〈仮想通貨プロジェクトの評価ポイント10選〉海外VCは何を見て投資判断しているのか?〜ダブリン「MoneyConf 2018」から【ゲスト寄稿】

本稿は、仮想通貨に特化したシンクタンク Baroque Street による寄稿です。

本稿を担当した福島健太氏は、日本の都市銀行を退職後、大手IT企業、国立大学研究員を経て Baroque Street を設立。各地を巡りながら、世界の仮想通貨事情を調査しています。

現在は、エストニアに拠点を置き、ヨーロッパ中心に活動中です。


開会を宣言するWeb Summit CEOの Paddy Cosgrave 氏
Image credit: Baroque Street

6月11日〜13日の3日間、アイルランド・ダブリンで開催された「MoneyConf 2018」に参加してきた。本カンファレンスは世界最大規模のテック系イベント Web Summit の関連イベントであり、60カ国を超える地域から5,000人以上が参加、フィンテックや仮想通貨を中心とした領域でさまざまな議論が繰り広げられた。

メインステージ以外にも、CryptoConf や eXchange などのテーマ別ステージや、Q&Aブース、展示ブースなどがあり、一人では到底回りきれない規模だった。夜にはネットワーキングのための Night Summit が連日行われ、参加者同士が交流を深めた。

カンファレンスは起業家と投資家の貴重な面談機会

Night Summit で交流を深める参加者の様子
Image credit: Baroque Street

先日の寄稿でも触れたように、仮想通貨業界の参加者のカンファレンス参加の主な目的はプロモーションとネットワーキングである。プロジェクト側は多くの関係者に自身のプロジェクトを知ってもらうために、ブースを出展したり、ピッチに参加したりして、必死にアピールを行っている。

弊社の元にも多くのコンタクト依頼が寄せられ、会場を歩いているだけで直接声をかけてくる関係者もいた。また、VC や個人投資家も多数参加しており、プロジェクトのメンバーに直接ヒアリングしている様子が伺えた。では一体、彼らは仮想通貨プロジェクトの何を見て投資判断を行なっているのだろうか。

仮想通貨プロジェクトの評価ポイント10

Q&A セッションで参加者の質問に答える Edith Yeung 氏
Image credit: Baroque Street

そのヒントはシリコンバレーのベンチャーキャピタル、500 startups のパートナー Edith Yeung 氏のプレゼンテーションの中にあった。500 Startups は今年に入り、大手取引所である Huobi(火幣)が仮想通貨・ブロックチェーン関連事業へのインキュベーションを目的として設立した Huobi Labs とパートナーシップを結んでおり、本領域への投資を加速させている。

本稿では、彼女がプレゼンテーションの中で語った、仮想通貨プロジェクトを評価する際の10のポイントを紹介する。

  1. プロジェクトの目的とトークン活用の意義

2017年、数多くの ICO が行われたが、その中には目的が曖昧でトークンの使い道がなくなってしまっているものも多い。そういった状態に陥らないためには、そのプロジェクトの存在意義を事前に徹底的に詰めておく必要がある。

  1. 競合の有無

仮想通貨という概念の性質上、プロジェクトの目指す最終ゴールは基本的には世界レベルのものとなる。同じアイデアを思いつき進めているプロジェクトが他にないか、常にチェックしておかなくてはならない。

  1. メンバーのバックグラウンド

チームメンバーの実力はそのプロジェクトのポテンシャルを判断する際に重要な指標となる。500 Startups では、LinkedIn や Facebook はもちろん、他の SNS や動画サイトなども含めて、徹底的にそのメンバーをチェックしている。

  1. ブロックチェーンの活用方法

真にそのプロジェクトがブロックチェーンを必要としているのかどうか。また、そこで用いるブロックチェーンは最適か。ビジネスモデルだけでなく、こういったプロトコルレベルの評価も行なっている。

  1. コミュニティのサポート

そのトークンの価値が将来上がっていくためには、それを使うユーザー数が増えていくことが大前提である。そのためには、アクティブかつ強力なコミュニティが必要である。

  1. トークンの配分状況

調達した資金が適切に使われなければ意味がないので、「トークンの配分が過度にプロジェクトメンバーに偏っていないか」「開発やPRに回す予算は妥当か」などについてもチェックしている。

  1. プロジェクトのロードマップ

プロジェクト側が公表しているタイムラインについて、特にプロダクトの進捗状況は徹底的に調査している。

  1. 資金計画

目標調達額や調達を行う地域の確認。また、ICO 以外にエクイティで調達しているプロジェクトも多いため、株主の有無などに関してもチェックしている。

  1. 投資家やアドバイザーの顔ぶれ

自分たちの他に、どういった投資家やアドバイザーが入っているか。あまりに著名なアドバイザーが多いプロジェクトはスキャムの疑いがある。

  1. リーガル面の対応

KYC(本人確認)や AML(アンチ―マネーロンダリング)はもちろんのこと、各国ごとの規制にしっかりと対応できる体制ができているかどうか。ルールが非常に流動的な業界なので、規制リスクは非常に大きい。

メンバーと直接話すことでそのプロジェクトの本質が見えてくる

こうして条件並べてみると非常に単純で当たり前のようにも思えるが、同様の調査業務を行なっている身からすると、これらがいかに困難で骨の折れる作業であるかが分かる。

プレゼンテーションの中で具体的な言及はなかったが、社内に強力な調査チームが存在し、日々綿密なデューデリジェンスを行なっているのであろう。Web 上で収集できる情報には限界がある上、一方的に良い部分だけを誇張するスキャムまがいのプロジェクトも多いため、実際に会って話すことの重要性は大きい。

ある程度、業界に精通してくれば、いくつか質問をするだけで、そのプロジェクトの質やレベル感を判断することができるようになるだろう。そういった意味でも、このようなカンファレンスの存在意義は大きく、しばらくはどの会場も大いに盛り上がりを見せそうである。

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