勝機は「商圏の細分化」にありーー連続起業家、久保氏がオフィス向け無人コンビニサービス「600(ろっぴゃく)」を正式公開

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都内で発表会を開催した600代表取締役の久保渓氏

本誌でも昨年9月にお伝えした無人コンビニ事業がついに立ち上がる。挑戦するのはウェブペイを手がけた連続起業家、久保渓氏だ。キャッシュレスのオフィス向け無人コンビニを企画・運営する600(ろっぴゃく)」は6月18日、無人コンビニエンスサービスの正式公開を伝えた。

600は冷蔵庫タイプの飲食品・日用雑貨販売サービスで、オフィスなどを中心に昨年6月からテスト設置を重ねていたもの。冷蔵庫にはクレジットカード決済ができるディスプレイ端末が取り付けられており、スワイプした上で商品を庫内から取り出せば決済が完了する。庫内商品にはRFID(Radio Frequency IDentification)が貼られており、これを庫内に設置されているアンテナが認識することで個別商品の会計を実現した。

庫内の商品については導入するオフィスの要望に合わせ、お菓子や弁当、飲料といった飲食料品から文房具などの日用品まで600でカスタマイズして用意する。注文にはLINE@が使われ、600が在庫データに基づいて補充を実施するほか、運用上の改善を実施する仕組みになっている。

なお、同社の説明では食品中毒などの衛生面トラブルを回避するため、社員やアルバイトなど含め、600のメンバーは全て食品衛生管理者の免許を取得している。

導入の費用は月額費用として2万円からで、契約期間などの条件などによって変動する。また、600としてはこれらの月額費用に加え、ここの商品販売が短期的なビジネスモデルになるという話だった。

価値は無人ではなく「商圏メッシュ」の細分化

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600のサービス概要(同社ウェブサイトから)

以前にもお伝えした通り、こういった仕組みの無人コンビニ事業というのは取り立てて新しいものではない。全く同じ手法のPantry(2016年5月にByte Foodsが買収)が2014年頃の登場で、中国のBingo boxやAmazon GOなど、新しい形態の無人ストアは撤退や拡大などまさに事業モデル模索の「真っ最中」といった様相だ。

<参考記事>

一方で彼らが見ている先は微妙に違う可能性がある。「無人コンビニ」という側面からは同じでも、例えばビジネスモデルが決済中心だったり、商品認識のソリューションとして研究を進めている場合もあるだろう。そこで600についてその狙いを久保氏に尋ねたところ「商圏メッシュの細分化」こそがチャンスと話してくれた。

「最大のイノベーションは無人化ではなく(コンビニなどがある)徒歩半径500メートルのメッシュを小さくしたことです。その昔、コンビニが生まれたことでスーパーよりも細かい商圏での商売が可能になりました。その次、50メートル圏内を誰が取るのか」(久保氏)。

確かにオフィスグリコや置き薬のようなビジネスモデルはこれまでにもあった。自動販売機が国内にごまんとあるのはご存知の通りだ。しかしこれらはすべて「データ化」という点での貧弱さは否めない。600が取ろうとしているのは細分化された50メートル商圏における購買データそのものなのだ。

久保氏は説明の中で、ビジネスチャンスの一例として商品のテストマーケティングを挙げている。例えば、メーカーの新商品があったとしてプライシングをどうするか、競合商品と隣り合わせに置いた時の売れ行きはどうなるのか。こういったデータ・ドリブンな事業展開を細かい商圏メッシュで実現する。実際、メーカーとはそういった話をしているということで「近未来の展開としてありうる」(久保氏)という説明だった。

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実際の600庫内

魅力的な事業である一方、投資については大きなJカーブが予想される。当面は実直な設置数の獲得とそれに見合った流通網の強化が必要であり、キャッシュポイントとしてのマーケティングデータ販売などはもう少し先の話になるだろう。

久保氏にこの点尋ねると同じ認識で、例えば都市を拡大する場合は単純に物流などもやり直しになる可能性もあり、「2箇所やればコストも労力も2倍」になるという試算なのだそうだ。しばらくは海外展開よりもコミュニケーションコストが抑えられる日本の都市部を中心に展開を進めたいという話だった。

また出資機会についても、アライアンスが期待できる事業会社を中心に幅広く話を進めているということで、純粋な投資会社からの出資については「当然ながら余地がある」(久保氏)としていた。

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