スマホ診療アプリ「curon(クロン)」開発と医療データ事業の情報医療、シリーズAで三菱商事など事業会社4社から総額11億円を資金調達

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左から:情報医療 CEO 原聖吾氏、CTO 巣籠悠輔氏、COO 草間亮一氏
Image credit: 情報医療

スマートフォンを使った遠隔診療アプリ「curon(クロン)」や法人向け医療データ事業を提供する情報医療は13日、シリーズ A ラウンドで4月末までに総額11億円の調達を完了したと発表した。このラウンドに参加したのは、三菱商事をはじめとする日本の事業会社4社(三菱商事以外の3社については非開示)。

情報医療は2015年11月、臨床医であり、マッキンゼーで医療産業、製薬会社、病院向けのコンサルティング業務に従事していた原聖吾氏(現 CEO)、グノシーや READYFOR の創業メンバーで Google ニューヨーク支社出身の巣籠悠輔氏(現 CTO)、原氏と同じくマッキンゼー出身で患者エンゲージメントのプロジェクトを多数経験した草間亮一氏(現 COO)らにより設立。

医師が診療中に情報を入力する手間を軽減する業務効率化 SaaS と、患者向けの診察・処方・決済・服薬継続支援の機能を持つスマートフォンアプリで構成されるプラットフォーム curon は、サービスローンチからの約2年間で医療機関500件程度に導入されている。一方、これまでパブリックなものでしか情報が入手できなかった医療データの分野では、AI 技術を駆使し、医療関連のステイクホルダーの知見・医療制度や政策への理解・ネットワークを組み合わせ、企業に対して活用しやすい形で医療データや分析結果を提供している。

curon(クロン)
Image credit: 情報医療

三菱商事は、エム・シー・ヘルスケアエム・シー・メディカル日本メディカルネクストといった医療機関に販売チャネルを持つ子会社を複数擁しており、情報医療では今回の戦略的出資を受けて、これらの三菱商事グループ会社を通じたユーザ拡大につなげたい考え。また、調達した資金を使って、データ事業を中心に、データサイエンティストやビジネス開発の人材強化を図る。

情報医療が目指す今後の方向性について、原氏は THE BRIDGE とのインタビューで次のように語ってくれた。

データを活用しやすい形で提供することで、人間の身体の状態、病気の状態などがもっと予測できるようになるだろう。熟練の医師が把握している知見(形式化されていないもの)を(AI に)学習させていくことで、多くの医師がそれらを活用できるようになり、予防医療にも拍車がかかるのではないか。

原氏は、情報医療の取り組みが、医療市場のスケールにも寄与できると期待している。医師の技術は暗黙知で伝承されることが多く、例えば「どうすれば、うまい手術をできるか」といったようなノウハウは属人的になりがちだ。これまで医療市場においてスケールできる対象は医療機器か薬しかなかったが、医療産業の核である医療技術を流通させられるしくみを作ることを夢に描いているようだ。

情報医療が事業を展開する分野には、オンライン医療では、メドレー、インテグリティ・ヘルスケア、MRT、医療データ事業ではエルピクセルに代表されるシステムインテグレータなど複数の競合が存在する。今回、社名が開示されていない事業会社を含め、情報医療は医療業界で大きな力を持つプレーヤーとの協力関係が築けているようで、成長が一層加速することが期待される。

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