以上の県や行政地域に店を構え、村々を見渡しているという。

こういった取り組みの結果として、農村部の作物のオンライン販売は飛躍的に上昇した。農業部のデータによると、2013年から2015年までに取引は3倍以上になり、236億米ドルに達した。

通楡の建て直しの貢献者として広く知られる起業家の Mo Wenjian(莫問剣)氏は、次のように語る。

政府と民間のビジネスは農村部のeコマースの促進に大きく貢献しましたが、まだやるべきことはあります。

地方の人材不足、地方の近視眼的な役所、eコマース企業の私的利益などは、多くの村や県にとって障害となっています。

広東郡にある JD(京東)のブリック・アンド・モルタル店舗(旧来型実店舗)は、農民が製品を売りやすくしている。
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人材の格差

北梭の朝は概して静かである。柿の木の葉が立てるさらさらという音がときおり静寂を破る。Huang 氏と同年代の村人の多くは、国内の他の田舎の若者と同様に、より高い収入を求めて都市部へと去ってしまった。2011年から2016年の間に、都市部へ移住してきた人数は11.4%増加し2億8,100万人になった。

Huang 氏のような人材の不在が農村部の e コマースにブレーキをかけていると中国政府は考えている。商務部の報告書は、次のように強く主張している。

農村部は低い収入などの環境に束縛されており、e コマースの人材を訓練し、引きつけ、留めるということが特に困難である。

政府がインターネットやロジティクスのようなインフラを引き受け、ネットショップが販売のチャネルを提供しても、多くの農家は e コマースのノウハウを持っているわけではない。

中央政府は地方の公務員が外部へ助けを求めるよう促している。たとえば通楡は Mo 氏の経営するサードパーティ e コマースサービスプロバイダ Yunfei Hewu(雲飛鶴舞)と契約している。設立して3年のこのスタートアップは県の行政から資金提供を受け、品質管理から加工処理、梱包やブランディングに至るまですべての面で、しかも無料で農家の手助けを行っている。

しかし通楡のようなところは多くはない。上司に好印象を与えるために多くの地方公務員は見た目が立派な仕事場を作りeコマースを支援しようとするが、そこで働く人材の不足に陥る。

多くの地方政府はすぐに結果を求めます。これらのeコマースセンターのように、上司に見せることができるものを。

全国で31の e コマースパークを運営してきた Wu Dong 氏はそうコメントを述べた。商務部によると、2016年までに中国には1,122のeコマースセンターがあり、そのうちの300は県レベルであるとのことである。多くは空いたままであり、地方によっては空室率が40%に上る。

たとえ人材が存在しても、eコマースの専門家と懐疑的な農家らが衝突することもある。

梱包のような単純なことでも、交渉には数週間かかります。柿をひと箱につき以前と同様の12個ではなく6個つめる理由が、農家の方には分からないのです。彼らは売る量が減ると感じるのですが、実際にはトータルで見て、より高い平均価格帯で、より多くのセットを売ることができるようにお手伝いしているのです。(Huang 氏)

農家らの信頼を勝ち取ることが鍵であるとLi Xingning(李興寧)氏は助言する。同氏は Matrix Partners China の支援を受ける農村部の e コマースプラットフォーム Dafengshou(大豊収)のマーケティングディレクターである。Dafengshou は農業の専門家を配置し、村の農家らに無料で教育を実施している。信頼関係が構築されれば、スタートアップは農家を顧客へと変えることができると Li 氏は語る。

農村部向け E コマース会社 Dafengshou(大豊収)主催のイベントでは、オンライン販売に詳しい農民の話に聞き入る農民らで満員に
Dafengshou(大豊収)

オンラインマーケットプレイスの限界

収穫物が Alibaba や JD へ至る道ができても、それだけでよく売れるというわけではない。テクノロジーに精通した Huang 氏のような隣人または Mo 氏のような外部の助けがなければ、村人は自分たちの力だけで他の数千ものオンライン農作物販売者と勝負することとなる。

政府の貧困緩和という主張の求めを受けて、いくつかのネットショップは農村部の作物に無料で検索時の優位性を与えた。

ですが無料のトラフィックは稀です。Alibaba も JD も中国のすべての農家にそれを提供できる余裕は持ち得ませんから。

匿名を希望する e コマース企業のブランディングエグゼクティブはそう述べた。オンラインで販売するのも無料ではない。農村部の店舗は、都市部の店舗と同様に、取引処理の度に Rural Taobao へ手数料を支払う。

政府は e コマースのリーダーらに貧困緩和と大声で言うが、そう言われても利潤と株主利益が最大の懸念であるようだ。

中国における e コマースへの支出は増加を続けてはいるもののそのペースは鈍化しており、業界を牽引する大手企業は未開発の市場、つまり農村部へと向かっている。オンラインで購入する商品はしばしば、個人商店で買うよりも安価で高品質であるため、こういった遠く離れた地の顧客は Alibaba や JD を暖かく包み込んだ。

中国商務部によると、2016年には農村部の顧客はオンラインの商品に1,410億米ドルを使い、その多くは都市部の工場で作られた服や家電であった。2017年、中国のブラックフライデーにあたる光棍節(独身の日、11月11日)のセールの喧騒の期間中、Rural Taobao の総流通総額は前年比で8倍に増加した

対照的に、昨年オンラインで売られた農村部の作物は250億米ドル相当に過ぎなかった。

農村部の20億米ドルの金融市場もまた競争の目的となっている。近年、Alibaba と JD は支払いや資産管理、保険、ローンやその他サービスを中国の田舎に持ち込んだ。この意欲はJDの農村部戦略の現れであり、同社はそれを3つのFにまとめている。つまり、「farm to table(テーブルに農園を)」、「factory to country(地方に工場を)」、そして「finance to country(県に金融を)」である。

農村部の作物の問題を解決するのにeコマース大手企業に望みを託してはいけません。(Mo 氏)

Mo 氏は、ソリューションの一部は Alibaba や JD の向こう側にあると考えている。たとえば、ソーシャルメディアを通じて売り込めばより安価だが、効果的ではないというわけではない。昨年の秋に Huang 氏が販売した柿120トンのうち20%はソーシャルメッセージアプリ WeChat(微信)を通じてのものだった。

野菜や果物を購入する際には、顧客は自分の目で実際に確かめるかブランドを信用する必要があります。

WeChat の記事内のコンテンツマーケティングを通してであっても、グループチャットで潜在的な顧客と話すことを通じてであっても、WeChat はそういった信用をオンラインで構築する良い方法です。(Huang 氏)

しかしeコマース大手企業らは貧困緩和への取り組みを強化している。昨年、Alibaba と JD は貧しい地域からの商品を、世界中からの商品とひとまとめにするのではなく、都市部の顧客へ向けて売るための販売チャネルを始めた。

広東省南西部で農家のオンライン販売を手伝う県職員であるLing Shuisheng 氏は次のように述べる。

農村部で e コマースを営むのは簡単ではありません。ですがうまく行くように全力を尽くしています。

日々eコマースの夢を追う数百万の中国農村部の人々は、目を覚ましてさらなる困難に直面する。しかし、通楡のようなサクセスストーリーに駆り立てられて、彼らは意を決しているように見える。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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