外国人起業家が日本でスタッフを雇用・管理する方法【ゲスト寄稿】

本稿は、Disrupting Japan に投稿された内容を、Disrupting Japan と著者である Tim Romero 氏の許可を得て転載するものです。Tim Romero 氏は、東京を拠点とする起業家・ポッドキャスター・執筆者です。これまでに4つの企業を設立し、20年以上前に来日以降、他の企業の日本市場参入をリードしました。

彼はポッドキャスト「Disrupting Japan」を主宰し、日本のスタートアップ・コミュニティに投資家・起業家・メンターとして深く関与しています。


日本の労働法はアメリカやヨーロッパの基準とは多く異なり、仕事だけでなく会社まで失うことになる単純な間違いをしてしまう外国人は少なくない。

Terrie Lloyd 氏は30年以上にわたり12社以上の企業を日本で設立、数百名の人々を雇用してきた。今日は、Lloyd 氏が多くの個人的な話を聞かせてくれ、日本人を雇ったり、管理したり、会社に居続けたりしてもらう必要のある西洋人に実務的なアドバイスを提供してくれる。

興味深いディスカッションなので、お楽しみいただけるだろう。

Terrie Lloyd 氏

Tim:

ここ数年では日本で数社を創業されていますが、特に直近のビジネスである Japan Travel について教えていただけますか?

Terrie:

もともとは旅行ポータルにすることを意図して作ったわけではありません。ACQ2 というコミュニティマネージメントプラットフォームが当初のアイデアでした。企業に非常に多くのコミュニティ生成コンテンツを、作成したり、編集したり、管理したりできるようにするためのものでした。このプロジェクトに資金を募ってみたのですが、その可能性を理解してくれる人がいなかったのです。そこで、これを使って事業を作ろうと決めたわけです。

Tim:

旅行に特化しようと決めたわけですか?

Terrie:

いえ、そうではなくて、我々の最初のプロダクトは doglovers.jp というもので、犬好きの人に特化したものでした。Japan Travel は2つ目のアイデアでした。doglovers.jp も Japan Travel もほどほどに成功しましたが、最終的には doglovers.jp をシャットダウンし、Japan Travel に注力することに決めました。

Tim:

Japan Travel はどのように機能するのですか?

Terrie:

コミュニティが最重要事項です。コミュニティの中から参加したい人は、やりたいと思う仕事にサインアップします。物書きが好きな人もいれば、編集が好きな人もいるし、チェックの速い人もいれば、構成が上手い人もいるでしょう。ACQ2 は、こういったワークフローを管理し、やりたいと思うボランティアにその仕事をまわすシステムです。もちろん、ここに関わる人たちは完全にタダ働きというわけではなく、景品交換可能なポイントが与えられます。しかし、多くのボランティアにとっては、コミュニティに貢献することが最大のモチベーションです。Japan Travel に貢献してくれている人々は約30万人います。

Tim:

過去30年の間に、日本で17社を設立していますね。どうやって、事業機会を見つけたのでしょうか?

Terrie:

すべての会社がうまくいったわけではありません。たいていの成功する外国人起業家は、外国人であることを活用して方法を見出します。彼らは外国の技術にもアクセスできるだろうし、新しい外国のビジネスモデルを取り入れるのも早いだろうし、最初のお客が外国企業だったり、外国の資金にもアクセスできたりするかもしれない。こうして優位性を獲得した外国人は、日本企業と競争するのは大変だと理解するようになります。私が犬のサイトをシャットダウンして、旅行に注力するようになった理由の一つもそれです。

Tim:

それは物事を始めるのには良い方法だと思いますが、そこからどうやって長期にわたる事業を築いたのですか?

Terrie:

新しい何か、ニッチな何かを紹介したいと考えると、そのエコシステムを持つ必要が生じます。クライアントの関係も必要になるし、プロダクトやサービスの届け方も制御する必要があるでしょう。独自の技術も必要です。外国人なら当初は強力な人脈は無いかもしれないが、それを徐々に作っていく必要があるでしょう。最初は自分がはまる場所が見つからないかもしれないが、それでも構わない。そこから、はまる場所を作り、エコシステムを築けばいいのです。エコシステムを制御することをあきらめたら人間関係は弱くなり、これは外国人が経営する企業にとっては非常な危険なこととなります。

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Tim:

外国人起業家が直面する最も大きな問題は、良質な従業員を魅了し続けることですね。日本人を雇用したり、会社にいつづけてもらったりする上で、どのようなアプローチを取ってきましたか?

Terrie:

それは、数十年にわたり事業をしていても変わらない部分であり、今でも難しい部分です。日本の多くの大学卒業生は、有名ブランドや安定した企業に就職しようとします。我々はスタートアップなので、このような人たちをリクルートしようとは思いません。しかし、大企業では働きたくないとか、標準的な教育システムを経た人でなくても、有能な人々は大勢います。我々は彼らに注目します。このような若い人たちは、会社のブランドよりもリーダーシップの質を気にかけるからです。

Tim:

そういった人々は、増えていますか?

Terrie:

明らかにそうですね。今日の日本の30代未満の世代は平均3回職を変えるといいます。つまり、多くの人は有名企業よりも、自分の価値観に合ったキャリアを探しているのです。実際のところ、今日の若い人々は大企業で数年間働き、そこが合っていないとわかると、次の転職機会を探し始めるのです。

Tim:

そういった人々は、20代後半から30代前半の人たちになるでしょうか?

Terrie:

はい。人が会社に入るのには、いい年齢ですね。自分で結論を描くには十分な経験を積んでいて、責任をとったりイニシアティブをリードしたりすることもできるが、長期的なキャリア観に対してはまだ柔軟です。我々はスタートアップなのでお金は多く持っていませんが、ワークライフバランスの良さ、従業員同士によるリアルなコミュニテイの形成に注力しています。

Tim:

それを従業員に約束している会社は多くありますが、そう行った中で、あなたの会社は抜きん出て、他社との違いを明らかにするために、どのようなことをしていますか?

Terrie:

スタートアップの場合、それは創業者がどう考えているかということになりますね。自社の価値が何かを皆に見せ、それに向けて取り組んでいるんだ、ということをわかってもらう必要があります。我々は目標やビジョンだけでなく、直面してきた大変さや困難についても、オープンかつ正直であるように努力しています。これまでに幾度となく失敗してきて、現在すべての答えを持ち合わせているわけではありません。それについてもオープンにして、常に心のそこからコミュニケーションをとるよう努力をしています。人々はそれに感謝してくれています。それは偽ることのできないものであり、助け合う企業文化を作り出すのです。


Lloyd 氏の日本人スタッフの雇用や管理に関するアドバイスは外国人(の起業家)に向けたものだったが、日本人の起業家やマネージャーにとっても良きアドアイスとなるだろう。事実、すべての国において、イノベイティブで独立して事業を行う人々は、強いビジョンを持ち信頼できるリーダーに魅了されている。

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