企業買収・事業承継支援のFUNDBOOK、M&Aオンラインプラットフォームをローンチ——人とAIで買い手と売り手のマッチングを最適化

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オンラインプラットフォーム「FUNDBOOK」
Image credit: Fundbook

企業買収や事業承継などに関する M&A アドバイザリー業務を提供する FUNDBOOK は2日、事業の買収を検討する企業(買い手)を、事業の譲渡を希望する企業(売り手)にマッチングさせ、M&A を促進するオンラインプラットフォーム「FUNDBOOK」をローンチした。ユーザは買い手を対象とし、プラットフォーム利用単体での費用は発生せず、M&A アドバイザリー業務の一環として提供される。

FUNDBOOK を率いるのは、若きシリアルアントレプレナーの畑野幸治氏だ。畑野氏は大学在学中にインターネット広告事業を創業。以来、2つのスタートアップのイグジットを経て、2012年3月に創業したネット型リユース事業「スピード買取.jp」を運営する Buysell Technologies を、約5年間で年商100億円、総従業員数600名にまで成長させ、昨年9月時価総額50億円で売却した。

FUNDBOOK はその Buysell Technologies で生まれた M&A プラットフォーム事業で、昨年8月にスピンアウトし新会社として設立された。畑野氏はこの事業の将来性を確信し、Buysell Technologies の売却益の中から10億円を FUNDBOOK に資金投入。FUNDBOOK は法人設立から1年に満たないが既に135名もの社員を擁している。

FUNDBOOK 代表取締役 CEO 畑野幸治氏
Image credit: Fundbook

スタートアップの文脈で言えば、特にアーリーステージの場合、CEO が自ら資金調達や事業売却を交渉するケースは少なくないだろう。ミドルステージ以降ともなれば、CFO や投資家などが一部の任を肩代わりしてくれることはあるが、特に M&A に特化して事業売買の周辺業務をソーシングできるのが M&A アドバイザリー業務ということになる。

買い手が最良のマッチング先(売り手)を探す上で、直接交渉しにいっても、なかなかマッチングできないのが現状です。(売り手の)簿外債務の有無、従業員の雇用状況、法的な面での確認など、不慣れな人がやるのは難しい。(中略)

M&A で重要となるのは、買収対象のバリュエーション(株価)に加え、大きく財務・税務・法務の3つの観点からの確認。これらを会計事務所や法律事務所などと連携し必要なチェックを行います。(畑野氏)

FUNDBOOK が取り扱う売却希望先は、スタートアップよりむしろ、既に事業が確立し黒字化しているビジネスがほとんどだ。約6割が事業承継系、残りの約4割は企業の成長戦略の一環で事業の一部を売却したいとか、大手企業の資本をテコにさらなる事業成長を目指したい、とかいった種類のもの。折しも、先週には「ベンチャー型事業承継」なる団体が立ち上がったばかりだが、FUNDBOOK が扱うの過半数が事業承継系であることもまた、この国の後継者不足問題が深刻化してきていることの現れと言える。

マッチングを人と AI のハイブリッドで行う、オンラインプラットフォーム

オンラインプラットフォーム「FUNDBOOK」
Image credit: Fundbook

FUNDBOOK が2日にローンチさせたオンラインプラットフォームは、事業の売り手(譲渡企業)と買い手(譲受企業)をつなぐ人(FUNDBOOK ではエグセキューターと呼んでいる)と、マッチングを最適化させるビッグデータおよび AI で構成されるプラットフォームだ。買い手は2,000社程度に対し、売り手は130社程度。条件さえ整えば、M&A は圧倒的な売り手市場と言える。FUNDBOOK では今後事業拡大を図り、買い手や売り手の数をもう一桁上の領域にまで引き上げたい考えだ。

売り手からの情報は、(リスティング広告など)ほとんどインターネットからの流入で集めている状況です。M&A アドバイザリーをやっている会社は当社以外にも十数社ありますが、IT だけに特化していないのは当社の特徴かもしれません。(中略)

そして、決してクオリティや価格は下げない。M&A は買う側にも売る側にも一世一代の大事で、間違いがあったら後戻りできないからです。プラットフォーム上に載せる案件も十分に吟味しています。(畑野氏)

オンラインプラットフォーム「FUNDBOOK」のスキーム
Image credit: Fundbook

このプラットフォームを利用するにあたり、ユーザ(買い手)は、閲覧可能な複数案件に適用される NDA(秘密保持)ブランケット契約を FUNDBOOK と締結する。その後は個別の契約条件に応じて、IM(インフォメーション・メモランダム:売却対象となる企業・事業等に関する情報を詳細に記載した資料)が閲覧できたり、ノンネーム(会社名等を明かさない匿名ベースで、その概要を簡単に要約した資料)が閲覧できたりするなど、権限に応じて情報が開示されるしくみだ。

M&A 業務のすべてを自動化できるとは思っていません。まだまだプレーヤー(エグゼキューター)の活躍が必要ですが、自動化できる要素はかなりあります。例えば、人が10かかっていた労力のうち、2を自動化できないだろうか。M&A 分野におけるセールスフォースみたいなしくみを作って、次世代のチームにしていきたいのです。(中略)

M&A では、売り手と買い手では、どうしても売り手の方がリテラシーが低くなってしまう。それを支援するのも我々の役目。そこは必ず人の手でやっていくことになるのですが、すべてを地上戦みたいなやり方でやるのがいいかというと、そうではない。デジタルとアナログのいいとこどりみたいなことを、このプラットフォームで実現したいと思っています。(畑野氏)

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