インドのブロックチェーンスタートアップAudience Bay、広告詐欺の撲滅とアドテク業界に透明性をもたらすことを目指す

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Audience Bay チーム

プログラマティック広告(人間同士の交渉や手動の受注による旧来のプロセスとは対照的に、ソフトウェアを用いてデジタル広告の購入を行うことを指す)は世界中でメディアバイイングの方法として好まれるようになっている。アメリカではメディアバイイングの80%以上がプログラマティックを通じて行われている。50%以上であるイギリスとオランダ、そしてヨーロッパやアジアの多くの国々がそれに続いている。

しかしながら、自動化の波が押し寄せるこの業界は伝統的に人間関係を基にして動いてきたものであり、時間と共に多くのお荷物が積み重なっている。不審なサプライチェーン、ブランドの安全性への懸念、偽のサプライ、ボットによるトラフィック、ユーザのプライバシーの侵害、そして広告主とパブリッシャーの両者の信頼の減少といった、業界が直面する重大な課題に対応できる既存の技術は存在しない。これによって広告主とパブリッシャーの両者にドル価値の消失という結果を招いている。

この10年で最も将来有望な技術の1つ、ブロックチェーンはこの問題を解決することができるだろうか?

「はい」と答えるのは、広告業界から詐欺を撲滅するためにブロックチェーンを使用するスタートアップ Audience Bay の設立者で CEO の Herat Maniar 氏だ。

ブロックチェーンは詐欺に対処する上で最も妥協を許さない技術です。詐欺の撲滅は広告主とパブリッシャーにより良いドル価値をもたらすでしょう。

シンガポールで設立され、インドのグルガオンとプネーに本社を構える Audience Bay はデジタル広告のためのプログラマティック・プラットフォームを開発した。同社はこれをエコシステムに透明性をもたらすものであるとしている。

Maniar 氏は次のように述べた。

ユーザにとって最大の懸念の1つは、自分のデータがパブリッシャーに悪用されたり、無断で第三者に渡されたりするかもしれないということです。今のところこういった悪用を防ぐメカニズムはありません。Audience Bay のプラットフォームはユーザに完全なコントロールを与えることで、これを効果的に抑制することができます。

Audience Bay の仕組み

Maniar 氏と Varun Satyam 氏(チーフビジネスオフィサー)が設立したこのスタートアップはウェブサイトのクッキーポリシーと似たコンセントゲートウェイを作っている。Audience Bay のプラットフォームを使用する広告のパブリッシャーはユーザに「自分のデータを消去する」、「自分のデータが使われる場所」、「データの使用を禁止する」という3つのオプションを提供することができるようになる。パブリッシャーはユーザの承諾なしにはデータを使用することができない。
同氏はこう念を押した。

ユーザが明確に使用を許可した場合に限り、データはブロックチェーン上に記録され保管されます。ユーザはその後、発生する入札やデータが供される広告を見ることができます。このやり方ならクッキースタッフィングやクリックインジェクションといった広告の枠組みを抑制することができます。

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従来型プラットフォームと Audience Bay との違い

Maniar 氏によれば、このプラットフォームで最もメリットがあるのはパブリッシャーであるという。

Audience Bay は広告主とパブリッシャーの間のサプライチェーンを取り除きます。今のやり方では広告主とパブリッシャーの間に18以上のプレイヤーが存在します。広告主が1ドルの広告費を出しても、パブリッシャーに届いたときには40セントにしかなりません。ですが広告主が Audience Bay を使えば、これが90セントになります。ゆえに、パブリッシャーは最大限の額を受け取るようになるのです。

技術的な面では、Audience Bay はリアルタイムビディング(RTB)を1つのプロトコルとするプログラマティック広告となっている。プログラマティック広告では、ユーザがパブリッシャーのウェブサイトを訪れた場合、リクエストは RTB を使用しアドエクスチェンジに送られ、そこではデマンドサイドプラットフォーム、つまり広告主がユーザに広告を見せるために入札を行う。このやり取りで起きるすべての処理はブロックチェーンに蓄積される。

主な違いはユーザがコンセントゲートウェイを持つことができるという点であり、ここではユーザはパブリッシャーが持っている自身のデータを消すことができ、自身のデータを使用している者なら誰に対してでも要求することができる。ブロックチェーンで動くため、データの不正なやり取りを防ぐことができる。そしてクッキーを隠す場所がないため、クッキースタッフィングやクリックインジェクションといった広告詐欺も存在し得ない。

Maniar 氏はこう続けた。

ブロックチェーンはエンドユーザが追跡されたり、ネット上での行動が良心的でないデジタル広告主に掴まれたりすることから守ります。また、ボットによるクリックや、やり取りに去来する人間以外のトラフィックを排除することで、詐欺防止の役にも立ちます。同じユーザのトラフィックは複数のやり取りで利用可能なため、同じユーザの別々の属性が存在すればアルゴリズムは詐欺的なトラフィックを識別し、Audience Bay によって追放されることになります。

Audience Bay は現在、ユーザのプライバシーが重要な懸念となっているヨーロッパ市場に注力している。ヨーロッパでは5月25日に EU 一般データ保護規則が実施されるが、これによってすべての企業は運用方法を改善しユーザのプライバシーの権利を守ることを強いられる。

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Audience Bay 設立者兼 CEO Herat Maniar 氏

同氏は次のように述べる。

インドでは広告主やパブリッシャーから興味を持っていただきました。ですがインド市場ではデータのプライバシーが重要な懸念事項とはなりません。

同社は CPM(1,000回あたりの料金)0.01米ドルをインフラ提供の費用として請求し、他のデマンドサイドプラットフォーム(DSP)や取引、広告主の直接的なキャンペーンを通じて、リアルタイムで競い合い製品の価値を最大限に引き出してマネタイズしている。

間もなくローンチする Audience Bay は、製品を構築する資金を調達するためにトークンセールを行う予定だ。

ブロックチェーンに基づいた製品ですので、トークンセールを通じて資金を調達しようと考えています。もっと後のステージでは VC 企業や適格投資家からの資金調達も行うつもりです。

【via e27】 @E27co

【原文】

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