パリ指折りのハードウェアアクセラレータUsine IOがピボット、今後はコーチングとStation Fでのアクセラレータ事業に特化

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間もなく移転予定の Usine IO オフィス内部
Image Credit: VentureBeat/Chris O’Brien

メーカームーブメントの波に乗り、パリを本拠とする Usine IO は2014年に設立された。ハードウェア事業のスタートアップを夢見る起業家の支援が目的だ。以来、フランスの起業家たちの活況と創造性を熱く語る人たちから同社はフランスのテクノロジーエコシステムを支える重要な一要素として高く評価されてきた。

しかし3年が経ち、Usine IO は大きな変革を遂行中だ。完全装備のファブラボを備える現在の1,500平方メートルの拠点から移転するのである。この夏、同社はもっと小さな拠点に移り、今後は企業やスタートアッププロジェクトに対するアドバイス事業に特化していく。昨年 Station F にローンチしたアクセラレータの Focus は継続する。パリにある Station F はスタートアップ向けメガキャンパスでアクセスに優れた立地だ。

共同設立者の Benjamin Carlu 氏は話す。

Usine IO もビジネスモデルを定義しようとしているスタートアップそのものなのです。私たちが最も得意なことはハードウェアプロジェクトのコーチングです。それこそが狭い拠点に移転する理由なのです。そして、人々に役立つデジタルツールという観点で、私たちは次のステップに進みたいと思います。

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Usine IO のパリオフィス
Image Credit: VentureBeat/Chris O’Brien

Usine IO(「usine」はフランス語で「工場」を意味する)は、Station F の設立資金を提供したテレコム起業家である Xavier Niel 氏を含む複数投資家からの資金調達を受け、2014年にローンチした。

同社の広大なスペースには産業向け3D プリンターやレーザーカッター、またその他の設備を備えたツーリングショップがあり、起業家は製品のアイデアを試作品にし、製造に向けた準備ができる。

起業家はサブスクリプション料金を支払うことでメンバーとなり、Usine IO にデスクスペースを持ち、各種ツールを使用したりメンターシップを受けることができる。Carlu 氏によると、Usine IO は580以上ものプロジェクトを受け入れ、ここから巣立った450社のスタートアップは2億9,500万米ドルを超える資金をベンチャーキャピタルやクラウドファンディングのキャンペーンを通じて調達してきた。

2017年の初め頃、Carlu 氏は事業について以下のように話していた:

設立者らは大胆な海外展開計画についても話していたが、これは実現されなかった。逆に、ビジネスはよりローカルに進展し始めた。

昨秋、Usine IO は Station F キャンパス内にアクセラレータの Focus をローンチした。Focus は4ヶ月プログラムにスタートアップを数社単位で受け入れる。その第1陣となる6社はオートノマスカーとコネクテッドビークルに特化したスタートアップだった。Focus は5月末に第2陣を発表し、そのテーマはインダストリー4.0だった。

その一方で、Usine IO は自社ビジネスの見直しを始め、データを分析してうまく行ったこととうまく行かなかったことを査定した。

Usine IO CEO の Banjamin Carlu 氏(2017年6月、パリの Usine IO で)
Image credit: Masaru Ikeda

同社は起業家向けの基本的なモデルに加えて、イベント企画や企業およびスタートアップ向けアドバイスサービスなどに事業分野を拡張してきた。しかし事業環境にはいくつもの変化が起こっている。例えば、フランス国内のアクセラレータやインキュベータの伸展、ハードウェアツール類が入手しやすくなったこと、消費者向けハードウェアから B2B ハードウェアへの移行が進んでいることなどだ。こうした状況を踏まえ、Usine IO の経営陣は同社の事業も変革する時期が来たと確信するに至った

こうした経緯で、同社はこの夏に現在の拠点からおよそ3分の1のスペースの拠点に移転することになったと Carlu 氏は話す。スタートアップ向けの大規模なデスクシステムも廃止する。製品デザインセンターは新拠点でも継続し、プロジェクトオーナーはデザイナーや専門家と会ったり、ラボで実験することができる。

しかし、今後 Usine IO は製品デベロッパーやスタートアップ向けのサブスクリプションサービスは提供しない。今後はインダストリアルコーチングや、より規模の大きな企業やスタートアップ企業が革新的なアイデアを着想する支援をし、顧客企業の社内向け製品開発の支援に特化していく。

Carlu 氏は、この事業変更は難しい意思決定だったが、変化する環境に事業内容を合わせていくことは重要だと話す。

マネージャーの一人として、難しい意思決定です。ですがその反面、チームのモチベーションは高く、私たちは新拠点を念頭に素晴らしい計画を立てている最中です。(Carlu 氏)

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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