インドのGenrobotic Innovations、マンホールの清掃を自動化できるロボットを開発

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インドで2017年にマンホールにおける事故で亡くなった人の数である。なんと1ヶ月で平均8人にも上る!

Manual scavenging(手作業による排泄物清掃)——主にインドで使われる用語で、排泄用バケツ、汲み取り式トイレ、マンホールなどからバケツやシャベルで手作業により未処理状態の人の排泄物を除去する慣習のこと——は、人命に対する配慮などほとんど得ることもなく、もう何十年も続いている。

1日当たり150~200インドルピー(2~5米ドル)というお粗末な賃金と極めて悲惨な労働条件にもかかわらず、このカーストに基づいた職業でなんとか生計を立てようと、依然として就業者があとを絶たない。防護服その他の安全対策は全く用意されておらず、これら貧しい人々は自らの命を危険にさらすのだ。マンホール内で窒息死や有害ガスの吸入により死亡する人もいれば、マンホールから生きて戻った幸運な人でも深刻な健康問題を抱えてしまう。

だが彼らの話がクローズアップされることは滅多にない。

インドでマンホール清掃の自動化に取り組んでいる起業家 Arun George 氏は e27に対し次のように述べた。

インドでは、2013年に最高裁判所が手作業による排泄物除去の禁止を法制化したにもかかわらず、この昔からの慣習が依然として衰えることなく続いています。毎年何百人もの人々が、硫化水素、アンモニア、二酸化炭素、メタン、窒素を含む危険なガスの吸入によって悲劇的な死に至ります。この慣習は終わらせるべきなのです。

George 氏と彼の友人である Nikhil NP 氏、Rashid K 氏、Vimal Govind 氏(全員がエンジニア)は、2017年に Genrobotic Innovations を立ち上げた。インド南部ケーララ州にあるティルヴァナンタプラムを拠点とするこのスタートアップは、Bandicoot と呼ばれる半自律式機械を開発し、排泄物除去やマンホール・下水汚物清掃を手作業で行う慣習に終止符を打つ可能性をもたらした。

Bandicoot_robot
ロボット「Bandicoot」

George 氏は次のように説明した。

Bandicoot は、マンホール内に詰まった汚物やその他の液状廃棄物を清掃するために使うことができる装置です。このロボットは蜘蛛の足に似た形状の腕に空気圧システムを備え、重いマンホールの蓋も難なく取り外し、収束して差し渡しを小さくし、マンホールに入っていけるのです。マンホールの形状に合わせてサイズを調節可能です。それから固形廃棄物を引っぱり出して下水路システム内の遮断物を取り除きます。これも Bandicoot なら可能です。

このエンジニア4人組がモチベーションを抱いたのは、彼らが大学生の時だった。ジェームズ・キャメロン監督のハリウッド SF 映画「アバター」を観たあと、彼らは触発されて、類似の腕と脚を持ち、人間が内部で操作できる10フィートの半自律式ロボットを製作した。この機器は幅広く評価を得た。

マンホール清掃ロボットのアイデアが浮かんだのは2015年。

ケーララ州のコーリコードで起きたマンホール事故の報道が、私たちを今いる場所へ導いたのです。市の中心部で発生したこの事故は、2人の命を奪い、この国の手作業排泄物清掃の悪習を露呈しました。文明社会にとって恥さらしとなるこの悪習に終止符を打つことができるロボットを作ろう、と私たちが考えたのがこの時でした。(George 氏)

下水汚物を取り除く手段はいくつか市場に出ているとはいえ、どれをとっても Bandicoot に匹敵するほど効果的な方法ではない、というのが George 氏の主張だ。曰く、下水道の本格的な洗浄のためには、作業者が下水道清掃用噴射機または清掃桿を手作業でマンホールの内部に設置するか、下水道吸引機を使って廃棄汚物を吸い上げる必要がある。しかしながら、このシステムでは半液状廃棄物の除去しかできず、固形の廃棄物はあとに残ってしまう。

Bandicoots の腕は複合的な作業も実行可能で、特別設計のシャベルを使って一様ではないマンホールの内部表面を清掃する、といったことにも対応しますし、下水路の検査にも使えます。シンプルなユーザインターフェイスで、特別な知識のない人が使えるように設計されています。作業者は自ら、機器を操作することができます。それはすなわち、雇用機会は奪うことなく、仕事の危険性だけ排除するのです。(George 氏)

マンホールを清掃する世界で初めてのロボットであるとしている Bandicoot は、インドの特許を取得し、締約国が150を超える特許協力条約に基づく国際特許も出願中である。

Genrobotic が Bandicoot のターゲットとするのは、政府、個人、スマートシティ、空港、病院、アパート、工場、その他の産業である。

ロボットの費用は、顧客側で必要とする機能によって異なってくる。さらに税金や輸送費を含めると250万インドルピー(3万5,000米ドル)にまで達するかもしれない。

この製品はティルヴァナンタプラムにある Kerala Industrial Infrastructure Development Corporation 内に Genrobotic が所有する製造センターで設計・製造されている。

The_Genrobotics_team
Genrobotic のチーム

Bandicoot に加えて、チームは第一世代(G1)パワードスーツ、それに G1のコンパクト版となる G2医療用パワーアシストスーツも開発した。

立ち上げからわずか1年、Bandicoot はすでにインドだけでなく広くアジア中で人々の心をつかんでいる。

すでに、ケーララ州水道局その他いくつかのインド国内の地方政府との了解覚書に署名した。

シャールジャ市当局でも同様に、公共下水道と導管の検査を行うにあたって Bandicoot を投入する計画です。さらに、チームは Bandicoot をシャールジャ政府側の要求を満たせるように作り変えるための研究開発にも携わることになるでしょう。(George 氏)

最近、Genrobotic は国立台北大学の iFoundry と産業利用目的および健康管理の分野でのパワーアシストスーツ技術の開発にあたる了解覚書に署名した。本合意の下、両チームは連携してパワードスーツ技術の共同研究開発を進めていく。

今年初め、Genrobotic は Unicorn India Ventures から資金を調達した。Google India の取締役社長である Rajan Anandan 氏も出資者である。

先週(8月第5週)、同社はインドにおける初めての Google Launchpad Accelerator プログラムに選出されたスタートアップの1社となった。

人手による排泄物清掃は世界的な問題です。ほとんどの途上国はこの問題に直面しています。インド単独でも、約450万人の手作業排泄物清掃者が存在するのは研究調査の示す通りです。Bandicoot は正しい方向への革新的な第一歩であり、これによって弱い立場の階層にある人々の生活をより良いものにし、また彼らに尊厳ある生活をもたらす助けとなっていきます。

George 氏はそう話を結んだ。

【via e27】 @E27co

【原文】

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