医療機関で発揮される「音声AI」の真価ーー声で病院の事務作業時間を60%削減する「Notable」が300万ドルの資金調達

by Takashi Fuke Takashi Fuke on 2018.6.12

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<ピックアップ : Notable rakes in $3 mln in Greylock Partners-led round>

日本でもGoogle HomeやAmazon Echoの販売が解禁され、AIスピーカーや音声AIアシスタントが市民権を得つつあるようです。一方、音声AI関連のデバイスやサービスが活躍できる場所は家庭だけではありません。筆者の主観では、医療機関からの需要の方が高いように思えます。

2015年にNuance Communicationsが発表したデータによると、病院へ訪れるミレニアル世代の73%が医師との対話を目的としており、これが大切な要素であると回答しています。また彼らの40%が医師とじっくりと話すことができなかったことに不満を抱いているという数字もありました。原因は医師が診療記録をカルテへ入力する時間に労力を注いでいる点にあります。

そこで登場するのが音声AIです。中でも医療機関向けに音声AIを使って診療記録のプロセスを自動化するサービス「Notable」に注目が集まっています。

音声書き取り機能で、電子カルテ作成を完全自動化

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Notableは2017年に創業されたヘルスケア企業です。医療機関向けに音声AIアシスタントサービスを開発しています。累計資金調達額は300万ドル。

同社は、Apple Watch向けの専用音声AIアプリを開発。医師が携帯するApple Watchを通じて患者との会話や、医師が直接吹き込む音声情報を解析。口述や処方箋内容を読み取り、かつ請求額まで全て自動で電子カルテに記入します。医師はスマートウォッチを手にしながら診療するだけで、厄介なカルテ入力作業が済んでいる具合です。

最終的に出来上がったカルテの認証プロセスは人力で行われますが、The PE Hubによると、98%以上の承認率を誇っているとのこと。また、事務作業に充てていた60%の時間削減に成功したといいます。

こうした、AIの高い精度とパフォーマンスをもとに、Notableは既存の診察体験を根本から変えようとしています。

先述したように、患者が医師との対話の時間が取れない大きな原因は、カルテに診療データを記録するステップに大きく時間を割いているためです。法律の関係上、医師が診断書・処方箋を書かなければいけませんが、Notableは音声AIを使ってこのプロセスの完全自動化にチャレンジしました。

注目すべきは医療機関の効率運用のソリューションを遠隔医療に代表されるような法律的な障害が立ちはだかる分野ではなく、あくまでも「電子カルテの記入をサポーツする音声AIアシスタント」に求めた点にあるでしょう。

各医療機関の導入のしやすさに大きなメリットがあり、かつ遠隔医療プラットフォームのような医療機関側と患者側の両方を集めなければ収益化が難しいマーケットプレースモデルは必要がありません。

医療機関向け音声AIアシスタントの分野は、Notable以外の企業も参入しています。たとえばすでに2000万ドルの資金調達を行ったSukiが提供する音声AIは、各医師の過去の診断結果を分析して最適なアクションプランの提案を行うパーソナライズ機能も備えています。

ホスピタリティー市場から根強い需要を持つ「音声AI」

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今回はスマートウォッチに搭載する音声AIアシスタントを紹介しましたが、これからAIスピーカーを介した電子カルテの自動入力のような利用シーンも広がってくるでしょう。なかでも、ホテル業界や医療分野に代表されるような、決まったフレーズや業務手順が根付いた市場において、音声AIの需要が高い傾向にあると考えられます。

ホテルコンシェルジュ機能を備えた、ホテル市場特化型のAIスピーカーRoxyは好例です。

ルームサービスや、室内清掃のお願いなど、マニュアル通りに物事を進ませるホテル業界だからこそ機能を集約することができます。加えて、ターゲット顧客が明確に2Bにフォーカスできる点から、Google HomeやAmazon Echoのような2C向けに展開する大手AIスピーカーと線引きが可能です。また、同じくホテルの滞在客向けにコンシェルジュサービスを提供するため、Amazon Echoのアドオン機能を展開するvolaraも良い例でしょう。

このように、利用シーンで発せられる用語が定分化していたり、命令内容が決まっているホスピタリティー市場では音声解析のしやすさと市場ニーズが相まって、非常に高いポテンシャルが眠っているように感じます。

日本では医療分野の法律が非常に厳しく、医師のテクノロジーに対する理解に壁がある印象がありますが、本記事で紹介したようなスタートアップ事例を参考に、まずは最も普及させやすい事業モデルを模索してみてはいかがでしょうか。

Notableのようにカルテの記録をサポートするツールというスタンスで売り込めば、法律面での障害も少なく、かつ開発コストも抑えながら高い市場シェアを獲得できるかもしれません。また、2020年東京オリンピックに向けてホテル業界向けに音声AIを売り出せば、急成長が望める可能性は大いにあります。

今後、私達の家だけでなく、医療・ホテル分野を中心にどのようにして音声AIが日本で活かされていくのか、期待が膨らみます。

via The PE Hub

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