水産養殖技術を開発するウミトロン、産業革新機構やD4Vらから9.2億円を調達——日本や東南アジアで養殖業の生産性・事業継続性向上に注力

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UmiGarden
Image credit: Umitron

シンガポールと日本を拠点に、水産養殖技術を開発するウミトロンは22日、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏から9.2億円を調達したと発表した(複数ラウンドにまたがる総額と推定される 単一ラウンドにおける調達金額とのこと)。調達した資金を使って、同社は既存サービスの事業基盤と研究開発を強化するとしている。

ウミトロンは、水産養殖を可能な限りコンピュータ化することによって、効率のよい事業運営を支援する技術を開発している。上の写真にもある UmiGarden という IoT デバイス(白い筐体)は、生け簀に設置することで魚の遊泳行動をリアルタイムでストリーミングすることができる。

UmiGarden には、設置場所のモバイル環境が不安定であることも考慮してエッジコンピューティングの機能も搭載しており、魚群データ解析により給餌コストの最適化を実現する。水産養殖においては、事業運営に占めるコストの70%が給餌に関するものとされており、給餌コストを最適化することで利益改善につながる可能性が高い。

UmiGarden
Image credit: Umitron

ウミトロンでは真鯛のほか、これから養殖が盛んになると言われるマグロやスズキなど、大量のエサが必要となる魚種の水産養殖にフォーカスし、魚が空腹時に限り給餌するしくみを開発。オーバーフィーディングの削減により、給餌コストの圧縮だけでなく、エサ資源のムダや水質悪化の防止にも貢献したいとしている。

ウミトロンが水産国家である日本だけでなく、シンガポールにも拠点を置いているのは、水産養殖において東南アジアの市場ポテンシャルが高く、世界的な水産養殖メジャー各社のアジア太平洋地域本部が概ねシンガポールにあるからなのだそうだ。事実、ウミトロンはシンガポール農産物・家畜庁(AVA)から支援を受けているほか、インドネシア海洋水産省(MMAF)などからも案件依頼を受けているという。

中国やインドに代表される人口大国が豊かになっていく中で、GDP の伸びとあわせて水産物の消費量が増加しているとのデータがある。事実、水産業界の世界市場規模は、人口増加率の2倍のスピードで伸びつつあり、将来性が高いと評価できるだろう。ウミトロンでは今後、水産養殖メジャーを通じてのパートナーセールスのほか、大型生産者にはダイレクトセールスで、開発したソリューションの販売と実装を展開していくとしている。

ウミトロンのチームメンバー
Image credit: Umitron

<参考文献>

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