香港RISEで出会った”旅系サービス”動向ーーアジアネットビジネスの人と情報が集まる「珠江デルタ」とは

by Takeshi Hirano Takeshi Hirano on 2018.7.13

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本稿は、RISE 2018 の取材の一部である。過去の RISE に関する記事はこちらから。

香港RISEにやってきた。アイルランドはダブリンで始まったWebSummitのアジア版で、毎年多くの来場者が集まる「インターネット祭り」的なイベント。オーガナイザーのCasey Lau氏のことはもしかしたら読者の中で知ってる人もいるかもしれない、香港拠点にアジアを飛び回るお祭り男だ。4年目になる今年は1万5000人がアジア周辺国中心に102カ国から集まった。

WebSummitについては本誌の池田将氏がジャーナリスト兼スピーカー/モデレーターとして参加しているのでこちらの記事を参照いただきたい。

RISEでチェックしてきた、アジア旅行系サービスの動向

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さて、RISEでは本当に多くのスタートアップが会場中で動き回っていた。ピッチステージについてはベトナムの物流版UberLogivan」が注目を集めたようだが、デモブースも個性的なスタートアップたちがひしめき、道ゆく人たちにピッチをしていた。全部で25カテゴリに分類された約500のブースはスタートアップの「アルファ」と成長中の「ベータ」に分けられ、3日間で日替わりの場所もあったそうだ。

本稿ではそのほんのごく一部になるが、アジアの旅行系サービスについて話を聞いたものをご紹介したい。日本ではご存知の通り、今年の後半に入って立て続けに注目の旅行系サービスがリリースされているので、その比較も含めてこのテーマを選んでみた。

Joyzride(マレーシア)

Joyzride
スタンリーの「ガイトー」が頭から離れない

マレーシアはクアラルンプールに拠点を持つのがこのJoyzride。ブースでパーソナルな旅行体験を提供してくれる、という謳い文句だったので聞いてみると、指定した日程でドライバーと車を手配してくれるガイドサービスだった。どういうテクノロジーで個人最適化するのかなともう少し突っ込んでみたら「ドライバーにリクエストを伝えてくれ」という回答でひっくり返りそうになった。2018年創業。

vidi(マレーシア)

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ユーザーが投稿した動画を元に、ローカルツアースポットの検索ができるアプリ。アジアパシフィック全体で展開しており、例えば海外から大阪に降り立った後、自分でどこか面白そうな場所を探す際にビジュアル(動画)で楽しそうな場所を見つけることができる。

元々、Touristlyという名称で旅行プランの予約ができるサービスを運営しており、ウェブサイトの方では現在もアクティビティを予約購入するサービスを提供している。同じ名称でアプリとサービスの体験が異なるというのはなかなかジャンクだ。

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ブースのショートピッチもなぜか日本の大阪推しだった

ちなみにツアープログラムみたいなのも用意してるのかと思ったのだが、以前、そういう機能をつけたところ、ユーザー側にニーズがなかったそうでやめたという説明だった。創業は2015年。2017年4月にAirAsiaが株式の半分を買収している。

Travo Asia(香港)

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TravoAsiaは香港で「突撃!隣の晩ごはん」ができるサービス。国内ではKitchHikeが提供する、家庭料理を作る人とそれを食べたい方をマッチングしてくれるアレだ。

食事を共にすることでコミュニティを作りましょうという印象のKitchHikeに対して、TravoAsiaは旅行客にローカルの文化を食事から感じてもらいましょうという方向性だった。オペレーションは結構人手みたいで、サイトから予約を受けたあとのフォローはチームでやっているそう。ズボラ飯。

Liluna(タイ)

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レギュレーションの問題でUberが規制対象になったタイで運営されているカープール(相乗り)サービス。Uberはタイを撤退する際、シンガポール拠点のGrab Taxiに事業譲渡したが、Lilunaは拠点も含めてタイオリジナルのサービスとして運営されている。タイ政府が運営するアクセラレーションプログラムの一員として出展。

台湾や香港などアジア圏で困ることの一つにタクシーがある。日本だと例えば「マリオットホテル」のようにアルファベットカタカナ読みがかろうじて通用するのだが、中国語圏だとそもそも読み方が違うので全く伝わらず悲惨な体験をすることも。

ここで役立つのがUberなのだが、前述の通り各国のレギュレーション問題で使えなかったりする。運輸は国の重要な事業の一つなので海外企業に握られるわけにいかない、というのは理解できるが、体験という点ではやはり統一されていた方が利用者として助かるのも事実。ここはアジア圏のようなダイバーシティが激しい地区でどのような結末に至るのか、興味深いところかなと。

ちなみに、こちらのLilunaのCOOがブースで説明してくれたのだが、同じ行き先の人たちをマッチングして相乗りするいわゆる「カープール」サービスはここだけなのだそうだ。

Drive Mate(タイ)

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共同創業者でCTOのSikharin Cholpratin氏

Drive MateはタイのP2Pカーシェアサービス。ディー・エヌ・エーのAnycaと同様のサービスで、2年目ながら9000台ほどのカーシェアオーナーを獲得。ビジネスで民泊事業やってる人たちと同じような個人レンタカーのプラットフォームっぽい感じになってるようだった。

確かに個人で普段使ってる車を平日だけ貸します、というシチュエーションは無いとは言えないものの、レンタカーと言ってもらった方がスッキリはする。

他にもカープール系の国違いがあったり、ツアーマネジメントのようなサービスはあったが、お金を払わず今すぐ旅に出れる、とか、チャットで気分を伝えたら旅行を組み立ててくれる、みたいなスッ飛んだアイデアはなかった。旅行についてはもしかしたら日本が一番クレイジーかもしれない。

東アジアにおける香港の位置付け

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RISEにはCNBCなどのメジャー含め世界各国からメディアが集まる。プレスブースには記者発表専用のステージも用意され、最終日にはタレントの記者発表会も開催されていた。

香港は東アジアの中にあっても位置的に中心部にあり、また、人口も700万人ほど、元々イギリス領だった時期が長いこともあって海外からのアクセスも容易だ。シンガポールに似た雰囲気を持つ「ハブ的な」ポジションを持っている。

香港拠点でスタートアップへの投資をしている友人と情報交換した際、特に2018年には香港島からマカオに橋が渡るということで、中国(広州)と香港、マカオの三箇所をつないだ地域(珠江デルタ)がこれからの中国インターネットビジネスにおいて重要な役割に担うことになるんじゃないかという話を聞いた。

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香港とマカオ、広州を結ぶ三角地帯

元々、国内に閉じる傾向のあった中国ネットビジネスが、香港という欧米に開けた土地を介して世界により強く発信され、さらにマカオに集まる資本家の力がそれらを促進する、そんなイメージのスキームだ。RISEのような大型カンファレンスはこういうエコシステムの中で「世界から人や情報を集める」というマイルストーンの役割を担うことになる。

同じように国内に閉じる傾向のある日本のテック・スタートアップ市場が、この東アジア全体の中でどのようなポジションを目指すのか、誰がそれを牽引するのかしないのか。メルカリ上場という一区切りを経験したエコシステムの中から答えのようなものが出てこないか、どう貢献すへきかと思いながら話を聞いていた。また来年も開催ということなので、WebSummit本編含めて取材してみたい。

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