シンガポールのラストマイル物流スタートアップPark N Parcel、シードラウンドで64.8万米ドルを資金調達——日本、香港、タイに事業進出へ

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Park N Parcel のチーム
Photo credit: Park N Parcel

ネット通販で買い物をして荷物が到着するときには必ずといっていいほど、会社に行っていたり外出を楽しんでいたりするものだ。荷物は配送センターに持ち戻りとなり、面倒なことに再配達を依頼しなくてはいけない。しかも、2回目の配達でも受け取れない可能性がある。

これは、イギリスの人が言う「不運の法則」の典型的な例だ。

シンガポールのラストマイル物流スタートアップ Park N Parcel は、この問題を解決できると考えている。同社は先月、TRi5 Ventures やエンジェル投資家らから64万8,000米ドルのシード資金を調達したと発表した。

シンガポール国立大学の NUS Enterprise からインキュベートされ、2017年1月にローンチした Park N Parcel は、ネット通販の顧客向けにセルフ式の受け取りシステムを提供している。購入者は、隣近所の人や地元の店舗など自宅以外で、都合のよい時に受け取れる場所に荷物を配送してもらうことができる。

購入者は Park N Parcel のウェブサイトを検索し、対応可能な「パーカー」を指定する。パーカーとは、荷物を受け取れる厳選された代理人のような人たちで、1,500人ほどいる。マッチングが成立すると、購入者は注文時、対応するパーカーの詳細情報を配送先住所として入力することができる。荷物が到着すると Park N Parcel から通知が来るので、あとは引き取りに行けばよい。

購入者はサービス利用料として1.80米ドルほどを支払い、その一部がパーカーの手に渡る。同スタートアップが本日(4月18日)発表した声明によると、この1年で顧客ベースが前月比30%増加しているという。

今回調達したシード資金は2018年第4四半期までに予定している香港、日本、タイへの事業拡張に活用される見込み。また、新規雇用によってリーダーシップチームの強化に役立つとされた。

調査コンサルティング会社 EMarketer のデータを引用する形で、Park N Parcel はアジア太平洋地域の E コマース取引が2022年までに5,350億米ドル相当にまで達すると予想しており、そのうちの18%を同社が参入を計画する3市場(日本・香港・タイ)が占めている。

Park N Parcel はこれら3市場にターゲットを絞る決断に至った背景として、香港でインターネットの普及率の高いこと、日本で運転手給与の高騰により安価な配送手段が不足していること、タイでインターネットアクセス、可処分所得、オンラインショッピングが急激に成長していることなどを理由に挙げた。

セルフ式受け取りのプラットフォームに加えて、同社は Park N Deliver サービスとして実際に配達をするようにもなっている。あるモールで買い物をした顧客は、別の引き取り地点に配達してもらえる。

ロッカーシステムの弱点

Park N Parcel は、セルフ式の受け取りオプションモデルを実験している複数あるスタートアップおよび業界の既存事業者の1社だ。ラストマイル配送企業の Ninja Van は、小荷物を提携企業もしくは受取ロッカーに配送する Ninja Collect サービスを提供している。SingPost は POPStations という自社のロッカーシステムを展開しており、Blu はシンガポールで買い物客が購入品を受け取れるスマートロッカーを提供している。

調査コンサルティング会社の EcommerceIQ によれば、スマートロッカーやセキュリティボックスは一般的に、クルマ、運転手、配送施設を要するラストマイルソリューションに比べ、配送業者にとって配達を完了するまでのコストを大幅に抑えることができる。しかし、ロッカーシステムの導入には依然として先行投資が必要で、それを購入し取り付けるのに5,000米ドルから35,000米ドルの必要がかかる。また、ロッカーシステムはショッピングモール、駅などの都市中心部に設置する必要があり、通常は高い不動産コストがかかる。

家や小規模店舗に第三者による収集拠点を開設する Park N Parcel のモデルは、そういった間接コストを大幅に下げることができる。しかし、まだ潜在的な落とし穴が存在する。スマートロッカーは設置場所にもよるがいつでも荷物を受け取れるのに対し、Park N Parcel では24時間365日収集可能かどうかはパーカーに依存する点だ。

さらに、シンガポール、香港、日本の主要都市のような高機能な公共交通機関を備えた人口の密集都市部では、ユーザが自ら荷物を受け取るモデルの利点があるが、同じく Park N Parcel がターゲットとするタイ市場では同じような利点は存在しないかもしれない。タイなどの新興市場では輸送インフラが立ち遅れているため、顧客が Park N Parcel の荷物収集拠点にたどりつく上で、より困難を伴う可能性さえある。

さらに、アジアの低中所得層の国々と同じく、タイのオンライン買い物客の多くは、今でも商品を代金引換で受け取ることを好み、さらに理想を言うなら、彼らはお金を支払う前に購入希望の製品を受け取りたいと考えている。

Park N Parcel は代引決済サービスは提供せず、「パーカーは、ユーザに代わって代引決済する責任や義務を負わない」と顧客にアドバイスしている。タイやタイに似た市場でデジタル決済の利用が伸びるにつれ、Park N Parcel は、同社のモデルに決済の機能を見出す必要があるかもしれない。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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