国際宇宙ステーションへと飛び立つ支援ロボット「CIMON」

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(上)宇宙飛行士のための支援ロボット「CIMON」
Image Credit: IBM

SpaceX の Dragon ロケットは本日(6月29日)ケープカナベラルを発ち、5,900ポンド(約2,676kg)の研究用物資を国際宇宙ステーション(ISS)へと届けるが、その荷物の中には宇宙ステーション初となる AI 駆動のアシスタントが含まれている。

Crew Interactive Mobile Companion(略して CIMON)と名付けられたこの浮遊する球体は、バスケットボールより少し大きく、空気推進システムを使って ISS の中をゆっくり動き回る。German Aerospace Center(ドイツ航空宇宙センター)の依頼を受け、Airbus と IBM が2年かけて CIMON を開発した。

「スター・ウォーズ」シリーズや「インターステラー」など、ロボットが悪者になったり人間を殺したりしないあらゆる映画と同様に、CIMON はヘルパーとして、なおかつ仲間として行動する。そして、とりわけ Alexander Gerst 船長と協力するように作られている。

CIMON はコンピュータビジョンや様々な形式の自然言語処理など幅広い IBM Watson の人工知能を展開することになる。

マイクやカメラ、その他一連のセンサーを使い、この AI は宇宙空間と地球上における物質の結晶化の違いを探る Gerst 氏の実験を支援する予定だと、IBM の広報担当者は VentureBeat に e メールで述べた。

CIMON は Gerst 氏にビデオを見せたり彼と話したり、ツールを提案したりして研究プロジェクトに関連した多くのステップを段階的に説明できるよう、宇宙飛行士の専門用語や教育データで訓練されている。

ISS 上の Horizons ミッションにおける宇宙飛行士間の対話は Airbus と IBM によって活用され、CIMON の宇宙空間における活動や人間へのアシストを向上させ続けることになる。

CIMON は Gerst 氏が研究を実施する手助けとして作られたが、一方で宇宙空間における対話型 AI のヒューマン・マシン・インタラクションの研究の始まりでもある。

前述の SF 映画では、ロボットは人間の科学的な試みや日常的なタスクの手助けもするが、それだけではなく孤独や孤立を癒し、空虚な宇宙空間を旅する間の信頼できる友人ともなっていた。

Amazon の Alexa や Microsoft の Xiaoice、Alaska Airlines のチャットボットといった AI アシスタントのメーカーは、人間の孤独を鎮める対話型 AI について遠い目標とは言わず、今日も人々が何気ない会話やお喋りと共にしていることであると言っている。

ドイツ航空宇宙センターの CIMON プロジェクトを率いる Christian Karrasch 氏は下記の動画でこう述べている。

私たちにとって、これは人間が宇宙飛行する未来の一部なのです。つまり、もし月や火星に行くことになったら、全人類や全エンジニアを連れて行くことはできませんが、人工知能が1つあれば人類のあらゆる知識をすぐに手にすることができます。

CIMON(発音はサイモン)という名前は1940年代および50年代の SF コミック『Captain Future』の登場人物 Professor Simon に由来する。この作品は1970年代に日本でアニメ化され、その後ドイツ語にも翻訳された。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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