Y Combinatorが支援するマレーシアのフードデリバリスタートアップDahmakan、急成長するタイ市場参入に向け現地競合のPolpaを買収

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Dahmakan の共同創業者の3人:Jonathan Weins 氏(左)、Jessica Li 氏(中央)、Christian Edelman(右)
Image credita; Dahmakan

アジアの人は食事が好き。だから、この地域で最大のテックセクターはオンラインのフードデリバリーだと聞いても特段の驚きはない。

中でも急速に成長している市場はタイ。最近4年間でフードデリバリー業界の規模は倍増した。コンサルタント企業 Euromonitor International の調査によると、2014年に4億6,300万米ドルだったタイのフードデリバリー市場規模は2018年末までに10億2,000万米ドルになるという。

マレーシアのインスタント食品デリバリー企業 Dahmakan がバンコクを拠点とする Polpa を買収したのは、そのような理由からだ。同社がタイに進出するのはこれが初めてとなる。

Dahmakanと同様に、Polpa もまた、垂直統合された〝フルスタックの〟フードデリバリーサービスである。自ら献立を作り、キッチンを運営し、料理を用意する。その後、注文に応じて食事を届ける。

Dahmakan は今後数週間かけて、AI ドリブンの配送経路システムや注文予想ツールなど自社の物流・業務テクノロジーを Polpa のプラットフォームに統合していく。現在はウェブサイトでしか受け付けていない Polpa での注文も、近くローンチされる Android と iOS のアプリで対応する予定。

Dahmakan は今回の買収金額を公表していないが、共同設立者兼 COO の Jessica Li 氏は Tech in Asia に対し、買収を受けて Polpa の共同設立者である Julian Timings 氏と Prongfa Uennatornaranggoon 氏が Dahmakan の取締役メンバーになると述べた。

Li 氏によると、Polpa は配送量と成長率の点でバンコク最大のフードデリバリー事業者だという。2014年の設立以来、利益を計上している。

Polpa チームが持っているブランドとトラクションの両方に魅力を感じました。Polpa はきわめて効率的な生産体制と配送システムでプラスのユニットエコノミクスを確保しましたが、それを大変素晴らしいと思っています。(Li 氏)

仕事中の Dahmakan のシェフ
Image credit: Dahmakan

彼女はさらに、Dahmakan ではバンコクが最も成長する市場となり、Polpa の収益も Dahmakan 子会社として運営される初年度に5倍増になると予想していると述べた。

今回の買収以前、Polpa はベンチャーからの投資は一切受けていないという。

ウェブアナリティクスサービスの Similarweb によると、Polpa の2017年12月から2018年2月までの月間サイト訪問数は9,781回で、月間ユニークビジター数(1ヶ月の間に最低1回サイトを訪問した人の数)は5,000未満である。同時期、タイにおける Foodpanda の月間訪問数は29万359回で、ユニークビジター数は12万1,878人だった。

市場を手に入れる

Polpa には同じようなビジネスモデルがあるため、Dahmakan の買収には意味があり、シナジーも期待できる。同社が昨年8月に Y Combinator(YC)に参加したマレーシア企業第一号になったと発表した時点で、有望なタイ市場に参入することが示唆されていた。

Dahmakan は本国市場では成功を収めているようで、Li 氏の報告によると年間収益は4倍増になったという。YC に参加した時点で、このスタートアップは年央までに採算を確保する見込みだと話していた。見通しの達成に向けて順調に推移しているかと尋ねられた Li 氏は、「すでにプラスのユニットエコノミクスを確保しています」と答えた。

マレーシアではトラクションを獲得した同社だが、タイの地でゼロから事業を立ち上げて参入するのではなく、競合を買収したことには大きな意味がある。

タイには10億米ドル以上の市場潜在性があるが、これは激しい競争があることを意味している。Foodpanda、Line の「Line Man」、Uber の「UberEats」といった企業が提供するフードデリバリーのマーケットプレイスモデルは、すでにバンコクで稼働している。シンガポールを拠点とする配車サービス大手 Grab も、ベトナムのスタートアップ Foody 同様、タイでの宅配サービスを提供している。

Grab やUberのインドネシアでの競合 Go-Jek もまた、配送サービス「Go-Food」を導入して今年中にタイその他の東南アジア諸国に参入する意思を示していた

Polpa を買収することで Dahmakan は、注文を処理して利益を挙げている有名で信頼されているブランドをすぐさま手にすることができるのだ。何もないところからバンコクで事業を立ち上げる際に必要となるブランド構築、採用その他間接部門に対するリソースを割く必要がない。

だからこそ、Li 氏の口から他の買収案件や現地事業者との提携が検討されていると聞いても驚くほどではない。Dahmakan は今年後半にかけて、香港やジャカルタといった次なる拡張目標を視野に入れている。

連携がなされている目標市場で既存事業者がいる場合、当社はその会社と提携して迅速なスケールに向け技術の提供と支援を行います。フードデリバリー業界では世界でさらに多くの買収が間違いなく実施されるでしょう。そのような提携をすることには利点があるのです。

Dahmakan は昨8月に YC プログラムに参加した際には、受け入れた投資金額を公表していないが、Atami Capital、Texas Atlantic Capital、Nestle Germany の元 CEO といったアメリカのアクセラレータや投資家より260万米ドルを調達していたことを本日(原文掲載日:3月20日)明らかにした。

2017年2月の130万米ドルのシードラウンドと合わせて、同社は400万米ドルを超える調達を実施してきた。それは L i氏が間近に迫っていると示唆するシリーズ A ラウンドでの調達以前の話だ。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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