台北市、スマートシティへの変貌に向けてブロックチェーンに代わる分散型台帳技術を活用

by TechNode TechNode on 2018.3.20

Image credit: ziggymars / 123RF

我々はモノのインターネット(IoT)の時代に生きており、リソースやデータ、そしてサービスはますます機械の間でやり取りされるようになっている。つながりあう機器が急激な増加を続けるにつれ、相互運用性やリソースの共有は、情報や記憶装置から電気やセンサーデータに至るまですべてが、マシン・ツー・マシン経済の重要部分である。

多くの人がブロックチェーンをマシン経済を支える根幹の技術になると期待を込めて見ているが、スケーラビリティに非常に富むというわけではない。それこそが IOTA の考案者が解決したいと考える問題である。仮想通貨としての方がよく知られているが、IOTA はもっと野心的なものを目指している。つまり、IoT  のバックボーンである。

IOTA はブロックチェーンを使う代わりに、Directed Acyclic Graph(DAG)もしくは Tangle と呼ばれる分散型台帳技術をベースとしており、ネットワークを通じてデータや金銭の移動を可能にする。ブロックチェーンとは違い、Tangleに追加されるすべての取引では両者が確認される。つまり、Tangle ネットワークは取引量が増えても遅くならないということである。この技術により IOTA は大量の取引を毎秒扱うことができるようになる。

IOTA の共同設立者である David Sonstebo 氏は次のように述べた。

データには完全な耐タンパー性が求められ、すべての分散型台帳はそれを備えています。しかし IOTA はある意味でユニークなやり方をとっており、一般的なブロックチェーンとは違って費用やスケーリングの限界に縛られません。

これらの特徴を持つ IOTA はブロックチェーンよりも将来性があるという。そして IOTA は支払いや情報の保管に関しては特に適しているため、すでに多数のアプリケーションが存在し、その中にはマイクロペイメントや投票、情報やデータの移動が含まれている。IOTA はすでに自動車や製造、ヘルスケアといった業界でテストされている。

つい最近、ドイツのエレクトロニクス大手であり IoT の主要なパテントホルダーでもある Bosch が、IOTAに大きく投資する最初の多国籍企業の一つとなった。Volkswagen は1月にチーフデジタルオフィサーの Johann Jungwirth 氏が IOTA(アイオータ)財団の監査役会へ参加したと発表した。これは分散型プラットフォームに関してさらに IOTA と協力し、近い将来にスマートカーを実現させるつもりであると示唆するものである。

台北市がスマートシティソリューションにおける Tangle をテスト

1月、台北市は Tangle をベースとしたスマートシティソリューションの研究のために、ドイツを拠点とする IOTA 財団と提携合意を交した。同市はすでにデジタル身分証明書やエアクオリティ監視システムを含む多数のプロジェクトを発足させている。台北は IOTA をテストする世界で最初の都市の一つとなった。

多くの人はブロックチェーン技術をユニバーサルなものであると考えているかもしれませんが、そうではありません。(Lman Chu 氏)

Lman 氏はブロックチェーンよりも優れたスマートシティソリューションを追求するスタートアップ Biilabs の共同設立者である。この台湾のスタートアップは台北市と協力し、IOTA 財団と共にスマートシティプロジェクトの核心技術を提供している。

IoT 機器は2020年までに500億に達する見込みで、1日に50兆の処理を行うことになると推測されています。現在の私たちが持つ既存のブロックチェーン技術ではこれだけの量の処理を扱うのは到底不可能です。(Lman 氏)

Lman 氏は、このスケーラビリティ問題に気づいているのは自分たちだけではないと付け加えた。

皮切りとなるプロジェクトは IOTA の TangleID 技術を基にしたデジタル身分証明書システムの導入である。台北市のイニシアティブ「Smart City Living Lab(台北智慧城市專案弁公室)」は実証実験の段階に入っており、市はなりすましや不正選挙から市民を守るよう設計された新たな身分証明書システムである「Digital Citizen Card(数字公民卡)」を間もなく展開する予定。やがてはこの身分証明書システムが病歴を辿るというような他の公共サービス分野でも使われるようになる可能性もある。

TangleID システムはデジタルな身分証明書によくある難問、つまりデジタルの身元と現実の人間のデジタルではない身元を結びつけるという点を解決する。中国本土はこのタイプの問題では稀有な例外である。論争の的となっている実名登録法が施行されており、これによりインターネット企業やサービスプロバイダはユーザの登録に際して実名を要求し、その真偽を確認する権限が与えられている。

中国の外では、いまだにこれは大きな問題である。

オンラインの情報が実際の人物と一致するかどうかの確認の過程は必須であるが非常に困難でもあると Lman 氏は述べた。続けて Lman 氏は、だからこそ、資金洗浄の予防措置として金融サービス企業はいまだにKYC(Know Your Customer)の書類のようなものを顧客の身元を識別し確認するために必要としていると説明した。技術が実現した暁には、市民は自身のDigital Citizen Cardを病歴や戸籍記録といった別の形のデジタルアセットとつなげることができるようになるだろう。

より良いエアクオリティ制御のための共同の取り組みにおいて、Asus、Academia Sinica、Edimax、Realtek、LASS(Location Aware Sensing System)、そして台北市は空気品質と汚染のデータを集める Airbox の手のひらサイズの空気センサーを使っている。このセンサーは空気の汚染をリアルタイムで監視するために学校や家庭に設置されることになる。Biilabs との協力において、Airbox はインセンティブの支払いを IOTA と連携し、データは Tangle に蓄えられることになる。

まだ明かせない場所でも Tangle のテストを実施していると Lman 氏は TechNode(動点科技)に語った。

台北市と IOTA 財団の覚書調印式
Image credit: IOTA 財団

初めて Tangle を大規模に取り入れる

台北が IOTA ベースのスマートシティソリューションを取り入れた最初の都市というわけではない。実際、オランダのハールレムがスマートシティソリューションのために Tangle を導入した最初の都市であり、公簿の中の法的文書を確認するためにこの技術を使用した。

だがなぜアジアにあるこの都市が大きな脚光を浴びているのか。Lman 氏は IOTA の設立者チームとの会話を思い出しながら語った。

注目を集めたのは予想外というわけでもありません。私たちもこれは重要な意味を持つことになると思っていました。なぜなら、この技術が大きな都市でテストされるのが初めてであり、IOTA 技術の採用にとって今回こそが決定的だからです。

台北市は世界で40番目に人口が多い都市圏だ。台北市と台北都市圏(基隆と新北)を合わせた人口はおよそ740万人以上と推測される。

ハードウェアの製造とエレクトロニクスの豊かな歴史を持つ台湾で、IoT は戦略的経済分野だと考えられている。次の10年、政府の方針と予算は間違いなく IoT 部門を奨励するだろうと Lman 氏は述べた。これは非常に好都合なポジションである。

なぜなら政府は IoT にお金を使う最大の相手ですから。世界中どこであってもそれは同じです。

台湾は IoT の発展を奨励するイニシアチブを展開している。例えば、Asia Silicon Valley Plan(亞洲・矽谷計画)は2016年12月にIoT産業の促進を狙って始められた。これらの要因はIOTA受け入れを進める思いがけない好期となった。

基礎を築く

スマートシティ発展の中心的役割を果たしてはいるものの、まだ多くの人にはなじみのない比較的新しい技術である。ブロックチェーンと分散型台帳は理解が難しいコンセプトだ。IOTA を前進させるためにはコミュニケーションが鍵であると Lman 氏は述べる。

最大の課題は一般の人々とコミュニケーションをとり、コンセプトを売り込むことです。そこでは技術的なことは決して難しい問題ではありません。

現在、Biilabs は核心技術の開発と強化に専念している。台湾の他の都市およびヨーロッパやアメリカの都市からも関心を寄せられていると Lman 氏は明らかにした。

IOTA とブロックチェーンは、正直に言えば、その時どきの技術として昔からある同じ問題を解決しようとしています。IOTA は現実世界の問題を解決できるのでしょうか。産業におけるコストカットや、より効率的な機能の助けになるのでしょうか。(Lman 氏)

これらはスマートシティ、スマートヘルス、そしてもちろん IOTA も含まれるスマートなあらゆることのイノベーションを駆り立てる根源的な問いかけである。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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