非英語圏の問い合わせは「人工知能にお任せ」ーーAI翻訳プラットフォーム「Lilt」が950万ドルを調達

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ピックアップ : Sequoia leads Series A round for Lilt via PE HUB Network

ニュースサマリー : 機械学習と人力を用いた翻訳サービス「Lilt」が950万ドルの資金調達に成功。本ラウンドのリードはSequioa Capital。Liltは日本語を含む29カ国語に対応するAI翻訳プラットフォームを運営。顧客は専門用語を頻繁に使う企業で、同社は各分野の専門家を自社で抱え、AIに対して人力で正しい表現の入力、修正をすることで、より正しい翻訳知見が溜まる仕組みを提供する。

話題のポイント : 2018年に入ってからAI翻訳スタートアップの大型資金調達が目立ちます。

Liltの直接競合に当たる「Unbabel」は2,300万ドルの調達を果たしています。同じくAIと人力の両方を用いた翻訳サービスを展開。TechCrunchの記事によると、5.5万人の翻訳者を囲っているとのこと。

ultimate.ai」は9月に130万ドルの資金調達をしています。非英語圏でカスタマーサポートセンターを持つ企業を対象とした翻訳サービスを展開。同社のホームページによると、米国内では非英語圏からの顧客対応を用意するために使われる予算は1兆6000億ドルになってるそうです。

筆者が最も注目するのが顧客サポート分野での活用です。問い合わせ内容を自動で瞬時に、かつ正確にローカル言語へ対応させる流れは数年前から兆しを見せていました。そして、2018年に入ってから多数の大型調達ニュースを目にする限り、急激に進んでいる印象を受けます。MicrosoftやSaleforceといった大手IT企業が上記サービスを利用している点から見ても、日本企業への導入が急速に進むことも時間の問題でしょう。

顧客サポート分野で着実に実績が積み上がった時点で、2C向けサービスへの対応が進むことも十分考えられます。たとえば、難民/移民向けにオンデマンド翻訳サービスを提供する「Tarjimly」が挙げられます。現在は100%人力でサービス提供が行われていますが、先述した3社が提供するAPIを連携させれば、より正確なサービスを低コストで提供可能になります。

筆者がサンフランシスコ在住時代に使っていた遠隔医療相談サービス「First Opinon」は正に専門用語が飛び交うサービス。当時、私は症状を正確に伝えるために毎回Google検索をしていました。しかし、LiltのAPIが導入され、医療用語が即座に高い精度で翻訳されるのならば、利用者にとっても言語障壁は格段に下がりますし、First Opinionも事業の世界展開を目指せまるようになるでしょう。

現在は顧客サポートに代表される2B市場での利用事例が広がっていますが、いずれ2C向けのチャットサービスが、非英語圏ユーザーを対象とするために翻訳サービスが活用される利用シーンは今後急速に発展すると感じます

2015年、大手海外留学を主とした教育機関「Education First」は世界各国の英語レベルを比較まとめたレポートを発表。アジア圏で英語レベルが「低 = Low」と判定された国々は日本や中国が含まれます。成長著しいラテン雨りか圏では14カ国中12カ国が「低」と判定されています。この点、アジア・ラテンアメリカ地域における発展途上国で活躍する非英語圏企業からの英語対応への設備/サービス投資市場は巨大であり、ここをターゲットとするのは非常に合理的であると考えられます。

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