ミレニアル世代が創る「ママ経済圏」ーー母親向けGoogle MapからUberまで登場

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ミレニアル世代層(81年〜96年に生まれた人)の拡大に伴い、若い母親が増えています。Forbesの記事によると、2016年時の米国出生の82%がミレニアル世代が占めるといいます。

2016年に出産をしたミレニアル世代の女性数は120万に及び、累計で1,730万人のミレニアル世代の母親が誕生したともいいます。こうした数値から、既存サービスも新たな価値観・趣向を持った母親たち向けにサービスの切り口を変える必要が出てきました。

本記事ではミレニアル世代の母親たちに特化したスタートアップを簡単に紹介したいと思います。

3つのママ向け市場

最初に紹介する市場は地図・ナビゲーションです。

遠出をしたり都心へ出かけてショッピングを楽しみたいと思った時、子供連れでも問題のない場所を探すのに苦労することはないでしょうか?たとえばお昼時になってレストランを探すとなった際、Google Mapを開いても「子連れOK」なお店情報は探しづらいでしょう。

「Winnie」はこうした子供連れに優しい場所情報を提供する地図アプリです。2015年にサンフランシスコで創業し、累計調達額は650万ドルに及びます。公園などのアクティブスポットからレストランのような食事処など、複数のカテゴリーと目的別に手軽に行き先を検索できます。

Google Mapとの違いは単なるキュレート情報が載っているだけではありません。食べログのようにユーザーが投稿した詳細なコメントを膨大に保有している点が非常に大きな競合優位性になっています。熱量の高いコメントが多いのは、特化型の地図市場を押さえることでコアファンの獲得に成功している証拠といえるでしょう。

TechCrunchの記事によると、全米1万都市・200万箇所の情報が集まっているといいます。2016年時点では10万か所の情報しか投稿されていなかったため、驚異的な伸び率でwす。今後はより精度の高いパーソナライズ情報の提供や、広告による収益化も狙えるはずです。

2つ目はマッチング市場です。

子供が生まれてからしばらく経つと、最初の関門になるのが公園デビューです。近所の公園で遊びながら、母親が近隣の“ママコミュニティ”に入るための通過儀礼のようなものと言ってもよいでしょう。

近所に知り合いのママ友がいると、何かとお世話をしてくれたりして重宝する一方、ミレニアル世代はより効率的に友達を作りたいといったニーズを持ちます。

2017年にローンチしたロンドン発の「Peanut」はスワイプ機能を使い手軽に近隣のママ友を作れるマッチングアプリです。「母親向けTinder」がコンセプトで、ユーザーが自身の状態(妊娠中、働くママ、専業主婦など)、子供の年齢、居住エリア情報を入力するとAIが最適なユーザー同士をマッチングしてくれます。

Venturebeatの記事によると、ローンチから約1年で30万アクティブユーザー(アプリ上で会話をしたユーザー)を獲得しているとのこと。直接競合には、2016年に同じくロンドンで創業し、290万ユーロを調達した「Mush」が挙げられます。

両アプリともマッチングが成功した際にはメッセージ機能が解禁され、ユーザー同士が都合のつく場所で会うことができます。一方、コミュニティ機能にも力を入れています。たとえば母親になっても働ける職場情報を交換できるコミュニティがあるなど、「mixi」のような情報交換の場にもなっています。

一度でもハマれば高い継続率を期待できるのが母親向けマッチングアプリとの特徴です。デートマッチングアプリの元祖である「Tinder」や「Bumble」と比較して高いエンゲージメントが期待できるはずです。

最後に挙げるのが配車サービス市場。

米国では出産後に母親が職場復帰をすぐに果たし、共働き世帯が多い印象がありました。そこで問題となるのは子供の送迎です。

仮に母親が働いていなくとも、毎日保育園へ迎えに行くのは一苦労。日本では幼稚園が送迎バスを手配してくれるケースが多いですが、車移動社会の米国では遠距離に住む子供も多く、効率的な送迎は望めません。そこで登場したのが「子供向けUber」です。

「HopSkipDrive」は子供向け配車サービスの最前線を走っています。2014年にロサンゼルスで創業し、累計2,150万ドルの資金調達を果たしています。

FastCompanyの記事によると、6歳以上の子供を対象に15ドルから送迎サービスを展開。カープール機能を使えば最低6ドルから利用できるそうです。ドライバーの信頼度が最も重要となるため、15のバックグラウンドチェックを通過した人しかサービス提供側になれません。競合には「Zum」「Kangado」が挙げられます。

子供の送迎需要について、日本でも地方や東京都心を離れた近郊エリアで需要があるかもしれません。また、クラウド投票で開通するバスサービス「Chariot」の業態を採用すれば、黒字化の望める路線のみ運用ができるでしょう。

縮小する日本の“ママ経済圏”、求められるのは成長市場志向

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ここまで「ママ経済圏」における3つの市場を紹介してきました。いずれも既存サービスを軸に、母親という特殊な属性に特化したものです。大手競合が攻めきれていない分野を押さえにいく戦略に終始しています。

日本では「ママリ」が母親向けサービスとして有名です。こうした属性特化型のメディアや情報プラットフォームは、初期ユーザーの獲得に成功し先行して市場を取ってしまえば一人勝ちできる印象があります。

一方、これから自動運転市場が盛り上がってくる未来を見据えれば、Winnieのような地図・ナビゲーションや、HopSkipDriveに代表される交通分野に対しての需要が急激に高まる可能性にも注目しておくべきでしょう。

たとえば「日本版Winnie」を展開してママ向け地図データを用意できていれば、自動車会社と提携して家族向けドライバー向けにナビゲーションシステムを販売できるかもしれません。「日本版HopSkipDrive」を始めて子供の送迎データを握っていれば、UberやLyftの抑えられない交通ビックデータ獲得へ繋がります。

今回紹介したスタートアップは全て「母親が持つ子育ての悩みを解決する」という共通のミッションを持ちます。ここでは差別化できません。そのため、自動運転社会の到来のように、5〜10年単位で市場がどのように変化していき、その際に必要なインフラを抑えるといった長期戦略を軸に据える必要性が高まります。

日本は少子・高齢化社会へと突入していることから、必然的に「ママ経済圏」は狭まりますが、アジア圏全域を見据えれば将来性のある母親向け事業を立ち上げられる可能性は高まるのではないでしょうか。

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