Amazonに対抗するスタートアップが注目すべき「7つの”C”と”指標”」とは

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本稿を寄稿したTim Chang氏はMayfield Fundのマネージングディレクター。同ファンドは米国のファッション系フリマアプリ「Poshmark」に投資するなどの実績を持つ。

2016年、米国の消費者はオンラインコマースで3600億ドルを消費した。このうち1500億ドルを占めたのがAmazonだ。言い換えれば、すべてのEコマース利用のほぼ半分近くがAmazonだったことになる。Amazonを価格や商品ラインナップ、利便性で打ち負かすのは非常に難しい。

ではスタートアップにどのようなチャンスが残されているのだろうか?これは私たちのファンドでも慎重に検討を重ねている点でもあり、Eコマースの潜在的な可能性について注目をしている。本稿ではその検討の中からいくつかのヒントを共有したい。(訳者注:本文は一部抄訳になります)

Amazonの強みと弱み

Photo credit: clement127 on Visual Hunt / CC BY-NC-ND

消費者が購入したい商品のSKU(Stock Keeping Unit)を既に知ってる場合、Amazonは強い。だが、ショッピング体験の半分は望むものが正確に分からない場合に発生する。エンターテイメントや出会い、自己表現、芸術的な作品、カスタムグッズの購入がそれだ。

Amazonで「赤い靴」や「スタンディングデスク」を検索すると、数百ページの検索結果が表示される。そのような状況では多くの人々がより精巧で、新しい、または異なる製品をいくつか選ぶという体験をすることになる。なので、魅力的なダイレクト・ツー・コンシューマーブランドの多くはAmazonで販売されることはない。

コマースの未来は異なるモデルのハイブリッドになると予想する。

単なるオンラインまたはオフラインではない。これらの混合モデルには、個人的な小売のデモ、ワークショップ、またはイベントが組み込まれているのだ。ショールームになるかもしれないし、パーソナライズされたフィッティング、あるいは個人的なバイヤーやコンシェルジュとのコミュニケーション体験になるかもしれない。また、購入する前のレンタルやシェア、さらに購入後にもモデルがあるだろう。

このようにスタートアップたちは、Amazonが提供していないパーソナライズやコミュニティベースのアプローチを作り出している。これはスタートアップに残されたイノベーションの余地なのだ。

戦略

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スタートアップがサードパーティーの商品を販売するだけで、Amazonや他の大手Eコマース事業者(Alibabaなど)と競合することは大変困難な勝負になる。薄い価格マージンの競争に陥り、結果として健全なビジネスに結びつかない低い収益のみが残ることになる。

一方でここ最近、スタートアップが自身で所有し、設計して維持し、提供する独自製品を生み出しているのを目にしている。消費者がAmazonで見つけることができるサードパーティ製品を販売するだけでなく、これら新興企業は、自社のオリジナル製品を組み合わせて販売しているのだ。

自社製品はAmazonとの差別化を生み、またサードパーティ製品が消費者のウォレット・アカウントを多く獲得してくれるので、平均注文額を増加させることが可能になる。自社製品はマージンが高く、サードパーティ製品を半分ずつ混ぜることで、健全な収益を確保することができるのだ。

Amazonのようにサードパーティ製品が多い場合、マージンは競争に陥り、長期的な成長が維持できなくなってしまう。しかし注意が必要で、自社製品の選択肢が限られているような場合は、やはりそのカテゴリでの消費者への消費影響は限定的になってしまう。

ということで私たちは次世代コマース系スタートアップに次の3つのCを期待している。

  • キュレーション:製品選択や新商品に対して最適なキュレーションを提供している
  • コミュニティ:プラットフォームの顧客と購入者が製品についてコミュニケーションを取れるフォーラムなどがある
  • コマース:マーケットプレースは割引や返品といったもの以外で便利に製品を購入する体験を提供する必要がある

第一世代のコマース企業はこれらの3つのCの内、1つにフォーカスしていた。しかし、今日では多くの企業がこれらの内、2つ、ないし3つを組み合わせようとしている。例:Houzz、GOAT、Watchgangなど。さらにここ最近になって注目している4つのCについて挙げておきたい。

  • クラウドソーシング:熱心な利用ユーザーをバイヤーや製品開発の担い手として採用する。彼らは時としてメーカーやマーケター以上に多くのことを知っている場合がある
  • クラウドファンディング:入荷予定の商品を前払いしてくれる優れた手法で、新商品開発の投資にもなる
  • C2Cマーケットプレース:自らのアイテムをお互いに取引したい熱心なユーザーがそこに存在する
  • 暗号通貨(Cryptocurrency):まだ検討は始まったばかりだが、ブロックチェーン技術と暗号通貨はサプライチェーンや運転資金、ロイヤリティプログラムなどに革命を起こす可能性がある

追いかけるべき指標

主要な指標は次の通り。

  • 収益の質:従来、流通総額と売上高に注目していたが、それよりも売上に対する総利益率や拠出されるマージンなど、質をみるようにしている。
  • 顧客獲得コストに対する有効回収期間(CAC):6カ月以内に顧客獲得コストを回収すべき
  • CAC投資に対する2倍回収期間:さらにその2倍を稼ぐのにどれぐらいの期間が必要かを確認する。トップ企業で12カ月かかる
  • 定期収益モデル:こういった数値を達成するには定期的に注文する顧客がいる。これによって予測が可能となる
  • トラフィックソース:ペイドメディアに頼りすぎず、口コミなどのアーンドメディアからの流入を50%以上確保する
  • 多様なペイド・チャンネル:5000万ドルから1億ドルの流通総額を突破しようとすると、FacebookやGoogle以外の有効なペイドチャンネルを確保する必要が出てくる。例:インフルエンサーマーケティングチャネル、掲示板のコミュニティ、その他、UGCによる導線など
  • カスタマーエンゲージメント:クーポンやメールではなく、パーソナルバイヤーやコンシェルジュなどのスタッフがチャットなどを通じて獲得した顧客エンゲージメントを確認する

【原文】

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