Z世代向けミクシィの「Amino」、世界で250万コミュニティを作り出したその手法とは

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SNS市場はFacebook、Instagram、Snapchat、Twitter、Pinterest、LinkedInに代表される主要6社によって寡占されています。しかし10〜20代のZ世代ユーザーにとって最適なコミュニケーションサービスがこの6つのサービスの中に含まれているとは限りません。

Facebookでは40代以上のユーザーが仕事やプライベードなアクティビティに関する情報を多く投稿する傾向にあります。こうしたコンテンツはZ世代には刺さらず、明らかに世代間のギャップが発生してしまっているのです。

また、Snapchatにも同様の傾向がみられます。徐々に40代以上のユーザー数が増え、若者が楽しめるSNSというアイデンティティーが崩れ始めています。事実、eMarketerのデータによると、35〜44歳のユーザー数が2015年の370万人から2021年には980万人へ、45歳〜54歳では170万人から400万人に拡大すると予想されています。

プラットフォームが巨大になれば、それだけ若者ユーザーの居心地が悪くなります。この課題に取り組んでいるのが本記事で紹介する米国のSNS「Amino」です。

マニアック情報を豊富に揃え、若者の居心地の良さを担保

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Aminoは2014年にニューヨークで創業し、累計7240万ドルを調達。ユーザーは登録と同時に、自分の興味や趣味に合わせたコミュニティへ入ります。登録からグループ入会までの導線はミクシィ(mixi)とほぼ同じです。

多様な機能が実装されており、チャット機能はもちろん、GIFや写真、動画、投票コンテンツをコミュニティ内に投稿できます。2018年6月のTechCrunchの記事によると、累計250万コミュニティが誕生したそうで、2016年の同メディアの記事では25万コミュニティとあったため、約1年半で10倍成長したことになります。

筆者も利用していますが、機能がありすぎて慣れるのに非常に時間がかかりました。また、画面上に表示されるコンテンツ量が非常に多く、シンプルなUIを提供する主要SNSとは全く真逆の見せ方を採用しています。

一見、情報量がつまり過ぎているUIは欠点に感じるでしょう。しかし、AminoのターゲットユーザーであるZ世代にしか理解できないニッチなコンテンツが所狭しと並んでいる見せ方の方がウケがよく、高齢ユーザーが寄り付かない予防線にもなっていると感じます。

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Aminoの秀逸な点は2点に集約できます。

  • 1) 若者に刺さるニッチなコンテンツコミュニティが日々生み出される
  • 2) 豊富な情報量をUIに反映させることで40代以上のユーザーが参加しづらい導線を作る

Z世代のなかでも「通の人」が興味を抱く新しいコミュニティが積極的に作られることで、コンテンツの新陳代謝スピードが異常に早いのが特徴です。このスピード感についていけない30〜40代以上のユーザーは自然と離脱する仕組みになっているといえるでしょう。私もかなりニッチなアニメコミュニティ(アニメ物の怪)に属しています。それでも海外ユーザーの投稿熱量に圧倒され、置いてけぼりを食らうほどです。

Aminoは立ち上げ当初、日本の秋葉原で遊んでいるようなゲームや漫画好きな若者ユーザーの獲得を目指していました。こうしたユーザー獲得及びコミュニティ形成戦略がいまでも根強く受け継がれています。

たとえば、ある日本の有名漫画/アニメのコミュニティに入ると、ユーザーのコスプレ写真や、有名キャラクターの中で誰が好きかを投票する投稿にこぞってコメントが寄せられます。

いわゆるオタクユーザー達はコンテンツ投稿に対しての熱量が高く、こうしたユーザーを囲い込むことでエンゲージ率の高いコミュニティを日々誕生する導線を緻密に作り上げることに成功しています。世間ではマイナーであっても、通の人には非常にウケの良いコンテンツが大量に投稿される具合です。

UI設計からターゲットユーザーの獲得までの一貫した流れが、若者が好むプラットフォーム育成の強固な基盤となっているのがAminoといえるでしょう。FacebookやSnapchatにもない、非常に大きな魅力が詰まっています。

興味ベースで集まるインタレスト・コミュニティ戦略

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ユーザーがコンテンツを高いモチベーションを維持して投稿する根源には、興味や趣味をもとにしたインタレスト・コミュニティ戦略が挙げられます。

FacebookやTwitter、SnapchatのようなSNSは、あくまでも個人間を繋ぐことを想定したサービスです。こうした個人間ネットワークが膨らむことで巨大なコミュニティへと成長しました。一方、Aminoはユーザー同士の繋がりを促進させるのではなく、興味や趣味に沿った切り口からコミュニティ数を増加させています。この成長戦略を本記事ではインタレスト・コミュニティと呼びます。

Aminoのインタレスト・コミュニティ戦略は、ランジェリーブランドFeastを運営するハヤカワ五味さんYouTubeの動画で発言されていた「検索できない時代」というトレンドにぴったりと当てはまります。

モノが増えすぎてコンテンツ単位では検索が難しくなってしまった時代では、人の単位で検索する時代になっていると仰っています。自分の興味や趣味に合ったインフルエンサーをフォローして、彼らがまとめてくれる情報を消費するという考え方です。

一方、ハヤカワさんは人の単位で検索するリスクも指摘されています。人の単位になってしまうと属人的要素に縛られるデメリットが発生します。たとえば、サロンのように個人が運営するコミュニティでは、運営者の考えや興味が移り変わってしまえば運営が滞ってしまいます。誰か主要なメンバーが一人でも欠ければ成立しないコミュニティは長く生き残ることができません。しかし、価値観や哲学に共感して集まったコミュニティは、主要メンバーが一人欠けたとしても人に依存しないことから高い持続性を持つと仰っています。

Aminoはまさにこうした持続性を意識したコミュニティ戦略を採用しています。人の単位で検索するのではなく、コミュニティの単位で検索する導線を採用していることから、たとえ運営者の興味が変わり、コンテンツ投稿をしなくなくなっても形さえ残しておけばコミュニティ全体の熱量に影響はあまりありません。

それではミクシィとは何が違うのか?という疑問を持たれると思います。

ユーザーの興味が惹かれるコミュニティとマッチングさせる導線はミクシィもAminoも同じです。一方、Aminoはフォーカスが定まっています。具体的には先述したような熱量の高いオタク分野コミュニティに絞っている点が挙げられます。幅広く構えるのではなく、熱量とコミットメントが高いユーザーが集まる分野に特化してコミュニティ成長を促しているのです。

このようにコミュニティの持続性をしっかりと考え、分野特化型の成長戦略を持つことで大型調達を果たしたのがAminoです。コンシュマー向けアプリの成長は運によるところが大きいと聞いたことがありますが、コミュニティ形成の戦略思考においてAminoから学べることは大いにあるでしょう。

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