情報発信にみるメルカリの強さ、最強チームを生み出したメディアコミュニケーション術と「メルカン」の存在(前編)

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2018.5.16

メルカリの上場が承認されました。

これまでも時折書いていますが、2010年に国内でOpenNetworkLabが立ち上がったのがいわゆる「スタートアップ」元年で、これ以降、投融資のエコシステムが成長したのはご存知の通りです。スタートアップ投資は博打ではなくなり、おもちゃ扱いだったスマホアプリは社会を変えるインパクトを生みました。

中でもメルカリはそのお手本のような存在です。

メルカリが大きく成功した理由のひとつに素晴らしいチームの存在があります。経営陣の多くは起業経験ある人ばかりで、現在、800名以上在籍しているメルカリの社員は半数近くがリファラル、つまり社員による紹介での入社だそうです。

しかしそんなメルカリも創業期は他のスタートアップと同じです。なぜ彼らの元に優秀な人が集まったのでしょうか?

私はこれを紐解く一つのカギに情報発信があったのではないかなと考えます。ごくごく創業期から、彼らの記事には反響も大きく、事業としてのメルカリの魅力、社内の雰囲気、経営陣の考え方を多くの人たちに伝えることにつながりました。トラブル時も含め、彼らは本当にメディアを上手く使って社会とコミュニケーションしていた印象があります。

そこで本稿では私自身がこれまで書いてきた記事と、彼らの持つオウンドメディア「メルカン」の編集チームへの取材を通じてその手法や傾向を考察してみようと思います。他のスタートアップの情報発信の一助になれば幸いです。

スタートアップのメディア活用方法

メルカリが立ち上げたオウンドメディア「mercan」

トリプルメディアやPOEMといった分類で整理すれば、オウンド(自社媒体)やアーンド(口コミ、ソーシャル)はペイドに比べてコストメリットもあることからPR戦略に積極採用する企業も多く、特に創業して1〜2年のスタートアップで活用している創業者の方も多いと思います。

  • アーンドのメリット:第三者視点・専門媒体の信頼性
  • デメリット:コントロール不可
  • 向いてる用途:共感・リード

対して

  • オウンドのメリット:自由なコミュニケーション
  • デメリット:高度な運営能力が必要
  • 向いてる用途:理解・採用

ではメルカリはこれらを具体的にどう活用していたのでしょうか。私の取材記事からまず振り返ってみます。

最初のコミュニケーションで「信頼」と「期待」を獲得

創業から1、2年の間はダウンロード数とCMなどの話題が多かった

まずは取材記事によるシェアやそこから生まれる口コミの活用方法なんですが、例えばメルカリはこんな記事が初年度に並びます。

2013年(創業年)

山田進太郎さんが再始動するということもあって注目度は高いものの、実は初年度の話題は多くありません。ユナイテッドの調達についてはこのタイミングにしてはかなり大きなニュースだったのですが、相手が公開企業であることも手伝って、さらりと流れてきて慌てて記事にしたのを覚えています。

メルカリ(当時の社名はコウゾウ)は最初からプロダクト中心で、しかもユーザーは順調に伸びています。社内体制も開発メインですから社会とのコミュニケーションについてはどうしても後手に回ってしまいます。

そんな状況を次に進めたのがこのニュース、現在のメルカリ社長である小泉文明さんの参加でした。

記事にもある通り、進太郎さんは小泉さんに「ビジネスと広報」を期待するとしています。

「小泉さんについては、やりたいことって無限大にあるので周囲を見渡して声かけをしてたんです。CFO的なイメージが強いですが、どちらかというとビジネス全般と広報ですね。攻めの広報。というのもこれまでは開発に集中していて、なかなかその方面は手が付けられていなかったというのが課題だったんです」(山田氏)。

実際、ここからメルカリの情報発信はガラリと変化します。

2014年

2015年

資金調達の話題ももちろんありますが、目立つのがダウンロード数の公開です。

ひとつの戦略として、明らかに社会に対してメルカリが急成長しているというメッセージを届けようという狙いが感じられます。実際、ダウンロード数については当時、マーケティング施策として資金投入すれば買えるのではという一部指摘もありましたが、本当の伸びがなければその施策はいつか尽きるわけです。

結果、2014年からほぼ1年間に渡って彼らは成長を社会に対して伝え続け、2015年2月の2周年には1000万ダウンロードを達成、体制拡大から六本木ヒルズへの移転(3月)も実施することになりました。

ダウンロード数や流通総額の拡大、CM投下とタレントの起用。ほぼ毎月こういった成長に関する話題をオープンにすることで、メルカリがマスメディア等で取り上げられる機会も徐々に増えてくるようになります。

こうやってメルカリは最初の2年で社会の信頼と期待値を獲得することに成功したわけです。

多様性を伝える方法ーー数字よりも「何をやったか」

創業1年目のメルカリ

その一方、2015年に入ると単調になってきたダウンロード数などの公表はシュリンクしていきます。その代わりに出てきたのが多様性に関する話題です。代表的なニュースが「merci box」でした。

メルカリは3年目で200名ほどの体制になり、カスタマーサポートをはじめ、採用すべき職務も同時に拡大していました。幅広い人材にリーチするためにもダウンロード数や流通総額以外のコミュニケーションが必要になったのではないかなと想像します。

会社として社員の生活を大事にしている、また、優秀な人材を獲得して新しいことにチャレンジし、具体的にサービスを出している。こういった多様性を伝えるため、2016年から17年は「数字よりも実行」に話題がシフトしているのがよく理解できると思います。

2016年

2017年

2018年

創業期は経営陣がコミュニケーションの先頭に立つ

メルカリに参加した当時の小泉文明氏(写真左)と創業者の山田進太郎氏(写真右)/2013年12月、都内のコーヒーショップにて撮影

改めて記事の履歴を見返してみると、全体を通じて筋の通ったメッセージがあったことがご理解いただけたのではないかなと思います。

会社として人を採用したい、ユーザーに使ってもらいたい、一緒に協力してくれる企業を探したい。法人も人間と同じで、他者とコミュニケーションを取らなければこういった目的は達成できません。特に創業期の企業としてのメッセージは、創業メンバーや初期のファンを集めるためにも大変重要です。

さすがにここ1、2年は広報チームとのコミュニケーションで取材することがほとんどになりましたが、創業期は進太郎さん、翌年からは小泉さんから取材依頼を貰っていました。言霊ってあるもので、やはり彼らが先頭に立って社会とのコミュニケーションを実行したからこそ、メルカリという存在は立体的に伝わったのではないかなと感じています。

後半では彼らのオウンドメディア「mercan(メルカン)」について、その設計や役割をお伝えしたいと思います。

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