日本の小規模小売店舗のビジネス変容を後押しする「軒先」【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.4.7

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。

Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本には、小さな商店街や市場の長い歴史がある。私が日本について最も楽しむことの一つは、アメリカ風のショッピングモール文化には無いものだ。都市部のオフィス街の人が多いエリアでさえ、裏通りに入ると多くの専門店や八百屋スタンドで埋め尽くされている。

軒先の CEO で創業者の西浦明子氏は、この文化が繁栄し広がり続けることを望み、小規模事業者がポップアップショップ、八百屋スタンド、フードトラックを運営する上でスペースを見つけられるようにしている。軒先は、このようなほんの少しのスペースが必要な小規模事業者と、そんなスペースを所有する家主をつなぎ、その過程で新たなビジネス機会を作り出すスタートアップだ。

軒先 CEO 創業者の西浦明子氏

Tim:

軒先は、どんなお客さんを対象にしているのですか?

西浦氏:

我々の名前が示すように、我々は軒下にスペースを見つけます。少量のスペースが必要な小規模小売事業者と、共有可能なスペースを持つ家主や大規模小売店をマッチさせています。

Tim:

小規模事業者は、スペースを見つけるのが難しいのでしょうか? どの街にも多くの小規模店舗があるように思います。

西浦氏:

小売スペースを見つけるのは、小さな会社にとっては大変です。私自身、最初の子供を産んで小さな輸入業を始めようとしたとき、その困難に直面しました。事業は小さく始めたかったので、長期間にわたる賃貸契約を約束したり、多額の敷金を支払うことができなかったのですが、一方でたいていの家主は短期間では物件を貸してくれませんでした。私は多くの小規模ビジネスが同じ問題に直面していることに気づき、この問題を解決することが、もともとの輸入業のアイデアより大きなビジネスになると思ったのです。

Tim:

アメリカでは、メジャーなブランドが短期間でプロモーションする方法として、ポップアップストアが定着しています。日本では、そうではないのでしょうか?

西浦氏:

ポップアップストアを開設するメジャーブランドは日本にもありますが、我々の顧客の多くは中小の販売事業者、例えば、野菜、靴、洋服、食品を販売している人たちです。多くは、ハンドメイド商品を売る人々だったり、自家製の作物を売る農家の人たちだったりです。

Tim:

空いているスペースを家主が貸したいと思うのは合点がいきます。しかし、TSUTAYA やブックオフといった大規模な小売事業者も、店舗内のスペースを軒先で貸し出していますね。どうしてでしょうか?

西浦氏:

理由は多くあります。一つは、店への客の誘導を増やしたいということ。例えば、我々の顧客のドラッグストアは、スペースを八百屋スタンドに貸しています。人々が野菜を買いに立ち寄れば、「あぁ、ここでシャンプーも買っておかなくちゃ」となるわけです。TSUTAYA などの企業は、新しい店舗を紹介することで、顧客体験を改善しようとしています。

Tim:

どんな店舗にスペースを貸し出しているのですか?

西浦氏:

多くはフードトラックですね。TSUTAYA のお客様の多くは20〜30代で、フードトラックは彼らの興味に合っているのです。もちろん、ベンダーは多くの新しいお客に会える場所を確保できることに喜んでくれますし、TSUTAYA は目新しい面白い小規模ベンダーを取り揃えることができます。この組み合わせから、大規模小売事業者と、小規模小売事業者と、顧客の全員がメリットを享受できるわけです。

Tim:

一度動き始めれば、この種の協業の価値は簡単に見出すことができますね。しかし、小売チェーンはイメージとか、自分たちのスペースがどう使われるかについて極めて気を使います。軒先を使ってみようという最初の顧客は、どのように獲得しましたか?

西浦氏:

インターネットスタートアップには時代錯誤に聞こえるかもしれませんが、我々は一軒一軒ドアを叩いて巡り、PowerPoint のプレゼンテーションをたくさん作って顧客を獲得してきました。我々のアイデアにオープンで、以前から小規模事業者やフードトラックからアプローチをもらっている顧客もいましたが、多くの小規模事業者を評価し管理する面倒を避けたい理由から、(我々の顧客にとって)軒先のアイデアは現実的ではありませんでした。我々がすべての手間に対応することで、顧客はハッピーになりました。しかし、それには時間がかかりました。一年以上をかけて、アーリーステージの顧客を軒先のプラットフォームに迎え入れてきたのです。今では、経験と多くの成功したケーススタディがあるので、顧客はもっと速く軒先のユーザになってくれています。

Tim:

2016年、2ヶ月間にわたってサービスの停止を余儀なくされましたね? 何があったのですか?

西浦氏:

7月の終わり、顧客データの紛失に至るかもしれないセキュリティ上の問題が、システム内にあることに気づいたのです。そのままリスクを持ち続けるのではなく、サーバを止めて問題を調査・改善することに決めました。

Tim:

可能性のレベルのセキュリティ脅威に対しては、極端な対応のように思えます。その2ヶ月間で、多くのビジネスを失ったのはないですか?

西浦氏:

決済情報にリスクがあったので、真剣に考える必要がありました。難しい局面ではありました。多くの顧客が憤慨されたのも当然です。しかし最終的に、軒先を使っていた不動産オーナーの約98%は、そのまま留まってくれました。

Tim:

それは素晴らしい。軒先の顧客は軒先を使えないときでさえ、付き合い続けてくれたのはなぜでしょう?

西浦氏:

最も重要なことは、コミュニケーションでしたね。すべての顧客に対して、そのときの状況や問題を解決するために実施していることを完全に伝えるようにしました。第二に、顧客との長期的な関係が大変重要だと考えています。ドアを叩いてプレゼンテーションして巡った日々のおかげで、我々は顧客のことを真剣に考えることができました。だからこそ、問題に直面した時に、我々の顧客は喜んで我々を信頼してくれたのです。


2ヶ月間にわたって事業の停止を余儀なくされた会社の多くは、倒産に追い込まれるかもしれない。西浦氏と軒先のチームはサバイブしただけでなく、この市場で最も強いプレーヤーの一つとして営業を続けている事実は、顧客との絶大な関係性だけでなく、真剣にサービスを提供することが、いかに重要で尊いことかを教えてくれる。

また将来、軒先から多くの話を聞くことになるだろう。

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