Booking.com、掲載室数がAirbnbをしのぎ500万件超に——昨年末ローンチのボットは、寄せられる疑問の半数を5分以内に解決することに成功

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Image Credit: Booking.com

大手旅行サイト Booking.com は掲載室数がレポートベースで500万件を突破し、Airbnb の450万件を超えたと発表した。

Booking.com はまた民泊施設やアパートメント等の掲載数が昨年より27%増加したとも述べた。この発表は同社の「トータルプロパティ」から「レポーテッドリスト」への転換の一部であり、Airbnb との直接対決を強調するものである。今までの Booking.com は主にホテルのリストを提供すると捉えられてきたが、この認識を積極的に変えようとしている。

Booking.com は世界最大の市場価値を持つ旅行会社 Booking Holdings の主力サービスである。

あらゆる疑問の半数をボットが5分以内に解決

これとは別に、Booking.com はカスタマーエンゲージメントの向上のために AI を使うことで新たなマイルストーンを達成したと述べた。同社の Booking Assistant ボットは日々カスタマーサポートに寄せられる数千件の疑問の半分を5分以内に解決しているという。この数字は7月の25%や12月の30%からアップしている。そこで同社はボットをベータ版からローンチした

この進歩は Booking の AI への取り組みが報われた証であるとカスタマーサービス部門の VP である James Waters 氏はボットの進歩についての VentureBeat とのインタビューで述べた。5分間というのは AI で疑問を解決する時間としては長く聞こえるかもしれないが、旅行に関する疑問は複雑で多岐にわたることがある。

確かに、ボットを構築する仕事は、旅行者やホストが、しばしば同じ言語を話すことなく、増加を続ける情報を共有する必要があると気付くことにつながる。そして今や Booking.com は宿泊施設市場で急成長を果たした Airbnb との勝負を繰り広げており、このボットはカスタマーサービスを増加させることで価値ある援軍であると証明して見せることができるかもしれない。

Booking.com のボットは予約プロセスが終わった後に出てくる疑問を扱っているだけであるため、それ自体が予約収入を増加させているのかどうかを述べるにはまだ早い。例えば、旅行者は早めのチェックインが可能か、ペットの持込について、ベッドのサイズについて問い合わせることがある。

ボットによるエクスペリエンスの直接的な結果を追跡したり、それがボットによる成果であると判断することは困難である。リピーターは素晴らしいボットのおかげなのか、競争価格のおかげなのか、それとも他の理由なのか?だがボットのデータは良いものに見える。Booking Assistant のユーザが「完了」をクリックすると、ボットは「お役に立ちましたか?」と訊ねるが、85%がイエスと答えている。

ボットはこれまでに100万件以上の疑問に答えており、同社は今年の英語での予約へのアクセスを100%まで増加させる計画であると Water 氏は述べた。Booking には3,000万以上のユニークユーザがいるが、英語のユーザと英語以外のユーザを分けることはしないという。

AI 奮闘の原動力は実験的文化

Boooking.com は Booking Holdings が所有する主力サービスであり、同社は他にも Priceline.com、Kayak、Rentalcars.com、そして OpenTable を所有している。時価総額1,000億米ドルの Booking Holdings は爆発的な成長を遂げ、過去2年間で倍の規模になった。次点につける競合の旅行会社 Expedia(160億米ドル)や TripAdvisor(60億米ドル)よりも何倍も大きい。そして同社は徐々に非公開企業である Airbnb を競争相手と見るようになってきており、Booking.com が存在感を高めたいアメリカにおいては特にそうである。Airbnb は類似のユーザ向けボットを持っておらず、代わりにメッセンジャーで旅行者とホストのコミュニケーションを助けている。サードパーティの企業である Burner もボットを提供しているが、その「Hostbot」は Airbnb のホストとユーザ向けではあるものの、Airbnb 専用というわけではない

[追記:もう戦いは始まっている。本記事が発表された後に Airbnb の情報ソースから「Airbnb は Booking のコモディティモデルとは反対のコミュニティモデルを持っているため、成長はより早く支出はより少なくなっている」と e メールが送られてきた。詳しく訊ねると、同ソースは、例えばホストへの手数料の請求はユーザへの請求よりも少ないというように、Airbnb はホスト優先のビジネスモデルであると説明した。Booking.com の手数料は反対で、ホストから多く取りユーザからは取らないというものである。]

新たなブランディング推進の一環として、先月 Booking.com の親会社は社名を Priceline Group から Booking Holdings へと変更した。

同社は小さく自立的なユニットでなされるコンスタントなテストと最適化を通した素早い反復を優先するデータドリブンな文化による成功であるとしている。Booking.com では100人以上のデータサイエンティストがメッセージングやカスタマーサービス、およびその他の製品開発分野に取り組んでいる。彼らの多くはアムステルダムにいるが、同社はテルアビブと上海にもセンターを開いた。

今後3年間で予約の半分は NLP(自然言語処理)が関わるものに

Booking.com の CEO、Gillian Tans 氏は2月にサンフランシスコを訪れた際の VentureBeat とのインタビューで、3年以内にサイト上の全予約の少なくとも半分は何らかの形で AI が関わるものになると予測した。同氏は基礎的な機械学習ではなく、自然言語処理を含む AI の発展形という意味で言っている。機械学習は既に、検索結果を含めすべてのレベルのサイトで使われていると同氏は述べた。「思っていたよりも早く進んでいます」と同氏は、ボットとやり取りしているユーザの数について述べた。

確かに、Booking はボット製品の向上のために継続的に変更を加えており、同社の提供品に対して1日に1,000以上の A/B テストを行っていると Water 氏は述べた。先の動画はボットのハイブリッドなアプローチを示すものである。自然言語処理を使いオープンエンドな質問を理解するだけではなく、一般的なトピックやよくある質問およびその回答と共にメニューカードを提供し、ユーザのガイドを手助けする。

ボットが質問に素早く答えることができそうにないときは、誰に回答を求めるのがベストなのかというボットの判断に従って、Booking がその質問をカスタマーサービススタッフもしくは施設のホストに送る。例えば、既にチェックインを済ませた旅行者が宿泊施設のインターネットルーターを再起動する方法を尋ねることがあるかもしれない。施設の設備特有のものであるために、ボットはすぐにその質問を施設のオーナーへ送ることにするだろう。

注目すべき点は、今では質問の半分にボットが質問を上にあげることなく自分で答えているという点であると Water 氏は述べた。そして上にあげるか否かに関わらず、すべての質問に今では5分以内に答えることができるという。

ボットは90の特定のサブトピックを扱うことができる。支払いやアクセス、到着や出発の時間、日付の変更、キャンセル要求、駐車場情報、追加ベッドのリクエスト、ペット規定、そしてインターネットが利用可能かどうかまですべてが含まれている。

メッセージングへの動きはビジネスを推進するだろうか?

ボットは Active Learning という半教師あり機械学習のアプローチを使い、これによりアルゴリズムがユーザとの交流から学習することが可能になる、と Booking のボット向け製品ディレクター Adrienne Enggist 氏は述べた。同社はロジックと AI を完全に自社内で構築している。これはボットが扱う予約後の旅行トピックの幅が狭く、Booking が専門家であり続けることができているためである。ボットプロジェクトが広がるにつれ、どこかの時点で Booking.com は取り組みを加速させるために他の技術を試みることがあるかもしれないと Enggist 氏は述べた。

さらに根本的には、同社はユーザのインタラクションを1つの簡単で即時的な方法に統合することで、メッセージングフォーマットがビジネスを推し進めることができるかどうかをテストしている。もしサービスに Booking のようなルーティング機能があれば、テキストは電話や e メールよりも扱いやすく、魅力的で人間的な感じを提供できる。

Water 氏は次のように述べた。

より多くの顧客がチャットを通じてブランドと交流することにオープンに(そして興味を持つように)なっていることは広く知られています。弊社にとっては、会話型 UI の即時性や簡素さを膨大な量の情報を利用する能力と合わせて活用するということでもあります。それが製品データであっても、お勧めであっても、ヘルプであってもです。

Booking は早くから AI やボットを試してきた。チャットボット革命は旅行者が旅の計画を立てる際に抱く多くの疑問に突き動かされ、旅行業界に最初に起こった。しかし業界内であっても、Booking は先駆者だった。Expedia や TripAdvisor のような競争相手が参戦してくる前に、2年前にボットをテストモードでローンチし、そして Destination ExperiencesPassion Search といったものの提供を試してきたのである。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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