2019年に注目したい「ヘルスケア市場9社」と「3つのトレンド」まとめ

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本稿は世界のスタートアップシーンを伝える起業家コミュニティFreaks.iD編集部との連動記事。いち早くニュースをチェックしたい人はこちらを参照してください。

今回は2018年にFreaks.iDで紹介したヘルスケアスタートアップを紐解き、大きく3つのトレンドを簡単に紹介していこうと思います。

1.医薬品市場におけるパーソナライズ化とPBブランド

Image Credit by Care/of

最初に取り上げたい点はパーソナライズです。なかでもビタミン・サプリメント分野でのパーソナライズ化が顕著と言えるでしょう。

2018年8月には「Care/of」が2,900万ドルの資金調達に成功しています。顧客はライフスタイルに関する簡単な質問に答えるだけでパーソナライズ化されたサプリメントが定期的に送られてくる仕組みです。

同様のトレンドはヘアケア製品でも登場しており、「Prose」が12月に1,800万ドルの資金調達を行っています。Proseの場合、膨大な医学研究ビックデータをもとに最適な調合を行うデータドリブンな製造過程を経ており、投資家からより大きな注目を受けている印象です。

日本でも注目を受けそうなスタートアップには「Lemon Box」が挙げられるでしょう。12月に200万ドルの資金調達を果たしています。Lemon Boxは米国のサプリメントを中国市場向けにパーソナライズ化して海外輸出するサービスを展開しています。さながら「サプリメント版Buyma」とも言えるかもしれません。

確かに日本のドラッグストアで中国人が日本の医薬品を爆買いしている点を見ると、巨大な市場がすでに存在しているはずです。『TechCrunch』の記事では既存製品をキュレートして中国市場に届けながらも、売れ筋商品を自社ブランドとして開発して利益率を上げていく戦略に触れています。AmazonやZOZOがやっているようなパーソナライズによるデータ収集からプライベードブランド拡大への戦略に舵を切ろうとしている思惑が伺えます。こうした戦略は日本市場でも十分に参考となるはずです。

2.音声AI/医療機関向けメッセンジャーによる効率化

Image Credit by Notable Health

米国では日本と比較して規制が緩いこともあり、電子カルテ入力を効率化させる音声AIスタートアップが多々登場している印象があります。

9月には「Notable Health」が1,350万ドルの資金調達を行いました。専用アプリをインストールしたApple Watchを医師に付けてもらい、診察中に発生した会話を分析してカルテの必須項目事項を自動記入。従来の入力時間を約70分削減させます。

同じく9月に電子カルテ自動入力サービス「Saykara」が500万ドルを調達しています。同社の場合はスマートフォンを診察室に立てかけて音声入力していく形ですが、サービス内容はNotable Healthと変わりません。

こうしたAIを通じた音声分析・カルテ自動作成の流れはいづれ日本の医療規制が緩和され次第進んでいくと思われるため、今のうちから注目しておくと良いかもしれません。Amazon EchoやGoogle Homeが医療分野に本格的に進出してくれば、上記で紹介した2社の買収も考えられますし、大手IT企業の参入も十分に想像できます。

さて、医療機関のコミュニケーションツール分野も盛り上がりを見せています。同分野では「TigarConnect」が大手ですが、10月には「Forward Health」が390万ドル、「Siilo」が450万ユーロを調達しています。

筆者が時折通う内科は受付とLINEを使って随時コミュニケーションを図っているようですが、やはり機密性に欠ける印象。この点、医療市場の情報機密性を汲み取ったツールの登場が日本では待望されるでしょう。「医療機関向けSlack/Messenger」の位置づけで日本のベンチャー企業が活躍するのりしろがあるように思えます。医療コミュニケーション分野は日本でも大いにスタートアップが参入する余地があると思われ、今のうちから参考にすると良いかもしれません。

3.メンタルヘルスケア市場の継続成長

Image Credit by Wisdo

スタートアップデータベース「Pitchbook」の記事によると、2017年度のメンタルヘルス企業の合計調達額は歴代最高額に並ぶ5億ドルに至っています。2018年度は同年額を凌いでいると想定されます。

瞑想アプリ「Simple Habit」は11月に1,000万ドルの資金調達に成功しています。約5分間で聴き終えられる瞑想オーディオコンテンツを提供する「瞑想コンテンツ版Netflix」サービスを展開。同じく瞑想オーディオ分野では「Aura Health」が270万ドルを調達しています。

こうして俯瞰して見ると、前述した音声AIを通じた電子カルテ入力サービスに代表されるように「声」のメディアに注目が集まっている印象です。

SNS分野ではメンタルヘルス特化のコミュニティアプリが登場。「Wisdo」も11月に1,100万ドルを調達。ユーザーの抱えるメンタルの課題と適するコミュニティーに属することで、同じ問題を抱えたユーザーとやり取りができます。ノウハウや克服経験を共有することができます。

日本でも音声コンテンツやSNSアプリにメンタルヘルスケア志向を組み合わせるサービスが登場する予感がしています。2019年以降は米国のメンタルヘルスケア市場の波がやってくるかもしれません。

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