ミールキット「Blue Apron」はなぜIPO後1年で株価を9割減らしたのかーー大手参入やトレンド変化、重なる不幸を読み解く

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本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。エンジェルと起業家による勉強会「Ask the Angel」も定期開催中

ピックアップ:Blue Apron tumbles to a record low (APRN) via Business Insider

ニュースサマリ:ミールキットサービス「Blue Apron」の株価が最低値を記録。これまで月額サブスクリプションモデルを採用していたが、ニューヨークでオンデマンド配達サービスを実験的に立ち上げた。しかし、新サービスの立ち上げも虚しく最低株価を記録。8月には対年比でユーザー数が24%減少したと公表していた。

話題のポイント:IPOした後にずっと苦境が続いている感のある(というかそういう報道ばかり目立ってしまう)Blue Apronですが、気がついたら株価がエライことになってました。IPOでおおよそ10ドルほどついていた株価は10月時点で1.5ドルまで下落、さらに今日時点で1ドルに限りなく肉薄している状態です。

ユーザー数の減少と共にミールキット購入者数も第1四半期で9%減少しています。ユーザー数の変動グラフを見ると瀕死状態といってもいいほどです。

昨年8月の記事なのでちょっと古いですが、Blue ApronのCPA(新規顧客獲得)は460ドルで平均利用単価が250ドルあたりで横ばい。IPO直後にAmazonやWalmartなどの参入が続いたのは確かに影響あったでしょうが、こんな簡単な競合参入は織込めなかったのでしょうか?株価にして9割落ち込むのは競合だけで納得するのは難しいです。

この低迷を紐解くヒントが今年8月のForbesに寄稿されていました。

これを読むと、確かにIPO戦略をミスってブランドが毀損してしまい、ダウンスパイラルに入っているのにCEOのMatt Salzberg氏を切れなかったこと、オペレーションが未だにユニットコストを最適化レベルに達していないなどの課題はあるものの、それ以上に「ミールキット」そのものに対するトレンド離れが結構な影響を与えている印象でした。

例えばReady to eat mealsのプレーヤーの台頭です。国内でもUberEatsを使う人が増えていますが、ICON Mealsのようなオンデマンドフードデリバリーの方がミールキットよりもすぐ食べられて便利です。Blue Apronももちろんそれは理解していてGrubhub上にてニューヨーク市限定のテストを開始していますが、やっぱり調理は必要みたいであまり市場の支持は得られていないみたいです。

CEOはオンデマンドでの展開で競合優位性を向上させ、ブランド拡大を図るとしていますが、マクロでの食トレンドの変化、消費者のサブスクリプション離れ、レストランのオンライン化など次々と悪材料しか出てこない状況はまさに「HARD THINGS」です。

虚業でもないのに株式公開後にここまで短期間に評価を落としてしまった事例として記憶に刻みたい内容です。

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