Crypto Valley Labsに聞いた、スイスの仮想通貨・ブロックチェーン業界の発展【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.6.2

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した Masamichi Matsushima 氏は、日本の都市銀行を退職後、Baroque Street に入社。アナリストとして世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


Crypto Valley Labs の外観
Image credit: Baroque Street

5月22日、スイスのツーク州にある仮想通貨・ブロックチェーンに特化したコワーキングスペース「Crypto Valley Labs」を訪れた。本来の目的はそこで開かれるミートアップへの参加であったが定刻まで時間があったため、従業員にコワーキングスペースが実際にどのように機能しているのかについて話を伺った。

スイスは仮想通貨・ブロックチェーン事業に積極的な国として世界的に注目を集めている。近年話題を集めるイニシャル・コイン・オファリング(ICO:トークン発行による資金調達)を行なった多くのプロジェクトを輩出している他、IBMや PwC といったグローバル企業もスイスでこの分野に絡んだ事業を展開している。仮想通貨・ブロックチェーン事業者の多くがスイスに拠点を置き、今なお現在進行形で海外から多くの起業家、投資家がスイスに訪れているのである。

なぜこれ程までに注目を集めるのだろうか。一つには政府や金融機関の協力体制が挙げられるが、今回の訪問によりコワーキングスペースが業界の発展に寄与する部分が大きいことがわかった。一般に言う「コワーキングスペース」とはその名の通り「一緒に働く場所」、すなわち自社だけでなく複数のヒト・企業が同じ場所で働く場所を表す。私が考えるに誰かと一緒に働く上で重要となるのは「ヒト」「相互扶助」「目的共有」である。スイスの Crypto Valley Labs はこれらの要素全てにおいて世界水準を満たしていた。

「ヒト」について

前述したようにこの施設には欧州をはじめ世界各国から多くの人が入居者として訪れている。既に別事業で成功を収めていて新しく暗号通貨・ブロックチェーン分野で事業を行おうとする者、元々この分野で事業を行なっていたが自国の規制が厳しくなり拠点を移してきた者、大企業の派遣チームとして拠点を置く者等、バックグラウンドは様々であるが世界レベルの経験豊富なビジネスマンがここに集結しているのである。スイスにおける物価の高さがある種フィルターとなって、現地人を除く経験の浅い海外起業家を排除している部分は大きいと思われる。

ミートアップは室内のスペースが埋まるほどの大盛況だった
Image credit: Baroque Street

「相互扶助」について

この施設は法律、会計、税務、マーケティング等経営で鍵となる各分野の専門パートナーを有しており、入居者はこれらからサポートサービスを受けることができる。事業計画についても国内の著名な起業家によるアドバイスを受けることができ、入居者への全面的なサポート体制が整えられている。また、この施設は国内で同様に仮想通貨・ブロックチェーン分野に特化したコワーキングスペース「Trust Square」、フィンテック分野に特化したインキュベーター&アクセラレーターの「F10」と提携を結んだことで、相互間の施設利用が可能となっており国内同業者間においても業界発展のための協力体制が整えられている。

パートナー企業一覧
Image credit: Baroque Street

Crypto Valley Labs のコミュニティマネージャーを務める Tatiana Schmid 氏は、Trust Square と F10 との提携について次のように述べた。

Trust Square や F10 との提携の主な目的は、エコシステム内のつながりを促進しステークホルダーを増やすことにある。Crypto Valley Labs の利用者がこれら提携先においても作業できるようにすることによって、より意味ある関係性を築くことができる。

「目的共有」について

この施設はこれまで記述してきた通り、世界的にもまだ数の少ない仮想通貨・ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースである。入居者のほとんどはトークンビジネスあるいはブロックチェーン開発を行う。つまり、事業内容は多少違っても「分散型プラットフォームの構築」という点で入居者間の目的共有がなされているのである。目的が同じであれば悩みも同じであることが多く、この施設で開催されるミートアップ等で会話をした際には問題意識の共有も行うことができるだろう。それが協業という形に結びつくことも十分に考えられる。

室内には Bitcoin ATM が設置されていた
Image credit: Baroque Street

Schmid 氏はこの施設の魅力について次のように述べた。

Crypto Valley Labs は仮想通貨、ブロックチェーンに特化したコワーキングスペースとして人気を集めている。この施設を利用すれば、世界から集まった多くの企業と交流、情報交換できることは大きな利点だろう。また、利用者へのサポート体制も充実している。我々は法律、会計、税務、マーケティングといった各分野の専門企業と提携を結んでいる。

このように、スイスではコワーキングスペースが仮想通貨・ブロックチェーン業界の世界的なハブとしての役割を担っている。これが業界のエコシステムとして上手く機能しているのは政府や金融機関によるサポートがあってこそだが、多くの国が仮想通貨や ICO への規制を強める中、国として仮想通貨・ブロックチェーンの産業化を目指す雰囲気が感じ取れた。アメリカに並び、今後スイスはますますこの業界においてプレゼンスを高めていくだろう。GMO が先日マイニング子会社をスイスのツーク州に設立するとの発表があったが、それだけこのコミュニティに価値を感じているということであろう。今後もスイスの動向に注目していきたい。

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