ホワイトカラー向けAIによるRPAソリューション開発のシナモン、シリーズBで約9億円を調達——2022年までにAIエンジニア500名体制を目指す

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ベトナムにいるシナモン AI ラボのメンバー。前列中央は、CTO の堀田創氏
Image credit: Cinnamon

ホワイトカラー向けに人工知能(AI)を使った文書読み取りエンジンを開発するシナモンは1日、シリーズ B ラウンドで第三者割当増資により約8億円、融資により約1億円を調達したことを明らかにした。このラウンドでの出資は SBI インベストメントがリードし、FFG ベンチャービジネスパートナーズ、伊藤忠テクノソリューションズ、Sony Innovation Fund、TIS が参加。また、融資はみずほ銀行と三井住友銀行から実施された。

今回のラウンドは、今年1月に実施した(発表は2月)、複数の機関投資家および個人投資家からの調達に続くものだ。この際の調達金額については明らかになっていないが、THE BRIDGE の取材に対し、シナモンはシリーズ A ラウンドの一部であったことを明らかにした。以前の写真共有アプリを開発していた頃から、現在の AI ソリューションを開発するスタートアップにビジネスモデルを転換した際、法人が変更されているが、前法人時からの調達金額を合わせると、累積調達合計金額は10億円を超えるものと推測される。

今回の資金調達を受けて、同社は AI エンジニアの採用および育成強化、販売チャネルの拡大、組織体制の強化、新プロダクトの開発などに注力するとしている。同社は現在、東京・ハノイ・ホーチミンシティ・台北・シンガポールを拠点に、経営・技術開発・製品販売を行なっている。このうち、ハノイ・ホーチミン・台北には、AI エンジニアを育成し技術開発を行う「AI ラボ」の機能があり、2022年までに AI エンジニア500名体制を目指すとしている。

ベトナムで AI エンジニア(候補を含む)に対して行われている説明会
Image credit: Cinnamon

シナモンが注力しているのは、自社開発による文書読み取りエンジン「Cinnamon AI」を使った RPA(クラス2)ソリューション「Flax Scanner」だ。単なる OCR ではなく、ディープラーニングの一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN、Convolutional Neural Network)により、最終的に99%以上の精度で正確な文書読み取りを実現する。文書読み取りだけでなくシステムが文書のコンテキストを理解し、データベースなどが扱いやすいセマンテックな形で情報を取り込めるのが最大の特徴だ。

具体的なユースケースとしては、契約書、履歴書、営業進捗報告、医療カルテ、手書きの申請書、不動産物件情報、領収書など。特に紙の書類が多い金融や保険の分野での活用が期待され、業務スピードを4倍に、コストを4分の1にすることが概ねの目標に設定されている。

今回の調達先に、FFG ベンチャービジネスパートナーズが含まれているのは銀行業務の書類業務効率化でのシナジー(FFG ベンチャービジネスパートナーズは、福岡銀行の VC である)、また、伊藤忠テクノソリューションズや TIS が含まれているのは SI(システムインテグレータ)としてのパートナーセールスチャネルを確保する意図があるようだ。

シナモンではまた、Flax Scanner で採用されている正確な文字単語認識のための認識修正技術をベースとして、正確な音声単語認識を実現する「Rossa Voice」というプロダクトも開発している。Rossa Voice では、コールセンターの録音などから文字起こしを正確に行うことができ、ユーザ特有の固有名詞や特殊用語も正確に認識できることが特徴だという。

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