2万人以上が来場、アメリカ最先端が集結するテックイベント「TechDay」が今年も開催【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.5.19

本稿は、ニューヨークを拠点に活動するジャーナリストで翻訳家の安部かすみ氏による寄稿である。昨年の TechDay に関する寄稿はこちら。一昨年の TechDay に関する寄稿はこちら。


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すっかりニューヨークの春の風物詩となった、毎年恒例のテックイベント 「TechDay」。その年のアメリカのテック注目株が集結するイベントとして大変人気で、毎年会場は入場者であふれる。今年は例年の約1ヵ月遅れで、5月10日(木)に開催した。

今年の出展企業数は計500。スタートアップ、アクセラレータ、スポンサーがそれぞれのブースを出展し、テックファンをはじめ、投資家、報道関係者、学生など約2万人が会場に足を運んだ(数字は主催者発表)。

会場は毎年こちら。マンハッタン区55th St. の最西端にある Pier 94

今年の TechDay に出展した企業は、13カテゴリに分けられ、カテゴリごとにブースが配置された。

カテゴリの内容は「B2B」「音楽&メディア」「健康&フィットネス」「Eコマース」「フィンテック」「ソーシャルメディア」「オンデマンド」「ソーシャルインパクト」「EdTech」「ハードウェア&IoT」「ファッション」「一般」、それらのスタートアップに加え、アクセラレータとスポンサーだ。

この日 PR ツールとしてトレーラーハウスを導入したのは、ソーシャルメディア Bestest

今年からの新たな試み、有料制と「TechDayTalks」

第7回目を数えた今年は、新たな試行がいくつか見られた。

有料制

その一つは有料制だ。昨年までは事前登録をするだけで無料で入場できたが、今年から有料になった(一般入場料は20ドルと30ドルの2種。会場内のすべての場所へのアクセスができる「フル・カンファレンスパス」は235ドル。ちなみに235ドルのチケットは売り切れとなった)。

有料制にしたからか、事前の主催者発表で、来場者数が例年より1.5万人も少なかったので「がらっとした印象になるのでは?」との私の予想は、杞憂に終わった。当日会場に到着したら、一般開場の15分前にも関わらず、昨年同様に入場を待つ人々で長蛇の列ができていた(午後1時ごろまで、行列は途切れることがなかった)。

また会場内は例年通り、正午過ぎから来場者で溢れ返った。

入場のために長い列を成す来場者。

「TechDayTalks」

新たな試みのもう一つは、「TechDayTalks(テックデー・トークス)」。これは毎年会場で行われている、スタートアップが自社サービスを紹介する「ピッチステージ」とは一線を画するもの。すでに成功している知名度のある企業の CEO や幹部が登壇し、それぞれの「成功への手引き」を紹介するのだ。「フル・カンファレンスパス」の来場者を対象に行われた。

マイクロソフトのテレザ・ネメサニ氏による「スタートアップにおける、ブロックチェーンの活用法」や、セールスフォースのキャサリーン・ヤン氏による「未来の働き方:AIがどのように人材を育てるか」など、どの職種においても興味深い講演が、全12社によって行われた。

出展企業による各社アピール合戦

TechDay では、各ブースを眺めるだけでニューヨークや全米におけるテックトレンドを1日で垣間見れる。だが会場はとにかく広く、狭い通路は来場者で大混雑し、各ブースをサッと見て歩くだけでもゆうに1時間以上はかかってしまう。

どのスタートアップも新しいアイデアに満ち溢れ興味深いのだが、その中でも特に来場者から注目を浴びていた今年の注目株をいくつか紹介したい。

今年の注目株たち

Citispoon の CEO のオラ・コラウォル夫妻。「自分の食体験を元に4年前からアイデアを練り、昨年ローンチして、2日前にiOSアプリをリリースしました」

Citispoon は、レストランの検索アプリ。

Google 検索や Yelp との相違点は、「自分の食の嗜好」に応じて最適なお店をアプリがあらかじめ選んでくれ、さらに「今すぐ入れる店」を探せること。特にニューヨークなどアメリカの大都市では、週末ともなると予約なしでは入れない店が多いので、事前に混み具合がわかるのは便利だ。

Citispoon のアプリ開発を手がけ同じく TechDay に出展した、Fusemachines のスタッフ(青のTシャツ)らと。

「何でも、どこでも、借りられる」がモットーのレンタル用アプリ Rentah。例えば自分が使っていないギターや自転車をリスト掲載でき、借りたいものでリストにないものはリクエストができる。ニューヨーク・ブルックリン発のスタートアップ。

Vertoe は、ニューヨーク市内で初めてできた、手荷物を保管できるサービス。

保管場所は現在市内に70ロケーション。劇場やスタジアムに大きな荷物を持ち込むことができない上に、日本のようなコインロッカーがないので、居住者&旅行者ともに、便利なサービスだ。

1アイテムごとの利用料は1日わずか5.95ドル。(「techday」コードで5%割引に)

ローカルのレストランやお店、バー、イベントなどの検索&SNS プラットフォーム、Go Nation のブース。コネチカット発のスタートアップ。

パーソナルロボットTemiを提供する Robotemi。創業者のヨシィ・ウォルフ氏が3年前、祖母を訪ねた際、手が震えてティーカップを持ったり携帯電話を自由に使うことができない様子を見て、Temi を考案したという。

「Hey Temi」と問いかけると、自分のために動いてくれたり、知りたいことを教えてくれたりする。Siri のロボット版と言ったところか。

iPad やスマートフォンをセットするだけでプロ並みの映像撮影を可能にするオールインワンのモバイルソリューション Padcaster

会場を歩いていると…!

毎年ドローンブースは大人気。レースに必要なパーツがすべて入った、FPV ドローンキットを提供をする Beagle Drones

IoT 関連製品の開発、販売をする京都の mui Lab(ムイラボ)も。(2回目の出展で、昨年は親会社の NISSHA として出展した)

代表の大木和典さん(写真上の左)は、「今夏キックスターターもします」と抱負を語った。

IoT のインターフェイスプロダクト、mui(ムイ)の説明に聞き入る来場者。mui はタッチセンサーを内蔵した木製のディバイスで、インターネットに接続することで多様なクラウドベースのサービスと連携できる。

機能面に加えシンプルでクールなプロダクトデザインも、来場者から注目を浴びていた。

<関連記事>

スマートフォンとスクリーンが連結できるプレゼンテーションのためのソフトウェア encaptiv

ファウンディング・パートナーのマット・ダニエルズ氏(右)は、「プレゼンテーションはビジネスの成功に欠かせないもの。encaptiv を使って、プレゼンテーションを楽に成功させてほしい」と語った。

インダストリー4.0時代の製造業者用手袋、Mark(by ProGlove)。作業をより早く安全にするために、フォークリフトやワゴンなどと連動させて自動スキャンなどに使う。Audi や BMW 社などがすでに導入済み。

セルフィーをクッキーやアイスコーヒーのフォーム(泡)などの表面に描ける Selffee。イベントやギフトなどで大活躍しそう。

当日は実演し、参加者も一緒に楽しんでいた。

「私たちそのものね!」と満足げの来場者たち。

子どもたちの将来の夢を叶えるためのEdTechアプリ Kids Break Ground

コーファウンダー、エンリッチ・リヴェイル氏(左)は、「夢を叶えるために、子どものうちから大きくなったら何になりたいかを考えるきっかけを作っていきたい」と語った。

子どもの想像力や好奇心を伸ばす STEM 教育の一環として、カスタマイズできるラジコンカーに注目する、RaceYa の創業者アビゲイル・エッジクリフ・ジョンソン氏。

大人気のあの企業も出展

Cheapair.com は、アメリカ・カリフォリニア発のオンライン・トラベルエージェンシー。1989年創立の老舗企業だ。

「よい人材を確保するために、今日はブースを出しています」と、エドさんとドリューさん。

2010年創業で、今や「2兆円企業」に大成長した、ニューヨーク初のコワーキングスペース、wework 。昨年日本にも進出を果たしたばかり。

2年前にマーケティングチームが新設されたため、今回スポンサーとして初出展を決めたそうだ。

2018年まとめ

今年も TechDay は、人々の生活をより便利にする新しく画期的なアイデアの宝庫だった。各ブースで実際に体験したり、スタッフらと直に話しをしたりすることで、より人生を豊かにするイノベーションのさまざまなカタチを肌で感じることができた。

有料制にしたことによる来場者減少の打撃は感じなかった。むしろ去年同様に多かった印象だ。一方で、出展企業数は昨年に比べて明らかに少なかったのは否めない。だが、出展企業側にとって良いように捉えれば、より多くの来場者に自社のサービスを目に留めてもらいやすくなったということでもある。

昨年まで2年連続で出展し、今年は出展を見合わせた在ニューヨーク某テック企業の代表者に話を聞いたところ、

「TechDay イベントに限って言えば、出展することでチームビルディング的な意味合いがあります。来場者にサービスを説明することで、リアクションを直に知ることができ、さらにその反応によってアイデアが出てきたりするので、それらを体験する場として捉えていました。しかし、来場者からオフィスを借りないかと逆営業されたり、就職活動の場として捉えている学生も多く、今年の出展は見合わせました。来年はまだ考えていません」とのことだった。

また今年は、マナーのない来場者が各ブースに大挙して押し寄せ、呆れられている様子も多く目にした。英語を話せない外国人集団がお礼も言わずに、企業がユーザーのために準備したノベルティグッズを根こそぎバッグに詰めているのを見ると、私もいい気がしなかった。

テクノロジーやイノベーションの紹介より無料グッズがもらえる場として捉える来場者が今後増えていけば、グッズをなくしたり、出展自体を控える企業も増えていくことにつながるだろう。

TechDay がニューヨークで始まって7年。あと数年で節目の10年を迎えようとしている。テックシーンを揺さぶるような新たな場になるようにするにはどうしたらよいのか、主催者、出展企業、来場者が一緒になって、イベントの意義をもう一度考え直す時期にあるのかもしれない。

See you next year!

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