日本のデザインはなぜ世界と違うのか、そして、そこから学ぶべきこととは?——グッドパッチ創業者・土屋尚史氏に聞く【ゲスト寄稿】

by ゲストライター ゲストライター on 2018.9.29

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


何百年にもわたり、日本のデザインは世界のそれとは異なる様式を示してきた。今日は、日本を牽引する最も評価の高い UI/UX デザインスタートアップの一つ、グッドバッチの創業者で CEO の土屋尚史氏と共に、デザインがどのように進化し、(良くも悪くも)より世界で通用するデザイン基準が見られるかもしれない理由について、話してみたいと思う。

グッドパッチは、新しいタイプの日本のデザイン会社で、これまでに多くの資金を調達してきた。土屋氏と私は、グッドパッチがベンチャー資金を得て、経営を戦略的な方向に変えた背景について話した。

今回も素晴らしいディスカッションなので、お楽しみいただけると思う。

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グッドパッチ 創業者 兼 代表取締役社長 CEO 土屋尚史氏

Tim:

デザインとは言っても、分野は広いですね。グッドパッチは、どのような顧客やプロダクトを対象にしているのですか?

土屋氏:

有意義なプロダクトを作りたい顧客を求めています。強いビジョンを持った企業と協業できるよう努めています。新しい顧客を受け入れる前には、その会社の使命やそのプロダクトを作る上でのビジョンを細かく尋ねる質問票を送ります。

Tim:

伝統的な企業は、質問票に驚くでしょうね。

土屋氏:

ええ。質問に答えてくれない企業も多いですが、中には怒ってくる企業もあります。しかし、質問をすることで、開発にパッションを持つチームが作るプロダクトが見つけやすくなるのです。

Tim:

協業相手の多くはスタートアップのように思えますが、大企業でパッションを持つチームを多く見つけるのは難しいですよね。

土屋氏:

はい、たいていはスタートアップと仕事をしていますが、大企業にもパッションを持つチームはいます。このようなチームは、我々の仕事の進め方やユーザ中心のデザインに対するアプローチを理解しているので、直接連絡をくれることが多いです。

Tim:

ユーザ中心のデザインは西洋では人気がありますが、日本では一般的ではありません。日本のデザインは混み入っていて情報量が多い。各(ウェブ)ページには、多くの「さらに詳しく…」があります。こういったゴチャゴチャしたウェブサイトは、日本では十分に試されて、うまく機能してきたのでしょうか?

土屋氏:

かつてはそうでしたが、Apple が iPhone をリリースした2008年から全てが変わり始めました。iPhone のインターフェイスはシンプルで、多くの日本人が iPhone を購入しました。その後は、Android が大変似た UI/UX で踏襲しましたね。UI も良かったですが、より重要なことは、人々がスマートフォンを毎日何度も使うということです。我々のスマートフォンは、ある種の UI を期待するよう我々を鍛錬します。iPhone 以前のウェブデザインには、そのようなものは全くありませんでした。

Tim:

iPhone と Android は、世界中で数十億台売れました。そのような世界で通用する UI/UX 標準を目指しているのですか?

土屋氏:

そうです。それぞれの国には独自の色がありますが、世界中のデザインは似たものになりつつあります。たいていの日本の e コマースサイトは、Apple のウェブサイトに似てクリーンなスタイルを採用しています。これは恥ずべきことだと思います。もっと多様だったのに。

Tim:

そして、いつもの PowerPoint のプレゼンテーション。

土屋氏:

(笑)仰る通り。日本では今でも、見苦しい PowerPoint のプレゼンテーションをよく見せられます。これはおそらく将来も変わることはないでしょうね。

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グッドパッチ 創業者 兼 代表取締役社長 CEO 土屋尚史氏

Tim:

事業を始めた当時、グッドパッチの最初の大きな顧客は「Gunosy(グノシー)」でした。彼らの UI/UX を変えることで、ユーザ獲得を50%以上改善することができた。どういう変更をしたのですか?

土屋氏:

彼らの当初のデザインは、極めて悪いものでした。学生がデザインしたもので、ひどい PowerPoint のスライドをモバイルで見せられるような。私はサンフランシスコにいたときグノシーの創業者に会いました。私は彼にサイトをデザインし直したい、グノシーには可能性があるが、当時の悪いデザインは修正すべきだと申し出たのです。

Tim:

ユーザ中心のデザインにするために、どのような変更を施したのですか?

土屋氏:

ユーザが記事を読んでいる間は UI がユーザを邪魔しないようにするなど、多くの変更を行いました。重要ではない情報も取り除きました。iTunes / Android 時代に合ったものにするため、デザインを簡素化しました。

Tim:

多くのサービス企業、とりわけ、ソフトウェア開発会社はプロダクトを作りたいと考えますが、実際にそれを形にするのは実に難しい。グッドパッチでプロダクトの開発を決めたのは、どのタイミングでしたか?

土屋氏:

グッドパッチを始める前、私はプロダクトを売りたいということを知っていたので、創業から約2年経った頃にプロダクトの開発を始めました。我々のプロダクトは、デザイナーがユーザからフィードバックを得やすくするというものでした。多くのスタートアップは、プロダクトやサービスの提供に問題を抱えていますが、我々のプロダクトは、そういった問題が無いレベルへ、スタートアップがうまくプロダクトを調整できるようにするためのものです。

Tim:

デザインサービス会社は、たいていベンチャー資金の調達に困難な時期があるものですが、グッドパッチは有名 VC から多額の資金を調達できました。VC は、とりわけグッドパッチのプロダクトに興味を持ったということでしょうか?

土屋氏:

彼らは、プロダクトと強いデザインサービスの両方を持つ会社に投資をしたかったのです。我々の現在の投資家はプロダクトにもっと注力するようにアドバイスをくれることもありますが、我々は予見可能な将来においては、サービスとプロダクトの両方の提供にコミットしていきます。


 

有意義な仕事がしたい、有意義なプロジェクトに関わりたいという、土屋氏の考え方が好きだ。それは誰もが共有する感情だろう。我々は自分たちのやっていることが、仕事そのものや収入を得る目的以外の部分にも影響を与えている、と確信したいものだ。しかし、それは口で言うほど簡単ではない。

グッドパッチは自ら、サービス会社とプロダクト会社の両方になるという挑戦を見いだしつつある。簡単かつ論理的な話に聞こえる。我々は顧客からの売上を使って夢に投資するわけだが、これを実行に移すのは非常に難しい。スタートアップなら、必要なリソースをすべて手に入れられることは無いだろう。いつだって、人手は足りない。お金を払ってくれる顧客がいるときは、先進的な機能を備えた新しいユーザに使ってもらえるプロダクトを作るよりも、既存の顧客を幸せにするプロダクトを作ることに誘惑されるものだ。

「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざもある。

しかし、グッドパッチはこれまでのところ、うまくやっているようだ。難しいことではあるが、このまま「二兎を追える」類まれな会社の一つになってほしいと願っている。

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