YouTuberも注目の新感覚音メディア「ASMR」とは?ーー市場を狙うTinglesとアジア展望の可能性

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.4.24

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<ピックアップ : Tingles is an app devoted to ASMR videos>

皆さんは最近新たなメディアとして注目されている「ASMR」という言葉をご存知でしょうか?

ASMRとは、音声や映像が刺激となって、脳に安らぎや快感を起こす現象のことを指します。リラクゼーション作用を伴うコンテンツとして配信されるケースが多く、ささやき声、環境音、摩擦音、接触音などが一般的。

Youtubeでは、長時間特定の音や、動きのない映像を流し続けるASMRコンテンツが流行っています。たとえば、睡眠用や勉強用に聞くための、3時間雨の音しか流れてこない動画や、時計の音が流れ続けるリラックス動画などが挙げられます。

また、こちらのYoutube動画は、12分間石鹸を削るだけの絵映えのしない動画にも関わらず、累計60万視聴を達成しています。

若者を中心に、リラックスやストレス解消を目的に、音を通じた快感を求める時代になってきているのです。事実、thinkwithgoogle.comのデータによれば、2012年頃からYoutubeでASMRの検索数が増え始めました。2016年には”Candy”や”Chocolate”のようなワードの倍に至る検索数を達成しています。

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大手企業はASMRを使った広告展開をすでに開始。北欧家具販売のIKEAは、自社で卸している家具の心地よさを伝えるために動画広告を配信しています。

IKEA ASMR」と題された動画は、聴き心地の良い女性ナレーションにのせて、ベッドシーツを撫で触った際に発生する音が25分間流れます。

この動画は160万再生を達成しており、同社がYoutubeで配信している他の商品紹介動画と比較して100倍以上の視聴数を獲得していることから、いかに魅力的なコンテンツであるかが分かります。

2016年にはKFC(ケンタッキー・フライド・チキン)が動画を発表。フライドチキンを食べる際に発生する揚げ物独自の音を、男性俳優のささやき声にのせて伝えることで、商品の美味しさをアピールしています。

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ASMRに特化したYoutuberも多数登場してきています。

20万登録者を超えるチャンネルに『Gentle Whispering ASMR』、『Cosmic Tingles ASMR』、『ASMRrequests』などが挙げられます。特徴的なのはどのチャンネルオーナーもクリエイターやアーティスト職を肩書きにしている点。

こうしたASMRコンテンツを配信するクリエイター達のコミュニティーを、他社よりも早く構築しようと市場開拓しているのが「Tingles」です。同社は著名アクセレータYCombinatorの2018年冬学期を卒業しています。

TechCrunchの記事よると、Tinglesのアクティブユーザー数は6万人超。コンテンツ投稿者数は200名で、その大半がYoutubeからTinglesへと投稿先を乗り換えたアーティスト達。

Youtubeとの差別ポイントは、広告を徹底的に排除している点にあります。たとえば、せっかく気持ち良くコンテンツを聴き入りながら入眠しようとしても、広告コンテンツが間に入ることで睡眠を妨げ、不快感を味わせる結果となります。一方、投稿者がユーザーに配慮して広告を減らせば、収益が減ってしまいます。

Tinglesでは広告を挟むことなくコンテンツを視聴可能です。収益源として有料コンテンツの販売や、投げ銭(チップ)機能を実装することで、広告コンテンツの問題を解決しています。

ユーザーは広告に邪魔されず、投稿者は安定した収益源を確保できる仕組みを作ったのです。

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ASMRはニッチ分野であるからこそ、どのようなユーザー層を狙っていけばいいのか絞られています。例えばPeerJの調査によると、約500名のインタビューの回答から、80%が睡眠補助のために、70%がストレス解消、5%がセクシャル目的でASMRコンテンツを視聴しているという情報もあります。

上記データが示すようなペルソナ像は、アプリ開発をする上でどのようなターゲット層を囲い込めばいいのかを明示してくれるため、メディアビジネスとして攻めやすい領域といえるでしょう。実際、TinglesはPR展開を仕掛けることなく6万ユーザーの獲得に至っています。

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Image by Dick Thomas Johnson

筆者は、アジア圏におけるASMR特化メディアの立ち上げに大きな可能性を感じています。

thinkwithgoogle.comのデータに見ると、ASMR検索は主に欧米から流入で、さらにASMRコンテンツは非言語です。音を通じた快感は、人種を問わず通用します。それゆえ、アジア市場の開拓の余地は十分あるのではないでしょうか?

またアジア圏でのASMRメディア展開を勧める理由として他に2つ挙げられます。1つは口パク音楽動画アプリTikTokの存在です。

米国市場で先行していたMusical.lyのコピーサービスとしてTikTokは登場し、アジア市場を独占。2018年2月には本家『Musical.ly』と統合されています。

両社とも投稿者の収益化を助ける仕組みに投げ銭機能を活用。口パク動画という独特のコンテンツ軸で、Musical.lyは1億ユーザーを超える巨大コミュニティーを構築しました。Tinglesも、TikTokやMusical.lyと同様に独自のコンテンツ性と、類似の収益構造を持ちます。

こうした先行事例があるため、ASMRメディアビジネスをアジアで展開する際、スピード感を持って望めるでしょう。3〜5年以内にイグジットを目指してメディア企業を立ち上げたい起業家がいる場合はアジアの「ASMR」市場を真っ先に候補に入れると良いかもしれません。

もう1つの理由は拡大し続けるインフルエンサー市場です。

こちらの市場データによれば、2020年までに同市場は50〜100億ドルへと拡大すると試算されています。前述したKFCがハリウッド俳優を抜擢してコンテンツ制作している事例もあることから、ASMR分野がインフルエンサー市場拡大の一翼を担うのは確実でしょう。Youtuber事務所UUUMなどが、いち早く参入してくることも想像に難くありません。

タイムマシンビジネスとして、アジア版Tinglesの開発をした企業が、巨大な次世代クリエイターコミュニティーを作り、ニッチメディアとして不動の地位を確立できる余地は十分にありそうです。

via TechCrunch

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