Alibaba(阿里巴巴)のEle.me(餓了麼)買収が意味するものとは?

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Ele.me(餓了麼)
Image credit: Ele.me(餓了麼)

今週(2月最終週)は、Alibaba(阿里巴巴)が食事宅配プラットフォームの Ele.me(餓了麼)を買収するとの噂で持ち切りだった。Alibaba が Ele.me を95億米ドルで買収する計画があると複数のメディアが報じた。両社ともこの噂に対するコメントを避けたが、私たちが把握していることは1つ。両社の間で何らかの動きがあったということだ。

Ele.me を所有・運営している香港拠点の Rajax の一株主であるBeijing Hualian Department Store(北京華聯)は本日(原文掲載日:2月28日)、Rajax が Ele.me の持分追加に関して Alibaba と実際に交渉していると発表した。しかし、話し合いは終了していないという。

Hualian はロイターに対し、「株式移転の価格、時期、数量といった重要事項についての交渉は継続中」と語った。

それではどうして、Alibaba による Ele.me の買収がそれほど重要なのか? Alibaba は傘下の金融部門 Ant Financial(螞蟻金融)とともに、すでに同社の32.94%を保有する最大株主になっている。買収の噂は、中国系メディアでかなり長い間報じられていた。Ele.me の CEO である Zhang Xuhao(張旭豪)氏は月曜日(2月26日)、ネットでの投稿で読者に対し「冷静になるように」と訴えた。

WeChat Moments(微信朋友圈)

友人も親類も、少し落ち着いてほしいです!毎年、このニュースが流れていますが、力が足りないようです。懸命に仕事を続けなければ。

Zhang 氏は WeChat Moments(微信朋友圈)で謎めいた言い方をした。

Zhang 氏が言及したのは、昨年12月に世間を賑わした噂だ。当時、Alibaba が Ele.me を買収するのは、投資対象で利益をあげられなかった時に投資家が資金の回収を請求できる基準である VAM(バリュエーション調整メカニズム)を同社が達成できなかったからだという噂である。両社ともこの件は否定したが、Alibaba と Ele.me をめぐる憶測は溢れ続けるだろう。

こうした憶測の多くは、Alibaba が自身で展開する傘下の配送サービス Koubei(口碑)の今後の役割に関するものだ。Ele.me は Koubei と統合され、Alibaba グループの CEO である Daniel Zhang(張勇)氏の手元に置かれるだろうと予想する人もいる。Ele.me はすでに正式に Koubei と接触しており、 Alipay(支付宝)のアプリとも統合されている。

違う組み合わせもあり得ると考える人たちもいる。昨年に Alibaba と Ant Financial が10億米ドルを Ele.me に投資している間(2回連続)、Alibaba は、Koubei と Ele.meと で業務の切り分をするだろうと述べた。Koubei はレストランに特化する一方、Ele.me は宅配に集中する。Koubei はすでに杭州で無人レストランのレイアウトを完成しているが、半加工食品で新たな市場の創出に取り組んでいるという(Tencent Tech=騰訊科技の報道による) 。

Alibabaが可能性のある買収を行うことで得られる明らかなメリットは、 「Hummingbird(蜂鳥)」と呼ばれる Ele.me の配送システムだ。最近のデータによると、このシステムは1,200の中小の都市で日々450万件の注文を受けているという。Alibaba にとっての大きな目標は、データを通じて人員効率性の問題を解決することだ。配送人員の部隊は、Alibaba が提唱する「新しい小売」計画の重要な要素となる可能性がある。

私たちが知っていること、それは Alibaba と Ele.me の買収案件が進展していけば、食事宅配事業における Alibaba と Tencent(騰訊)の寡占がさらに堅固となることだ。Tencent は O2O(オンライン・ツー・オフライン)プラットフォームで、食事宅配からホテル予約、グループ購買まで幅広くサービスを展開している Meituan-Dianping(美団-大衆点評)を支援している。iiMedia(艾媒)が2017年上半期に公表したデータによると、食事宅配市場で Ele.me が41.7%のシェアを占め、Meituan-Dianpingが41%、Baidu(百度)の持ち帰りサービス Baidu Waimai(百度外売)が13.2%だった。Baidu は昨年8月、Baidu Waimai を競合の Ele.me に売却したことで、この競争から正式に離脱した。

iiMedia(艾媒)

ビジネスアナリストの Doug Young 氏によると、食事宅配市場はテックの両巨人企業によって巧妙に分割されているため、この分野での争いは落ち着くだろうという。しかしこれは、終戦を意味するわけではない。

AlibabaとTencentが食事宅配スタートアップに手を伸ばす選択をした理由として、Alipay および WeChat Pay(微信支付)という両社の決済サービスの強化が挙げられる。しかし食事宅配は、モバイル決済の利用を促進させるにあたり、パズルの一部分であるにすぎない。ホテルの予約や映画のチケット、「新しい小売」の取り組みに至るまで、中国の O2O 市場はビジネスの機会で溢れている。Alibaba と Tencent との間で繰り広げられている同じような代理戦争が行われている分野はたくさんある。つまり、楽しみはまだ残されているということだ。

【via Technode】 @technodechina

【原文】

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