ウォルマートが食品流通管理にブロックチェーン活用ーーB2Bでの利用が進む「コンソーシアム型」とは

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本稿は11月18日から20日まで東京ミッドタウン日比谷で開催されるブロックチェーンカンファレンス「NodeTokyo 2018」編集部による寄稿

ピックアップ:Walmart is betting on the blockchain to improve food safety via TechCrunch

ニュースサマリ:米流通大手ウォルマートは9月25日、2019年9月までにサムズ・クラブとウォルマートに対して葉物野菜を供給する事業者は流通に関するデータをブロックチェーンにアップロードする必要があると公表している。同社はIBMと1年以上に渡り協業を重ねており、食品におけるサプライチェーンのデジタル化に取り組んできた。米TechCrunchなどが伝えている。

話題のポイント:ブロックチェーンと聞くと分散型や非中央集権といった言葉を思い浮かべるかもしれませんが、ある事象のトレーサビリティにおける効率化もよく知られています。

米国において最大級の小売店事業を営むウォルマートは、IBMのブロックチェーン事業Hyperledger Fabricと提携し、同社が提供する食品(特に野菜などの新鮮さが大切なもの)を管理することを発表しました。

注目したいのは、ウォルマートが用いる予定のIBMによるHyperledger Fabricはビットコインやイーサリアムのようなパブリックによる形態ではなく、いわゆるコンソーシアム型のブロックチェーンであるという点です。

一般的なニュースでは、イーサリアムやビットコインなどの話題が多いため「ブロックチェーン=パブリックブロックチェーン」という認識が強いかもしれません。しかし、パブリックブロックチェーンが持つ分散型という性質が逆にスケーリングの問題などを引き起こし、実社会への導入があまり進んでいないのも事実です。

Hyperledger Fabricの採用する「コンソーシアム型」は、プライベートブロックチェーンの性質を持ちつつも、複数間の特定企業間で管理するため、プライベート型と比べて一定の非中央集権が担保されるのが特徴です。

完全な分散が必ずしも伴わない今回のウォルマートの事例のように、コンソーシアム型ブロックチェーンの社会実装は実は着々と進んでいます。例えば世界銀行によるブロックチェーン債権もこのコンソーシアム型ブロックチェーンが採用されています。

コンソーシアム型やプライベート型が本当にブロックチェーンの根本的な性質、つまり非中央集権を引き出しているのか?に対する答えは「NO」なのかもしれません。しかし、ある程度の権力や情報の分散化を行い、既存の管理・運営で問題視されていた分野が解消されるメリットは大きいでしょう。

まずは、ウォルマートや世界銀行が実際にコンソーシアム型ブロックチェーンを動かすことで、どのような問題や結果が生まれてくるのか注目したいところです。(執筆:増渕大志

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