Magic Leap CEOインタビュー:「他の人より10年先の生活を2,295米ドルで始めよう」(後編)

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Magic Leap 「Tónandi」アプリのイメージ
Image Credit: Magic Leap

Abovitz 氏は Magic Leap の拡張現実グラスを次世代のコンピュータプラットフォームとして見ている。コンピュータビジョンやライトフィールド技術、空間音響を使い、人間の脳と協力するのだ。筆者は本日(8月8日)、同氏にインタビューし、そのビジョンについて話を聞いた。

第1回からの続き)

VentureBeat:

アスペクト比が4:3では視界が制限されると指摘する声もあります。人々を驚かせたり、かつて見たことがないものを見せる最初のものとしては、これで十分だとお考えでしょうか。

Abovitz 氏:

今ここで貴方にシステムを装着して欲しいと本当に思います、私には当然ものすごくバイアスがかかっていますから。面白いですよね。人々はノート PC の画面に慣れてしまっています。Magic Leap One よりも高いお金を15インチの画面に払うのです。6インチ画面のスマホにも大金を払います。弊社は数百のスマホをこのボリュームに適合させることができました。多くのテレビやフルサイズの恐竜や車も適合させることができました。これは全体的に精神面での位相シフトです。比較する対象となったものは、脳と目が自然な目の分解能で現実世界すべてを見るということです。これを追い求め始めたら、完全な別次元に足を踏み入れることになります。

Magic Leap を装着して十分な時間を費やしたら、もうスマホや PC、テレビに戻るのはほぼ不可能です。それらは非常に薄っぺらな断片だと気付いてしまいます。Magic Leap は膨大なボリュームのコンピューティングを提供します。実際に使ってみれば、空間的コンピューティングとは、断片の上ではなくそのボリュームの中で作業をするということです。これは精神的な転換です。スマホが与えるのは小さな紙片サイズの断片です。Magc Leap は6インチから無限大まで提供します。拡大するボリュームであり、その中を大量のデータで埋めることができます。

もうひとつ指摘したいことは、注意が自然と引き寄せられる、人間の焦点の中心です。視界の端で何かが左か右に動けば、頭は自動的にそれを追いかけます。頭に付けるシステムは軽量でありポケットの中の Lightpack に重量を持たせているので、何も考えずとも頭は追いかける動作ができます。慣性も大きくはありません。何かに没頭したら、すべて周囲にあるということが分かります。

当然、すべての世代でそのボリュームを増大させていきます。より小さく、軽く、そしてパワフルにしていきます。現実世界を追求すること、そして神経学的に完璧な信号と脳の相互作用を追及すること、これが弊社の目的です。弊社はそれを何年も追及しています。けれども、たとえば私が子どもの頃初めて Mac を手にしたとき、「じゃあ Macbook Pro まで今から20年待たなくちゃならないな」とは考えませんでした。興奮しましたし、Mac はずっと素晴らしいものでした。Magic Leap One に関してもそういう風に考えています。最初の一歩であり、終着点ではないのです。

VentureBeat:

誰が使うのかということに関して、最初に発表されたアプリケーションは、汎用目的かコンシューマー向けか企業向けか、どういう風にお考えですか。

Abovitz 氏:

大きな市場が2つあると思います。ここではクリエイティブとビジネスという風に呼びましょう。クリエイティブとはゲーム制作者、アーティスト、ミュージシャン、映画制作会社、映画館、役者、監督、メディア、放送局などに含まれ得るあらゆるものです。こういった多くの活動は舞台裏で行われています。これらのグループは積極的に取り組み、メディアを再発明したいと考えています。Magic Leap は彼らに素晴らしいクリエイティブな空間を提供します。

そしてビジネスは、弊社が考えていたよりもずっと早い段階のアーリーアダプターです。Magic Leap はおそらくこの先もずっと、デュアルトラックな企業であり続けるでしょう。クリエイティブ向けとコンシューマー向けという構成になり、戦略的なパートナーシップがこれから向かう先において重要であるとも考えています。誰が現れるのか、誰が訊ねてくるのか、非常に注意を払わなければなりません。特殊な使用例があるビジネスであれば、他のデバイスでは無理なことも Magic Leap なら練習したり実行したりできます。弊社は裏方の企業と共に手を取り活発に、空間的コンピューティングで根本的なビジネスの問題を解決するお手伝いをしていきます。とてもエキサイティングです。この先の1年、そういう話を耳にする機会が増えるのではないかと思います。

弊社が世に出しているものを見れば、人間以外ならば、Magic Kit があります。これは開発者向けの大量のサンプルであり、大量の「Hello World」的なものです。Autodesk に慣れた人なら、Hello World ティーポットや Hello World なあれやこれを手にして、作り上げる方法を学ぶことができます。そういう種類のものが大量にあります。今後も Hello World ツールを出し続けていきます。

Screen と呼ばれるものが弊社の SDK(ソフトウェア開発キット)の中にはあり、これは2D か厚みがあるものかに関わらず、メディア放送のためのフレームワークです。何かを作るためのフレームワークとしての空間的コンピューティングの中に、メディアの人々は様々なやり方を見つけ出すことができます。弊社の Helio 空間ブラウザはその中で作業するのが非常に容易です。ウェブ上のポップアップストアサイズのものや建物サイズのもの、素晴らしい規模のものをどうやって作るのか、独学で学ぶウェブ開発者がたくさんいます。それらを現実世界にロックすることもでき、空間的ウェブ全体がどうなっていくのかも見えてきます。とてもエキサイティングです。弊社には先駆者といえる人々がいます。Helio ブラウザは人々が何かを作り上げるためのアプリケーションツールのフレームワークです。再度言いますが、ここが弊社がクリエイターに焦点を当てているところです。

他の例もあります。Create は空間的コンピューティングの可能性を、楽しいやり方ですぐに教えてくれます。箱を開けて最初にダウンロードするのがそれです。何が起きるのかとワクワクさせてくれます。レゴの最初のセットのようなものです。それが最後ではありません。これで何ができるようになるだろうかと考える皆さんに刺激を与えるものです。数ヶ月のうちには Dr.G の Invaders をダウンロードできるようになります。これはトリプル A のフルゲームです。こちらで披露しています。いずれ Weta のチームがローンチの日付を決めます。これは本当に素晴らしいのです。

さらに、リッチな視覚的音楽体験の Tónandi があります。これは本当に新境地を開くもので、まるで音楽という精神を得てこの世に誕生した映画の世界の中にいるような気になります。昨年末にサンプルを少しお見せしました。実際に今手に取ってもらえれば、これは本当に素晴らしいものです。すでに惚れ込んでいる人もいます。

ただ可能性をお見せしているに過ぎません。これが製品一式のすべてというわけではありません。だからこそ、これはクリエイター版なのです。これはアイデアを刺激するためのもの、何かを作る人を手助けするツールなのです。弊社は安定したプラットフォームを持っています。これから素早くアップデートや新たなもののリリースをしていきます。今後の半年から1年は、弊社のシステムをクリエイターにとってできるだけ安定的に、できるだけ使いやすいものにしていきます。そういう風に考えています。

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Magic Leap One Creator Edition
Image Credit: Magic Leap

VentureBeat:

貴社が未来を形作っていることに関して、そして発展のためにムーアの法則を待っていることに関して、いかがお考えですか。

Abovitz 氏:

CPU と GPU に関しては弊社は良い成長曲線を描いています。これからの10年がどのようになるかという構想を持っています。弊社が Magic Leap Infinity と呼んでいる究極のシステムの構想も持っています。CPU と GPU だけではなく、マシンラーニング、ディープラーニング、そして AI についても精密な計画を立てています。それらがどこへ向かうのかという感覚が弊社にはあります。非常にエキサイティングです。世界でも有数の人材が弊社とパートナーには揃っています。5G ネットワークについて理解し、弊社のフォトニクスチップがどこまで行けるかということも分かっています。

弊社が乗っているのは会社としての成長曲線だけではありません。ディープラーニングと AI の曲線にも乗っています。人間の生理機能にマッチしようとしている独自のフォトニクスチップの曲線にも乗っています。そして5G ネットワーク周辺の曲線にも。屋内外の高速のコミュニケーションは、いつアメリカ国内の主要都市や世界のその他の地域に行き渡るでしょうか。それについても弊社は構想を持っており、弊社が増大するべき各タイミングも分かっています。弊社は常に最先端に居続けたいと思っています。

これから先の1年毎、2年毎に起きることは本当に人々を驚かせることになります。他の要因と共に収斂しているムーアの法則は、コンピューティングを非常に興味深いものにしていくでしょう。あらゆることにおけるコンピューティングの最もリッチで最も楽しい次の10年に、弊社は参加できるのかもしれません。

Magic Leap CEO の Rony Abovitz 氏
CC BY-NC-ND 2.0: via Flickr by Fortune Brainstorm TECH

VentureBeat:

どのようにして、6都市限定のロールアウトを決定したのでしょうか。

Abovitz 氏:

弊社への私のテーマは「泳ぎ方を学べ」です。弊社は小さな一歩を踏み出した小さな赤ん坊です。大きな企業を見てみれば、40年50年とこの仕事を続けています。弊社は70年代半ばの PC 企業のようなものです。主要6都市で最初の一歩を踏み出すことに決めましたが、今後数ヶ月で他の多数の都市でもロールアウトするつもりです。

慣れてきてからよく見て、そして増加させます。コンピュータや Magic Leap One に限ったことではありません。弊社のサプライチェーン全体、カスタマーサービスのやり方、そういったものを弊社はきちんとしたいのです。皆さんを幸せにしたい。それがきちんとできていると思えたら、速度を上げてスケールアップします。ですが人々を幸せにする弊社の能力を超えて先走りたいとは思いません。顧客や開発者、クリエイターからのフィードバックを聞きます。それには少々時間がかかり我慢が必要です。弊社は我慢強いのです。それが多くの資本を調達した理由のひとつでもあります。きちんとできるようにです。

VentureBeat:

Wired の記事の冒頭の部分、Magic Leap のハイプサイクルは終わったというコメントについてどうお考えですか。会社にとって良かった、もしくは悪かったとお考えでしょうか。

Abovitz 氏:

あれは私にとって大きなカルチャーショックでした。より大きなテック業界の大部分が気にもしない、成功した医療テック企業からあんなコメントが出てくるとは。弊社はロボットを扱っていましたが、かつては医療テック分野にいました。今のこれは私がガレージで始めて、静かに取り組んできて、Google からの投資を受けたのがビッグバンでした。

その後は弊社にもハイプサイクルはコントロール不能でした。人々は「このフロリダの小さな会社は何をしているんだ」と言い、このシネマティックリアリティを扱っていると分かった後は、完全におかしな風になってしまいました。暴走です。多くは弊社に関係のないことでした。弊社を見つめる人々のカオスでした。私は「2001年宇宙の旅」のモノリスを思い出しました。人々は欲しいと思うものをすべて、弊社に投影していたのです。

弊社は私が狼煙と呼ぶものを、弊社がやっていることに対してきちんと興味を持ってくれている人々や開発者のために上げようともしていました。ノイズの中でコミュニケーションを取ろうとしていたのですが、結局少し裏に回ってコミュニケーションを取らざるを得なくなりました。静かな環境で製品を作りたかったからです。

あれもちょっとした学習環境ではありましたが、私はここに至るまで何も変えてはいません。大事なのは前を向くことです。もしかしたら、あの事態もいつの日か映画化されて素晴らしい作品になるかもしれません(笑)。

【via VentureBeat】 @VentureBeat

【原文】

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