イスラエルのCytoReason、AIを活用した薬のパーソナライズでがん治療に扉を開く

by Stewart Rogers Stewart Rogers on 2018.4.27

Image Credit: CytoReason

AI(人工知能)を話題とするとき大半の人が抱く第一の疑問は、AI が人間にとって助けとなるのか、それとも害になるのかということだ。しかし医療業界では答えは明確だ。AI は、リスクのある患者を見つけるために使われるにせよ、X 線やスキャンを精査して診断を助けるために使われるにせよ、人々の命を救いコストを削減してくれる見込みがある。

CytoReason は AI を用いて様々な疾患や病気との闘いを支援している会社の1つで、抗 TNF 薬に反応するかどうかを予測できるバイオマーカーを発見した。

TNF 阻害薬とも呼ばれる、この抗 TNF 薬とは何か? これは、関節リウマチ、乾癬性関節炎、若年性関節炎、炎症性腸疾患(クローン病および潰瘍性大腸炎を含む)、強直性脊椎炎、および乾癬など、炎症性の病気の治療に用いられる薬の一種である。

2016年10月に設立され、イスラエルのテルアビブにある CytoReasonは、ハイファにある Rambam Healthcare CampusTel Aviv Sourasky Medical Centre と協力して、自社の AI を応用して効率性の向上を目指している。

CytoReason は免疫システムの AI モデルを活用して、これらの薬に反応した患者、そうでない患者の遺伝子データのパターンを特定した。2グループの結果を比較したところ、同社は、誰がインフリキシマブ(商品名はレミケード)のような抗 TNF 薬に反応するかを予測できる、血液および組織サンプル内の特定のバイオマーカーを発見した。

CytoReason の共同設立者で社長の David Harel 氏は筆者にこう伝えた。

AI が可能にしてくれるのは、抗 TNF 薬に反応する患者たちに共通する特徴(バイオマーカー)を特定することです。ひとたびバイオマーカーが見つかると、患者が(抗 TNF 薬に)反応するかどうかの判断がほとんど即座にできるのです。AI が真に役立ってくれるのは、ビッグデータを吸収して、質問、この場合だと、ある治療法に反応する患者共通の特徴は何かというような質問に数分で答えることができるという点です。

結果は印象的なものだ。直近の研究でより詳細に述べられているが、バイオマーカーは(炎症スコアが2.5を超える患者について)82%の組織バイオマーカーの正確さ、94%の血液バイオマーカーの正確さで実証された。

AI はレミケードによる治療プロセスを短縮する可能性を提供しているだけではない。CytoReason は、他の治療法の効用特定の加速化のためにも AI を活用している。

Harel 氏は語る。

今回のケースでは、バイオマーカーの特定を加速するために AI が用いられました。他の多くのケースでは、AI は新薬の発見をより速く行うために使われています。

AI だけで、抗 TNF 治療の効用の判断が完全に可能になるのだろうか? それとも患者の臨床試験がやはり必要なのだろうか?

私たちは生物学的現象を発見しているのであって、それを発明しているわけではありません。これは、生命科学における AI の応用と、その他の分野における AI の応用との間に存在する大きな違いです。それはつまり、何か新しい技術が導入されるたびに実験で、あるいは臨床試験で実証することができ、また実証しなければならないということです。ただ、こうした臨床実験は私たちがよく知っているような姿を取らなくなるでしょう。AI が臨床試験の目的と方法を変化させているからです。

言い換えれば、AI は臨床試験の行われ方の変革を促進しているのだ。

AI によって私たちは正確な予測を行えるようになったため、こうした予測の実証のために必要とされる臨床試験がより短縮され、低価格のものになりました。今日では、特にがん研究においては、従来に比べてほんのわずかの数の患者だけを用いる臨床試験が行われており、この傾向はまだまだこれから進んでいくでしょう。(Harel 氏)

もちろん、AI が特定の薬や治療法の認可を速めるということはできず、また薬を扱う省庁や規制機関の定めている規制を免れるチャンスを与えることもない。

Harel 氏はこう語る。

業界全体が厳しく規制されているということを肝に銘じておくことが大切です。AI を用いるという考えを規制側が認めるようになったのはほんのここ数年のことです。算定されたマーカーに基づく治療の認可というのは新たな慣行で、行われるようになってからまだ5年も経っていません。

今日(4月16日)の発表で示されたバイオマーカーは序の口にすぎず、どの患者がレミケードのような薬に反応するかを判断する能力が AI にあることは、その他のさらなる分析や研究が裏付けている。

私たちは自分たちの AI モデルに、治療に反応した患者とそうでない患者の免疫システムにどのような違いがあるか、「尋ね」ました。その違いを特定するにあたり、私たちは52人の患者に対する2つの臨床試験を2つの病院で行い、結果を実証しました。最後に、こうした差異を免疫システムで制御していて血液中に追跡できる「レバー」は何なのか、再び「尋ね」ました。私たちはその結果をさらに、22人の患者を対象とした3回目の臨床試験で実証しました。概してそれぞれ別個の3グループ、計74人の患者を実証試験のために募ったのです。(Harel 氏)

AI のもたらすスピードの差は非常に注目に値するものだ。

通常、ある患者がレミケードのような抗 TNF 薬に反応するかどうかを判断するプロセスは3ヶ月以上かかり、試行錯誤しなければならず、患者を副作用や不要なコストにさらすことにもなります。

それに対して、AI は同様のケースの場合、数分で判断を下すことができる。

AI は免疫学者に対し、免疫反応をシステムレベルで見ることを可能にしてくれるだけでなく、製薬会社の開発段階におけるコスト、時間、リスクをも削減してくれる。安全性の問題の発生を阻止してくれるだけでなく、CytoReason の AI は、よりパーソナライズされた医療を生み出し、不要な処方を削減することができるだろう。

CytoReason の次の課題は何だろうか? そして同社は他のタイプの治療にも手を広げるのだろうか?

Harel 氏はこう語った。

私たちは AI を用いてすでに、非常によく使われる自己免疫療法やがん免疫療法におけるバイオマーカーを発見しようとしています。私たちのモデルが「見る」データが増えれば増えるほど、より多くの治療分野で、より多くの治療法に関して予測を行えるようになります。現在、皮膚科、心臓血管、脳神経の治療で検証が行われています。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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