ラスベガスで毎年開催される CES 見本市は50年以上にわたってテクノロジーファンの注目を受けてきた。しかし2015年からは、CES はその著名なブランド名を、中国で最も人口が多い都市上海で開催された小さめのイベントにも与えている。
CES アジアはラスベガスの巨大なイベントとはあらゆる点で違う。まず、忙しないが熱狂的ではない。そして、まあカジノも見当たらない。だがアメリカのイベントとの最も大きな違いは、その精神性である。CES アジアは「なんでもアリ」ではない。イベントにあるすべてのものは、注意深く手作業で選別されている。
CES を主催する業界団体 Consumer Technology Association の会長兼 CEO である Gary Shapiro 氏はこう説明した。
このショーは様々な意味でラスベガスとは違います。私たちが開いているのは厳選されたショーです。ラスベガスでは、時間通りに登録を申し込んで場所を選べば、参加できます。そのため、スマホケースを作る企業がたくさんということになってしまいました。ここ CES アジアでは、イノベーティブでなければなりません。もしくは著名なブランドを持っていなければならないのです。
成長
CES アジア2018は4万3,000人ほどの業界参加者を集め、総来場者数は4万6,000人を超えた。これはラスベガスの人数のおおよそ4分の1である。CES アジアの成長を時系列で見ると、2017年に比べて今年の出展社数は20%アップ、展示スペースは24%アップだった。
今年、CES アジアには20以上の国や地域から企業が参加した。このイベントは主催国を超えて拡大することに専念し、急速にそれ自身が一大イベントとなった。
今回初めて、VentureBeat は上海新国際博覧中心(SNIEC)の通路を歩き、数え切れないほどの基調講演やカンファレンスに参加して、中国およびもっと広い範囲で何が起きているのかを直接見てきた。
毎年行われるラスベガスのイベントとは違い、CES アジアではあまり垂涎ものの発表はなかった。最新のスマートフォンやスマート冷蔵庫、その他無数の「スマートな」機械の華々しい登場はなかった。この上海のイベントはもっと控えめで狂騒も少ないものだったが、人々の未来を形作る斬新な技術にしっかりと焦点を当てていた。
トレンド
ラスベガスの CES2018から発生したトップトレンドを少し振り返って見ると、際立っていたのは世界中の企業が投資しているような技術だった。フライングカー、バーチャルリアリティ、自動運転車やスマートシティ、スマートホーム、音声起動式のデジタルアシスタント、ロボットといったようなものである。
これらのものはすべて CES アジアにも揃っていたが、このイベントの4年の歴史で初めて、人工知能は独自のカテゴリーを与えられた。現時点においては AI がおそらく最も大きな技術トレンドであることを考えれば、あまり驚くことでもないだろう。サイバーセキュリティや人材獲得から創造性、e コマースまであらゆるものに AI は普及を続けていて、私たちが行うすべてに影響を及ぼすタッチポイントに急速になりつつある。
だが、AI やその他の生まれつつある斬新な技術すべてにとって最大の成功要因にいずれなるであろうもの、5G を見逃すわけにはいかない。
アメリカや日本そして韓国と並んで、中国は5G 無線技術を牽引している。聞いたことがない人のために説明しておくと、5G とはスマートフォンの速度が速くなるといったことではない。スマートシティや自動運転車があらゆるものとシームレスに、高速で、低いレイテンシで、そして大容量でつながることを可能とするものである。また VR や AR も5G の速度で大きな恩恵を受けることになる。未来においてはあらゆるものがほぼつながり合うことになると考えられ、だからこそ5G 技術の意義を軽視しないことが重要だ。
Shapiro氏はイベントの閉会式で次のように述べた。
私たちの技術や周りの世界への関わり方を変えつつあるテックエコシステム全体の成長に、5G と AI が火をつけているのです。このように速いペースで技術がそれ自身を洗練し改革していく様を目にするのは素晴らしいことです。ほんの6ヶ月前、私たちは CES で生活を変える技術に囲まれていました。今週(6月第3週)はその技術が洗練され、強化され、様々な方法で構築されているのを目にしました。特に AI と5G の統合や、それらの技術を想定し実現しているクリエイティブな方法で、です。
上記のすべてに綺麗に合致するのは、まったく別の存在に変身しようとしているように見える、地味な車である。多くの大手自動車メーカーが電気自動車やハイブリッドに傾倒している一方で、Byton のような新興企業は自動車を次世代の「スマートデバイス」にしようとしている。元 BMW 役員の2人のドイツ人が2016年に共同設立し中国に本社を置くこの企業は5億米ドルの新たな資金調達を発表し、先週(6月第3週)の CES アジアで2つ目のコンセプトカー、Byton K-Byte を初公開した。
Byton は電気自動車をローンチするために設備を整えているところだ。この電気自動車は完全自動運転を備え、フロントダッシュボード全面に広がる巨大な「端から端まで」のスクリーンを誇っている。この自動車は2019年後半から出荷が開始される予定だ。
スマート自動運転技術は今年の CES アジアの重要な焦点であった。General Motors(GM)の Cadillac は新たな Super Cruise 技術を披露した。これは同社が初の「高速道路用の真のハンズフリー運転技術」と誇るものであり、来たるべき Cadillac CT6で中国に初めて出荷するとしている。
自動運転が関係する事故がいくつも注目を浴び、ロボットが我々の仕事を奪うという複数の報告が出た結果、AI コミュニティは AI の力は良いものであると世界を説得するために、多くのことをやらなければならなくなった。そして信頼を築くことができるかもしれない分野の1つが、道路上の安全性を向上させると示すことである。
Cadillac CT6のチーフエンジニア Lyndon Lie 氏は以下のように述べた。
世界中で毎年125万人が自動車事故で命を落とし、200万人以上が怪我をしています。事故の94%はヒューマンエラーが主要因です。General Motors は自動車と技術を通じて、この状況やその他の重大な社会的懸念を緩和する責任があります。GM のビジョンは事故ゼロの世界です。Super Cruise はこの価値ある目的に向かう革命的な道筋の、大きな一歩です。
ブロックチェーンの状況は?
さて、CES アジアでは大きなトレンドという意味では特に驚くべきものはなかったが、予想されていたほどの注目を集めなかったと言える分野が1つあった。ブロックチェーンである。
いくつかのセッションでは確かに触れられたが、ブロックチェーンは CES アジアというイベントで目立った展示ではなかった。筆者のメールボックスに飛び込んできた宣伝から判断するに、メニューでは人工知能の次にホットな話題であるはずなのにも関わらずである。だが筆者が感じるところでは、ブロックチェーンはまだ初期段階であり、企業はこの技術の現実世界における最良で最適な使い方を模索しているのだ。ブロックチェーンは盛り上がっているかもしれないが、それは簡単に変わってしまうこともありえる。
Consumer Technology Association のマーケットリサーチ部門バイスプレジデント Steve Koenig 氏はこのように指摘した。
ブロックチェーンのトレンドは CES ラスベガス2019で存在感を増すのではと予想しています。なぜなら多くのブランドがこの分散型台帳、ブロックチェーン、信頼ネットワークを多くの理由で使い始めているからです。しかし実際にどのように使っているかということをあまり話したがっていません。どうしてかというと、彼らは何が正しい使い方かということをまだ探ろうとしているのだと思います。何が適切で、何が不適切なのかということをです。
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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