中国政府、ブロックチェーンベースのID認証システムを確立へ

by TechNode TechNode on 2018.7.9

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世界中の政府がブロックチェーンで公共サービスを向上させる方法を模索している。Deloitte の報告(技術の進歩速度を考えればすでに古いと言えるかも知れないが)によると、世界中で12を超える国が試験的に実施している。

中国もそれらの国々の1つである。新興技術の中で地位を掴もうとする同国の取り組みは実行中のプロジェクトであり、ブロックチェーンは2016年の第13次五カ年計画の中に記されている。この取り組みはどうやら報われつつあるようだ。IPRdaily と incoPat によると、2017年には、中国はブロックチェーンの特許数で世界一であり、中国の中央銀行である中国人民銀行がリストのトップだった。市民のバーチャルなIDを作ることは、他の多くの応用を作る土台であり、最も焦点を当てることとなっている。

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社会保険をブロックチェーンに

E-BaoNet(易保)という企業の下で政府のデータを商業化することを専門に扱うブロックチェーンスタートアップ THEKEY は、社会保険をブロックチェーン上に置こうとしている。それを達成するための第一歩は強固な ID 認証システムを確保することであるが、健康に関する情報という繊細なものを含んでいることを考えれば、そのタスクはより重要なものとなる。

政府のデータはあらゆるブロックチェーン ID アプリケーションにとって基礎、もしくはキーとなるものである。それがないアプリケーションは役立たずだ。だが、このデータを集めるのは簡単なことではない。同社の会長兼 CEO の Catherine Li(李雪莉)氏によれば、中心的なデータベースがないことが問題だという。中華人民共和国人力資源・社会保障部(MOHRSS)だけが、全国に200のデータベースを持っている。

またこのデータは厳格な規則の下で使われなければならない。第三者の手に渡すことも、政府の目の届かないところに行くことも許されない。THEKEY によれば、権限のない人間の目に触れたりダウンロードされたりすることもあってはならない。

Li 氏は TechNode(動点科技)に語った。

複数の国を訪ねてみて分かったのですが、データを喜んで開放する政府はありません。自分が持ち主なのですから。

ですが今は中国政府はもっとオープンです。政府がデータを開放することでもっと市民の日常生活の役に立つということを、弊社は政府に知ってもらおうとしています。当然、データのセキュリティは万全にしなければなりません。

THEKEY の核心技術は Blockchain-based Dynamic Multidimensional Identification(BDMI)であり、生体データを基礎として使用している。これも中国政府が大きく投資している分野だ。中国で医者に診てもらうには順番待ちや無駄に多い事務手続きが必要だが、BDMI はこういった面倒を簡略化するためのものである。患者はアプリケーションをダウンロードして病院で使用できる機械で顔をスキャンするか、もしくは携帯電話のアプリを使う。

間違いなく個人のIDを認証するアプリケーションを作るのは複雑だ。通信会社のような別の情報源からのデータや位置データといったものを含む複数のステップによって、システムはユーザを認証する。個人ユーザ、病院や保険会社のようたサービスプロバイダ、そして THEKEY のようなバリデータ、これらはすべてスマートコントラクトと TKY トークンを通じてつながり合っている。

弊社は様々な業界向けの法律や規制、標準的な方針をスマートコントラクトに設定しています。この構造は政府の規制を厳密に遵守し、政府データのプライバシーを保護することを確実にするものです。(Li 氏)

THEKEY チェアウーマン 兼 CEO Catherine Li(李雪莉)氏
Image credit: TechNode/Masha Borak

このプロジェクトはまだ進行中だが、THEKEY のプロジェクトチームは既に、ブロックチェーンをベースとしない初期の ID 認証システムを中国の66の都市で実行しており、2億1,000万人をカバーしている。同社は東南アジアの海外市場にも目を向けている。

中国で増加中のブロックチェーンプロジェクト

中国政府が模索しているブロックチェーンの使用例は社会保険だけではない。3月には、中国人民銀行の下で運営している Zhongchao Blockchain Research Institute(中鈔区塊鏈技術研究院)が、中央銀行が支援するブロックチェーンプラットフォームとしては中国初の Blockchain Registry Open Platform(BROP)をローンチした。このプラットフォームもまた中国の煩雑なお役所仕事を短縮するためのもので、地方と外国の企業の両者に脅威となっている。企業向けのデジタル信任状や所有者登録、公共サービス上の情報を提供するブロックチェーンに基づいて、独立した知的財産権を開発するためのオープンプラットフォームだ。THEKEY のケースのように、信頼できるユーザの身元確認が重要となるだろう。

ブロックチェーンベースのIDはモバイルにも進出している。Tencent(騰訊)と国有の通信企業 China Unicom(中国連通)は、モノのインターネット(IoT)業界向けの新たな ID 認証基準と共に、TUSI SIMカードをローンチした。これは他の何にも増してスマートシティのアプリケーションに使われるようになるものである。

中国で試されているその他のブロックチェーン使用例には、南部の都市広州市でローンチされたブロックチェーンベースのタックスインボイスがある。また、出所した受刑者や仮釈放された者、執行猶予中の者の監視システムも、同市で5月にロールアウトした。このプロジェクトはウェアラブルデバイスを使い元犯罪者の居場所を追跡し、信用評価システムを開発するものだ。

住宅会社が Alibaba(阿里巴巴)やその他のパートナーと手を結んでいる北京近郊の雄安新区のように、地方行政府もまた不動産賃貸向けのブロックチェーンによるソリューションを試している。中小企業が抱える大きな悩みの種を解決すべく、Tencent は中国物流与采購連合会と共にブロックチェーンベースのロジスティクスプラットフォームを構築している。

注目すべき疑問は、中国がいつの日か独自のデジタル通過を発行するのかどうかということだ。政府が仮想通貨を嫌悪しているのはこれまでによく知られている。ICO は2017年9月から禁止されており、仮想通貨を人民元に換えることは違法だ。しかし、中国人民銀行の Digital Currency Research Institute(数字貨幣研究院)はブロックチェーンとデジタル通貨決済の商業への適用に関する41の特許申請を提出している。中国人民銀行前総裁の Zhou Xiaochuan(周小川)氏によると、「技術の発展の結果、デジタル通貨は不可避であると言って良い」とのことだ。

中国政府はブロックチェーンを規制する動きをさらに強めており、工業情報化部が出した「2018年中国ブロックチェーン業界白書」でブロックチェーンに関する法的保護と国の基準を2019年末までに定める取り組みを検討している。

未来のブロックチェーン政府

政府がブロックチェーンの波に飛び乗ることは理に適っている。政府はデータで満ちており、それはつまり模索されるべき多くのブロックチェーンの応用があるということである。デジタル化された電子的なデータベースは取引、売上げ、手数料、証明書、承認やその他多くのことに関する情報で絶えず更新されている。

スイスの認証会社 Wisekey の設立者兼 CEO の Creus Moreira 氏によれば、将来的には、中国が自身を他のプラットフォームと競合しているプラットフォームであると考えなければならなくなるという。プラットフォームは市民がアクセスできる商品を幅広く揃えるべきである。

Moreira 氏は今年の GMIC 北京でこう述べた

中国では強力なデジタルID戦略を持たなければなりません。

生産や輸入するものにはデジタルIDが必要です。分散型のブロックチェーンプラットフォームはIDを保存し、人々はそこにアクセスできます。(中略)これにより膨大な量のデータが形成され、AIがマイニングを行いシステムを向上させるでしょう。

ブロックチェーンベースのバーチャルなIDは国家の未来にとって非常に重大だとまで考える者もいる。TaiCloud(太一雲)の会長 Danny Deng(鄧迪)氏が TechNode の以前のインタビューで述べたように、デジタルIDは世界中の国々に立ち位置を変える機会を与えるかもしれない。市民は物理的なものとデジタルなものの2つのIDを持つようになり、後者はより柔軟な市民権の概念を可能にするだろう。エストニアは進行中の実例である。ブロックチェーンベースの e-Residency プログラムをローンチしたのだ。

すべての国々は、才能ある人や素晴らしい技術、そして聡明な資本を引きつけるべく、互いに競い合うようになるでしょう。もしこの機会を逃せば、100年間を逃すのと同じです。(Deng 氏)

【原文】

【via Technode】

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