dApps(分散型アプリケーション)のハッカソン「dappathon」から生まれた、ブロックチェーンのユニークな使用例を4つご紹介

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Blocklime と Daap.com の「dappathon」受賞者
Image credit: Dapp.com

この記事を書いている時点で、ビットコインは2万米ドル近くの最高値をつけた12月の3分の1を少し超えたあたりの価格で取引されており、他の仮想通貨も同じような下落の仕方をしている。複数の国の監督機関は ICO を厳しく取り締まっている。

一瞥した限りでは、素人にはブロックチェーンの熱狂は終わったように見えるかもしれない。

だが仮想通貨や ICO はブロックチェーンの領域の一面でしかない。その他の種類のブロックチェーンスタートアップはまだ急増中であり、大手企業や金融機関は技術の活用方法を探っている。

これらのことを考慮して、Blocktime と Dapp.com はブロックチェーン開発のブートキャンプを共同で開催した。そのすぐ後にはマレーシアで「dappathon」(分散型アプリケーションのハッカソン)が行われ、筆者は80名以上の参加者のメンターの一人としてそこへ招かれた。

最後まで生き残った20組余りのチームの中には、いくつか筆者の目を捉えた現地生まれの使用事例があった。

イミュータブルなハラル食材

今日の消費者は食べるもの、飲むもの、使うものに関して以前よりはるかに気を遣っており、ムスリムの消費者であれば尚更だ。頻繁に海外へ行く者にとっては言語の壁がしばしば問題となる。dappathon の参加者が日本を訪れたときにそういう経験をしたという。

そのソリューションとして、彼女のチームは製品情報をブロックチェーン上に置き、消費者が QR コードを読み取ることでその情報にアクセスできるようにするというアイデアを考案した。このプロセスを分散化することで、食料品の偽造されたラベルや不正確なラベルを排除し、最終消費者にはより高い透明性を提供できる。

同様に、このソリューションは他の業界にも適用できる。たとえば、アレルギーやその他の健康問題で特定の原料が使えないということがある、美容と健康の業界などである。

大学入試プロセスの透明化

ほとんど毎年のように、いくつかのマレーシアの公立大学には入試プロセスが信頼できないとして学生から非難の声が上がる。差別的で独断的な選考基準のせいで最も適格な学生であっても落ちるというのは、公然の秘密である。

dappathon に参加したあるチームは、dapps を使って入試プロセスの透明性を高めたいと考えていた現役大学生だった。そのアイデアは、より公的に監視される手続きを開発し、それによって必然的に社会的地位を向上させ大学入試プロセスに対する社会的不信感を軽減するというものだ。

ペットや家畜のデジタル ID

KYC(顧客の身元確認)について語る人は多いが、ブロックチェーンを用いてペットの健康記録や血統書を包括的に文書化する KYP(ペットの身元確認)プラットフォームについて言及する人はそう多くない。

動物の誕生日や健康に関する証明書を偽造することは簡単にでき、そのためペットの価値を確認するのは非常に困難である。血統や血筋を追跡できる包括的なプラットフォームがあれば、違法で非倫理的な繁殖方法によって暴利を得ることはさらに困難になるだろう。

動物のデータを追跡することは些細なことに思えるかもしれないが、動物学や農業の観点からすると不可欠なことだ。たとえば日本では、和牛や神戸牛には牛肉の筋肉内脂肪、すなわち「サシ」を測る独自の評価基準がある。実際、2001年に最初の狂牛病の事例が発覚して以来、日本の全ての畜牛はそれぞれ10桁の固体識別番号の耳標をつけている。

携帯できる確認済みの成績証明書

契約の不正行為や剽窃行為から様々な組織の資格詐欺まで、学歴詐称は世界中の企業にとって非常に深刻な問題となっている。人を雇おうとしている者にとっては特に厄介な問題だ。

偽造された証明書が簡単に手に入る一部の国々においては、これは広くはびこっている問題である。dappathon に参加したあるチームは、証明書をブロックチェーン上に置くという提案をした。確認済みの証明書を携行できるようにすることで、雇用を得たりアクセスしたりするために学歴を詐欺的に悪用することを減らすことができる。

Image credit: Dapp.com

1990年代半ばに Google や Facebook、Uber の出現を予測できた人がほとんどいなかったように、仮想通貨バブルの残骸からブロックチェーンを基としたアプリケーションがどのように出現するのか、私たちは正確に予測することはできない。

シンガポールや韓国のような先進国はこのディープテックに向けて有利なスタートを切っているが、他の国々でも風向きは変わりつつある。途上国の企業や政府機関はノイズのさらに先を見始めており、基盤となるこの技術の真の可能性に注意を向けている。

今回の dappathon から出たアイデアは、マレーシアで情報を遮っている多くの機関を改善させようと正面から目指すものであるが、さらに進めばより全体的で共同的な枠組みが必要となる。関係者が乱暴な見通しを一旦脇において、背後で何が作られているかに集中してみれば、彼ら「dappathon 参加者」の熱意を簡単に理解することができる。なぜならこの技術そのものが、値段をつけられない財産、つまり信頼を作り上げるものであるのだから。

【via Tech in Asia】 @techinasia

【原文】

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